コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(13)韓国

south korea

韓国(人口約5,127万人)

殿垣くるみ

①新型コロナウイルス感染について、いまはどうなっていますか?

韓国では感染者数が8月後半に急増し、現在その余波が未だ残っている状況です。これまで一日の感染者は20~30人ほどで、海外からの入国者が主だったのですが、8月後半は国内感染者が一日200~300人になってしまいました(現在は100人程度)。その原因となったのが8月15日の光復節に合わせて行われた保守団体と極右キリスト教団体が主催した大規模集会です。そもそも100人以上集まる集会は許可されていなかったですが、主催団体が申請を偽り、全国から数万人が集まる事態になってしまいました。しかも厄介なのは、この集会は反政府集会であり、現政府のコロナ対策を批判することを目的としていたことです。集会中も政府の感染予防指針を守らず、信者や集会参加者に検査を拒否するよう促していました。そのため、集会後、多くの感染者が確認されても団体側は感染抑制に非協力的であり、集会参加者が検査を拒否したり、治療施設から脱走したり事例もありました。この事態に対し文在寅大統領は強く非難し、感染予防に非協力的な人への処罰を重くする方針を示しました。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

15日の大規模感染をきっかけにして、ソーシャルディスタンスの基準が引き上げられました。8月19日からは屋内50人以上、屋外100人以の集会は、原則禁止となりました。展示会、記念式、試験だけでなく、結婚式、葬儀などの集まりも含まれます。また、これまで特に休業要請をしてこなかった韓国ですが、クラブ、カラオケ、ネットカフェなどに休業要請が出ました。飲食店でも8月30日から営業時間の短縮、利用者情報の記録の義務化、2メートル以上を保った席の配置などが要請されています。マスクに関しては、公共交通機関内では引き続き着用が義務付けられ、ソウル市は24日からカフェや飲食店内でも飲食時以外はマスクの着用を義務化しました。国内の移動の制限はないのですが、なるべく控えるように呼びかけられています。このような対策は一部を除いて9月15日までで終わり、短期集中的に感染者数を抑え込む作戦です。急な要請に国民の不満や批判はありつつも、やはり原因をつくった15日の集会主催団体に対する韓国世論の厳しい批判が高まっています。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

15日の集団感染をきっかけに、これまで以上に危機意識が高まりました。現在、韓国は夏休み期間中で、私も15日以前は外出や旅行もしていたのですが、集会を主催したキリスト教団体の施設が私の住んでいる地域から近いということもあり、今は予定をすべてキャンセルして不要な外出は控えています。学校の授業はオンラインと対面授業を並行して行われており、次学期はすべて対面授業に切り替わるのではないかと期待していたのですが、この状況だと難しそうです。

街の様子がどうなっているかはあまり確認できていないのですが、よく行くお店やカフェもコロナ対策を強化しているようです。私は今、「ハスク」という食事つきの下宿に住んでいるのですが、今までは食事の際は文字通りご飯を囲んでみんなで食事をしていたのですが、つい最近から食事中の会話を控え、机も壁を向く配置になりました。仕方のないことですが、毎日の食事がなんだか寂しくなってしまいました。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

これまで国内の集団感染は何度もありましたが、今回の8月の集団感染は、感染者たちが非協力的であり、妨害行為までするため非常に厄介です。さらに続くようなことになれば以前とは違った対応が必要になってくるかもしれません。この夏、ソウル市民の定番である「漢江でチキンとビール」を私も予定していたのですが、この様子だと来年まで持ち越しになりそうです。


殿垣くるみ(とのがき・くるみ):韓国ソウル在住。一橋大学大学院修士課程在学中。