今月の新刊10冊目(2017年9月)

united states of america 『ソマリランドからアメリカを超える──辺境の学校で爆発する才能』

舞台は、破綻国家として有名な「ソマリア」ではなく、「ソマリランド」。

KADOKAWA刊

KADOKAWA刊

ソマリランドはもともとソマリアの一部でしたが、ソマリアの独裁政権が崩壊して無政府状態になった1991年に「ソマリランド共和国」として独立することを宣言しました。独自に民主化を進め、いまでは普通選挙で議員や大統領を選び、平和的に国家を運営しています。

けれども、ソマリランドは国際的には国家として承認されていないので、国際組織からの援助を受けることも、貿易交渉の席につくこともできません。「もっと勉強したい、外の世界を見てみたい」と願う若者が国外に出ることもできないのです。

この物語の語り手は、そんなソマリランドに飛び込んで学校をつくったアメリカの若者です。

アメリカでヘッジファンドを経営していた三十代前半の著者ジョナサン・スターは、ソマリランドのことも教育のこともほとんど何も知らないまま、会社をたたみ、私財をなげうって、ソマリランドに学校をつくりにいくことを決意します。

当然、想定内のものから驚くようなものまでさまざまなトラブルに直面しますが、ジョナサンの学校は着実に結果を出して、設立からわずか数年で、なんとMIT、ハーバード、イェールといったアメリカの名門大学に次々と学生を送りこむまでに!

多くの人がこれを「奇跡」と讃えましたが、ジョナサンは「奇跡なんて必要ない」と言い切ります。
では、不可能といわれた目標を実現させたのは、いったい何だったのでしょうか……?

解説は講談社ノンフィクション賞を受賞した『謎の独立国家ソマリランド』の高野秀行さんです。なんと、ジョナサンの学校の前を通られたことがあるとのこと! こちらもお見逃しなく。

(N)