コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(19)スロヴェニア

スロヴェニア(人口約208万人)

木村高子

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

前回のレポート(2021年6月)の後、秋になるとスロヴェニアでの感染者が再び急増し、12月には少し落ち着いたものの、今年の1月末から2月上旬にかけてピーク(1日あたりの新規感染者数2万人近く)に達しました。その後感染者数は減少しましたが、3月に入ってからは1日あたりの新規感染者数が2,000〜3,000人あたりで推移しており、これ以上の劇的な減少はまだ望めないようです。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

2021年秋以降、日常生活においてもPCT条件(回復証明(P)、ワクチン接種証明(C)、陰性証明(T)のいずれかの所持)を満たさないことには、日常生活に支障が出るようになりました。私もワクチン接種証明書を保存した携帯電話、身分証明書、それにマスクが外出時には不可欠になりました。こうした規則が施行された当初はまだ運用が甘く、ろくにチェックもせずに入店を許すケースも少なくありませんでした。しかし、感染数を抑えられなかったことから、その後は厳しくなり、入口に常駐する人にいずれかの証明書と身分証明書を提示せずには入店できなくなりました。また飲食店の営業制限や集会の開催制限も続けられました。

学校では、生徒達は抗原セルフ検査を週2、3回行うことが義務づけられました。求められる検査の頻度を含め、規則も頻繁に変わっていたので、生徒も教師も大変だったと思います。一部の学校では、教師が政府の方針に従わず、検査をしなかった児童も教室に迎え入れていたために、一時その学校が閉鎖されたというニュースもありました。その後2月21日以降、PCT条件の確認義務が撤廃され、同時に児童・生徒の検査も廃止されました。さらに店や接客業、集会の人数制限や営業時間の制限などもなくなりました。

4月14日より、屋内でのマスク着用義務も撤廃されました。これでコロナ関連のほぼ全ての規制が撤廃されたことになります。さまざまな規制緩和は、私としては時期尚早だと思うので、まだしばらくは屋内でのマスク着用を続けようと思っています(ただし、逆にマスクをしている人に対して難癖をつける人がたまにいるという話もききます)。

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

スロヴェニア人のワクチン接種率は決して高いとはいえず、2回目の接種を済ませたのは人口の約60パーセントにとどまっています。それでも3回目の追加接種が昨年末から、高齢者や基礎疾患を持つ人を優先して開始されました(現在3回目接種済みの人は人口の約30パーセントです)。希望者は市当局などがホームページで公表している場所・日時に行くだけで、予約なしに接種を受けることができます。オミクロン株の世界的な広がりを受けて、12月中旬には追加接種を、それまで推奨されていた2回目の接種の6か月後からではなく、3か月後から受けられるようになりました。

反ワクチン派の人々は、ワクチンが開発されたばかりの時期には毎週のように抗議集会を開いていましたが、最近ではそれもあまり見かけなくなりました。とはいえ、上記のPCT条件の確認が厳格化され、日常生活に支障が出始めた頃でも接種を拒否していた人がいたわけですから、この問題を巡る分断が存在することは今も変わりません。同じ家庭内でワクチンを巡って意見が割れる、という話もちらほら聞きました。先日は、1人で7回のワクチン接種を受けた人が逮捕されたというニュースが流れました。通常の2回の接種後、他人になりすまして5回接種し、8度目を受けようとしたところで逮捕されたということです。思いも寄らない考えを持つ人がいるようです。

去年10月に実施された屋外バザー

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

新型コロナウイルスの感染が広まりはじめた頃は、皆が戦々恐々として、街はゴーストタウンと化していました。当初はスロヴェニアの感染者はまだほとんどいない状況でしたが、冬の到来とともに感染率は急上昇し、一時期は人口比で世界最悪レベルになりました。現在でも決して終息しつつあるとは言えません。しかし、街の様子は、マスクをした人の姿が見える以外は、ほとんどコロナ以前と変わらないようになりました。だんだん暖かくなってきたこともあり、街のレストランも喫茶店もにぎわっています。

このような現状は、観光に力を入れている国としては、厳しい規制を続けることに対する反論が大きかったこと、また規制緩和に踏み切った周辺諸国に足並みを揃えた結果でしょう。現在、当然ながらアジア人の団体観光客は完全に姿を消しましたが、近隣諸国からの観光客の数は回復したように感じます。4月24日に議会選挙が行われたことも、規制緩和には大いに関係しているようです。正直なところ、PCT条件のチェックなどは続けてもよいのではないかと思いますが、私自身もこの2年間の「強制引きこもり状態」に疲れ、友人と直接会えることを喜んでいます。

実家の事情により、コロナ禍のもと、これまで3回日本との間を行き来しました。日本入国の際は、特に最初の頃は、多くの書類を揃えたり(2021年2月)、2週間の自宅待機中に毎日厚生労働省のアプリを使ったチェックを受けたり(2021年11月)と大変でした。ですが、スロヴェニアに戻る時は、今年初め以降は、ワクチン接種証明書と陰性証明書さえあればPCR検査も必要なくなり、だいぶ楽になりました。手続きが面倒だったとはいえ、私たち日本人は帰国できてよかったですが、日本人と外国人との間にコロナウイルスを持ち込むリスクに特に違いもないのに、長い期間、日本政府が外国人の入国をほぼ一律に禁じていたことについては、不公平だったのではないでしょうか。

去年の冬から現在にかけて、知り合いの間にもコロナに感染したという人が次々に出てきて、いつ自分が感染してもおかしくないという状況に不安もありました。しかしオミクロン株は重症化しにくいということも関係あるのか、幸い知り合いで重篤化した人はいませんでした。今後については、新型コロナウイルスもインフルエンザのように季節性の風邪のようになっていくのではないかと、希望も込めて考えています。

人通りの多い首都リュブリャナの中心街(今年4月)。

木村高子(きむら・たかこ):英語・フランス語・スロヴェニア語翻訳者。スロヴェニア・リュブリャナ在住


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(6)アメリカ合衆国

united states of america

アメリカ合衆国(人口約3億人)

N.K.

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2021年5月22日現在、ジョンズ・ホプキンス大学の報告によるとアメリカ全土のコロナウイルス感染者総数は3309万人、死亡者は58万人を超えた。しかし、新規感染者数は減少傾向にあり、現在の1日の平均感染者数はピークだった今年1月(30万人)の11パーセントほどの数になった。

一方で、コロナウイルス変異株も広範囲で検出されており、テネシー州、フロリダ州、ミシガン州、ミネソタ州は日本政府に新型コロナウイルス変異株流行地域と指定され、それら4州から日本に入国する場合にはより厳しい制限が設けられている。

国外からアメリカへ入国する場合は、PCR検査による陰性証明書、または感染から回復したことを示す診断書の提示などが義務付けられており、入国後7~14日間の自己隔離を要請している州や地域もある。また、アメリカ入国前14日以内にインド、中国、イラン、シェンゲン協定(*)加盟国のヨーロッパ26か国、英国、アイルランド、ブラジル、南アフリカ共和国に滞在歴のある外国人に対しては現在も入国禁止措置がとられている。

*ヨーロッパの国家間において、出入国検査(国境検査)なしで国境を越えることを許可する協定のこと。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

2020年12月からアメリカ各州で医療従事者や高齢者施設入所者を優先したワクチン接種が始まり、その後65歳以上の住民、日常生活に不可欠な仕事を担うエッセンシャルワーカーと呼ばれる人達へと接種対象が広げられ、今年4月19日以降は全州において16歳以上のすべての人を対象とする接種が行なわれている。また、5月中旬になると多くの州で12歳から15歳までの子どもへのワクチン接種も開始された。

アメリカでは現在ファイザー製、モデルナ製、ジョンソン・エンド・ジョンソン製の3種のワクチン使用が承認されている。ジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンについては接種後に血栓症が報告されたとして今年4月に一時使用が停止されたが、安全性の確認後、接種再開が承認された。

5月22日現在、アメリカでは人口の49.5パーセントがワクチンを1回以上接種し、39.3パーセントが必要回数のワクチン接種を完了している。一方で、1日当たりの接種回数は減少しており、政府や地方自治体は接種率を上げるための働きかけを続けている。例えば、ウェストバージニア州では若者のワクチン接種率を上げるため、ワクチンを接種した16歳から35歳の住民に100ドル(約1万900円)を支給、オハイオ州では接種を終えた人のなかから5人に抽選で1人100万ドル(約1億900万円)が当たる宝くじ方式を導入するなど、さまざまな特典をつける動きもある。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

現在アメリカではワクチンの普及と感染者数の減少に伴い、規制も緩和されて経済活動も再開され始めたが、昨年3月以降多くの地域で外出禁止令が発令されるなど行動制限が要請されて、経済的にも大きな打撃を受けた。

今年3月11日にバイデン大統領は新型コロナウイルス追加経済対策法案に署名し、1兆9000億ドル(約207兆円)規模の支援を盛り込んだ同法が成立した。これにより、3回目となる給付金として、高額所得者を除く米国籍保有者及び米国居住者に1人あたり1,400ドルが配られることになり、失業保険の追加給付も延長されることになった。

また、5月13日に米国疾病予防管理センター(CDC)は、ワクチン接種を完了すれば、混雑した屋内や公共交通機関を利用するときなどを除いて、屋内外を問わずマスク着用やソーシャル・ディスタンスの確保は必要ないとの新しい方針を発表した。ただ、実際の対応については自治体や企業の判断によって異なるため、混乱もみられるようだ。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

大学勤務の私は昨年3月中旬から14か月以上在宅勤務を続けており、その間、職場に行ったのはオンライン授業に必要な機器や教材を取りに行くための2回だけだ。

昨年8月末、私の勤める大学でも対面授業とオンライン授業を取り入れたハイブリット式授業で新年度をスタートさせたが、結局、実験などの特殊な授業を除くほとんどの授業はオンラインで実施された。今年8月末からの新学期は完全対面授業を再開するとの連絡が大学からきているが、まだ詳しい方針などは決まっていないようだ。

現在アメリカの300校以上の大学では、秋からの対面授業に出席する条件として、学生のワクチン接種の義務化を表明している。一方で、大学が学生のワクチン接種歴の提示をもとめることを禁じる方針を示した州もあり、このワクチン接種の義務化をめぐっては議論が続きそうだ。

感染者数が減少しているとはいえ、人口の過半数がワクチン接種を完了していない状態での規制緩和は時期尚早との声も聞かれる。コロナウイルス終息までにはまだまだ時間がかかるだろう。


N.K.:大学講師。アメリカ東部在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(5)マダガスカル

madagascar

マダガスカル(人口約2697万人)

フランス語情報センター翻訳チーム
(中平信也、脇るみ子)

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

マダガスカルには依然として入ることができないので、第三弾レポートも日本からマダガスカルの現状をお伝えする。

前回の報告では2020年8月21日の統計から「第一波のピークは越えた」とご報告した。マダガスカル政府も毎日行っていたコロナ禍関連の統計結果の発表を週に一度に変えた。ところが、2021年に入ると、同統計結果の数字は急速に悪化しはじめ、3月28日には過去最悪を記録した。また、国境封鎖を行っているにもかかわらず、南アフリカ型の新型コロナウイルスの感染が確認された。第一波よりも今回の第二波の方がより多くの感染者、重症者、死者をもたらしている。

5月9日現在の状態は以下の通り。
検査数:192,294件
感染者数:39,162人(うち、重傷者数:309人)
快復者数:36,261人
死亡者数:729人(昨年は1年を通じて約300人)
治療中の患者数:2,172人

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

第一弾のレポートでご紹介したように、マダガスカルには伝統生薬アルテミシアを原料としたコロナ予防/治療薬CVO(Covid Organics)が存在し、大統領自らがこの治療薬の宣伝をし、輸出も行っていた。このため、当初は「ワクチンは不要」との態度をとっていた。しかし、猛威をふるう第二波への対策を求められた政府は、CVOによる予防・治療以外の選択肢を国民に提供するため、5月2日、ワクチンの接種を発表した。

これを受けて5月7日、COVAXファシリティ(WHO主導によるワクチンの公平な配分を目指す国際的な枠組み。富裕国とワクチンを購入することが出来ない貧困国の格差を縮めることを目的とする)によるアストロゼネカ社のワクチン25万回分(2回の接種を前提として12万5,000人分)がイヴァト国際空港に届けられた。

COVAXは、受け取る側の国に対して、ワクチン配布と並行して接種を実施するスタッフの訓練や、適正温度でのワクチンの管理と運搬まで行い、最大で支援適格国の国民20パーセントに対して無償でワクチン接種の便宜を提供する。アストラゼネカ社のワクチンは、一般的な冷蔵庫の温度である2~8度での保管が可能であり、他社製に比して安価である。今回到着分は、医療関係者と国防関係者、高齢者を対象に優先接種が行われる。

他方、駐マダガスカル日本大使館が在留邦人の接種希望者を募ったとのことだ。マダガスカルのフランス大使館はマダガスカル在住フランス国籍保有者とEU加盟国の在留者にフランス大使館内に設置した会場でワクチンの接種を開始しているが、日本大使館がマダガスカル在住日本人にいつ接種を始めるのかは不明である。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

5月2日の政府発表により、国家保健非常事態宣言が2週間延長された。同宣言の詳細は第一弾のレポートで報じているが、その基本は、夜間外出の禁止(午後9時から午前4時まで)、コロナ蔓延地域の封鎖、学校の閉鎖(バカロレア試験クラスを除く)、集会の禁止などによる人流の抑制である。国際便の運航は引き続き停止しており、外国からマダガスカルに入国することは原則できない。在留外国人が帰国のためにマダガスカルを出国することは許可される。また、国内便も5月5日から全面的に運休。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

夜間外出禁止は以前からのことであり、私たちが拠点としているマダガスカル第二の都市トアマシナではJICAの港湾拡張プロジェクトの建設作業が通常通り継続されている。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

トアマシナの上記プロジェクト関係者には、血液採取によりコロナ感染の有無の検査が行われている。現地にいる日本人プロジェクト・マネージャーは検査結果が陽性で南アフリカに搬送された。また、私たちの関わる現地法人ソマコワ社にも2名のマダガスカル人に陽性者がでた。この2名は自宅静養中だが、ソマコワ社の唯一の日本人には「以前にコロナに罹患したが現在は完治。感染の恐れが残っているので要注意」との検査結果が伝えられた。

「以前にコロナに感染していた」という看過しがたい結果だが、マダガスカルのコロナ検査には精度に問題があると検査を始めた頃から言われているので、私たちは誤診だと思っている。おそらく、血液中にコロナウイルスによりできる抗体に似た抗体があっただけだろう。先進国を中心にコロナはその猛威を低下させているが、マダガスカルはコロナ感染に細心の注意を払わなければならない時期にまだある。


株式会社フランス語情報センター翻訳チーム:代表の中平信也(なかだいら・しんや)とパートナーの脇るみ子(わき・るみこ)で運営。どちらも日本在住のフランス語通訳・翻訳者。マダガスカルと日本のあいだを定期的に往復している。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(4)中国

china

中国(人口約14億人)

高希

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

現在(5月16日)中国本土では700人くらいの感染者がいて、そのうち半分は無症状です。感染者は海外からの新規入国者、すなわち輸入症例がほとんどです。まれに現地の病院で検出される本土症例もあります。例えば、先週(5月13日)、安徽省と遼寧省ではそれぞれ5人くらいの感染者が相次いで確認されました。新規入国者との接触による感染なのか、海鮮市場を訪れたことが原因なのか、感染ルートはまだはっきりしていませんが、現在追跡調査が行われています。いずれにしても、変異株の可能性があります。

中国ではすでに4月頃に輸入症例で変異株が検出されていましたが、蔓延はしていません。全国的に感染人数が少ないため医療現場は圧迫されていませんが、新規入国者の検疫、感染ルートの追跡やワクチン接種などの業務が増えており、医療従事者はいまなお強いストレスを感じているのではないかと思います。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在どのような状況ですか。

ワクチン接種については、現在(5月16日)、全国では3億人以上の人が接種を終えており、接種の申請にはみな積極的です。接種の順番は地方によって少し違いますが、基本的には医療従事者、国際航空の関係者などが団体接種や優先接種などの仕組みにより早めに接種できます。

一方、一般の人は所属のコミュニティのガイダンスに沿って、指定されたクリニックや病院に申請すれば接種できます。中国では、1回目のワクチン接種から1か月経ってから2回目を接種するようになっています。私はまだ接種していませんが、変異株への効果や副反応などを心配しているので、少し様子を見てから決めようと思っています。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

中国では去年(2020年)の後半から、すでに国内の感染蔓延が終息して、人々は心配なく日常生活を送っています。ただし、公共交通機関に乗るときや人出が多い場所ではマスク着用を義務付けられ、行動ルートを追跡できるQRコードの提示を求められるといった防疫対策が講じられています。

国内外への移動はほとんど制限がありませんが、外国からの入国拒否や海外の感染蔓延などの影響で、海外への移動はずいぶん減っているのが現状です。一方、国内旅行は非常に盛んで、今年のゴールディンウィークの国内旅行者数は2億人を超え、コロナ禍の前より増えています。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

日本の新聞でも報道されたと思いますが、海外へ買い物に行けない中国人はいまや自国で爆買いをしています。有名ブランドショップ店頭の長蛇の列や市内免税店の賑わいは、コロナ禍によって抑えられた中国人の購買意欲をつぶさに表しています。

また、コロナ禍はネットショッピングの利用増加にもますます拍車をかけました。もともとeコマースは中国の人々の生活に深く浸透しており、「タオバオ」をはじめ様々なネットサービスが発達していました。コロナの影響で、お年寄りや遠隔地に住む人など、多くの人がeコマースの便利さを体験することになりました。

そのほか、去年中国で話題になったひとつに「直播(ジーボー)」があります。「直播」とはライブ配信を意味します。内容は通信販売とほぼ同じですが、有名人やインフルエンサーがライブ配信をしながら商品を紹介し、テレビではなくECサイトやSNSサイトを媒体にして売るという仕組みです。手軽にいつでもどこでも見られ、格安に商品を買えることで中国の人々を魅了しました。

例えば、中国で有名な「直播」で人気のインフルエンサーViyaは、去年の独身の日(11月11日)に52億人民元(約883億円)の売り上げを記録しました。消費者はリアル店舗で買い物をするより、ECサイトや「直播」で買うようになりました。

このように、中国では発生から半年くらいでコロナが終息したとはいえ、コロナによる人々の消費行動の影響は大きく、いまもなお変化しつづけています。パンデミックが1年間あるいは2年間も続いている国々では、どれだけの変化が生まれているのでしょうか。世界をより良くする変化でありますように。コロナによって生まれ変わった世界が見られることを楽しみにしています!


高希(こう・き):中日・中英翻訳者。中国南西部の四川省成都市在住。


 

いま、ぜひ読んでほしい2冊

久しぶりのブログです……。

現在、世界中の人々が同じ脅威にさらされながら必死の闘いをつづけています。まさしく地球規模の人類全体にかかわる闘いです。

そんななか弊社は、緊急出版される以下の二冊の翻訳にかかわりました。どちらも、いまこのときに、日本でも多くの方に読んでいただきたい作品です。

giordanoパオロ・ジョルダーノ著
早川書房、2020年4月25日刊

パオロ・ジョルダーノは、物理学者であるとともに、2008年のデビュー作『素数たちの孤独』(邦訳は早川書房刊)で数々の文学賞を受賞した現代イタリアを代表する作家です。

そんな著者が、イタリアで新型コロナウイルス感染爆発の予兆が現れた2020年2月末から書きはじめた27のエッセイ集。

ウイルス感染との地球規模の闘いによって、ここ数か月で私たちの生活がいかに激変したかが、科学的かつ冷静に分析されています。

日本語版の著者あとがきでは、この事態の本質を見据えることの大切さと、人類はコロナ後の世界をどう生きるべきかが問いかけられます。

「すべてが終わった時、本当に僕たちは以前とまったく同じ世界を再現したいのだろうか」

27カ国で緊急出版され、日本でも刊行前に48時間限定で行なれたウェブでの全文公開は累計90万ビューを記録 。各メディアでも続々と取り上げらている話題の書です。

『人類対新型ウイルス――私たちはこうしてコロナに勝つ』

quineトム・クイン著
朝日新聞出版(朝日新書)、2020年5月13日刊

人類とウイルスとの数千年にわたる闘争史を活写し、人類の驕りに警鐘を鳴らす一冊です。

いったん「叩いた」と思っても、変異を繰り返し、人間の抗体反応の隙を突いて何度でも牙を剥くウイルス……。

ウイルスとは何なのか。古代から現代まで、人類はウイルスにどのように立ち向かってきたのか。対処法は?

2010年に刊行されて話題になった新書の再刊です。

(M)

今月の新刊9冊目(2017年12月)

united states of america 『ツイン・ピークス ファイナル・ドキュメント』

2017年、26年ぶりに新シーズンが公開されて大きな話題になったドラマ『ツイン・ピークス』。今シーズンも衝撃の展開で、世界じゅうのファンの心が揺さぶられました。

KADOKAWA刊

KADOKAWA刊

本作『ファイナル・ドキュメント』は、7月に発売された『ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー』の続編。「タマラ・プレストン捜査官が記録、収集した“事件”にまつわるドキュメント」をすべてまとめた完全版です。

IMG_6113_2謎に満ちたドラマを補足し、ツイン・ピークスの世界をさらに広げてくれるファン必携の一冊です!

(N)

今月の新刊8冊目(2017年12月)

united states of america 臆病な自分から自由になる方法

新しいことにチャレンジしようとしているとき、本当にやりたいことをしようとしているとき、頭のなかにこんな声が聞こえてくることはありませんか?
「そんなの、できっこないよ」「やめておいたほうがいい」「我慢すべきだ」……

物事が思いどおりに進みそうなときでさえ、こんな声が聞こえてくることも。
「喜ぶのはまだ早い。わたしなんかにうまくできるわけがない」「けっきょくは失敗するんだ」

文響社刊

文響社刊

本当にやりたいことをしたり、夢をかなえたりするのを邪魔する心の声。
これを著者は「マインドファック」と呼びます。

マインドファックから逃れることができれば、だれもが自分の潜在能力を存分に発揮し、より楽しく幸せで、思いどおりの人生を送れるはず。
ドイツのコーチングの第一人者、ペトラ・ポック博士が、マインドファックの生まれる原因を突き止め、それを抑える方法を解説します。

今年こそ、自分の心の声を味方につけて、ずっと夢みていた思いどおりの人生を送りましょう!

(N)

今月の新刊7冊目(2017年12月)

united states of america 『DEEP THINKING 人工知能の思考を読む』

著者は、22歳で史上最年少のチェス・チャンピオンになってから15年間タイトルを保持しつづけた、チェス界の伝説、ガルリ・カスパロフ

カスパロフ氏は、1996年と1997年、2度にわたってIBM製のスーパー・コンピューター《ディープ・ブルー》との6ゲームマッチを行ない、1度目は勝利を収めたものの、2度目は敗北を喫しています。
チェスの世界チャンピオンがトーナメント形式の戦いでコンピューターに破れたのは、このときが初めて。
人工知能(AI)時代の幕開けを告げる出来事として、世界に衝撃を与えました。

IMG_6102_2

日経BP刊

そんなカスパロフ氏が、ディープ・ブルー戦について初めて詳細に語り、人類とAIの共生について考察します。

AIの未来の話となると危険性ばかりが取りざたされがちですが、カスパロフ氏が思い描くのは、人類とAIが「協働」する明るい未来です。

2017年、日本の将棋界では14歳の藤井聡太四段が29連勝を果たしたことが話題になりましたが、藤井四段の強さの理由のひとつは、AIを用いた将棋ソフトを練習に活用してきたことにあるともいわれています。

チェス・チャンピオンの知性に満ちたことばから、AIとのつきあい方が見えてくるかもしれません。

解説は、日本屈指のチェス・プレイヤーで、2014年にはカスパロフ氏とチェスの対戦を果たした羽生善治さんです。

(N)

今月の新刊6冊目(2017年12月)

japan 『タラ・ダンカン アートワークス』

フランス生まれのファンタジーシリーズ「タラ・ダンカン」
日本では2004年から毎年1巻ずつ刊行され、12年かかって完結しました。

その表紙のイラストを集めたアートアルバムです。
本場フランスのタラ・ダンカン・ファンをも魅了した日本語版の表紙を手がけたのは、LAST EXILEのイラストレーターとして世界的に有名な村田蓮爾

KADOKAWA刊

KADOKAWA刊

こんなエピソードがあります。

パリに住むタラ・ダンカンの著者がテレビ取材を受けたときのこと。
彼女の自宅の壁には日本版の表紙が貼ってありました。
それを観た読者から「貼られていた表紙は、もしかして“あの”レンジ・ムラタが描いたのではないか」と著者に問い合わせがきたそうです。
著者は、日本版の表紙をそんな有名な人が描いていると知りびっくりしたとか。

IMG_6091_2各上下巻の表紙、計24点のイラストの加え、このアルバムのために描き下ろした「タラとカルの結婚式」のイラストなど、タラファンにも蓮爾ファンにも大満足してもらえる一冊です。

(Y)

今月の新刊5冊目(2017年12月)

sweden_2 『ミレニアム5 復讐の炎を吐く女(上・下)』

全世界で9000万部突破。
今世紀最高のミステリシリーズと言われるスウェーデン・ミステリ「ミレニアム」。待望の第5弾です。

早川書房刊

早川書房刊

第4巻では、なかなかその姿を見せなかった主人公リスベットですが、この巻では初っ端から登場します。
しかも、刑務所に収監されているのです。
そこではベニートという囚人が看守までをも支配し、バングラデシュ出身の若くて美しい女囚に毎日のように暴行を加えている……

ストーリーのそんな冒頭を聞いただけで、ミレニアムファンは先が読みたくてたまらなくなるはず。
そして、ついにドラゴン・タトゥーの秘密をはじめ、リスベットの過去のいくつかの謎も明らかになります。

第4巻からスティーグ・ラーソンのあとを受け継いだラーゲル・クランツ。
クランツのミステリ作家としての力量がほんものであったことが見事に証明されているといえるでしょう。

(Y)