コロナ終息に向けて:各国レポート最終回(23)マレーシア

マレーシア(人口約3260万人)

橋本ひろみ

マレーシアの現在の新型コロナウイルスの感染状況は、最近また感染者が増加し、2023年5月にピークとなりましたが、その後、減少しつづけています。重症化するケースも少なく、病院や隔離センターの負担や使用状況もかなり余裕が出てきています。

現在のマスク規制は、病院など一部の建物以外、ほとんどの場所ですでに撤廃されていますが、先日7月5日に、病院でもその規制が撤廃されるとの発表がありました。しかし、体調が悪い人や高齢者はマスク着用が強く推奨されています。この規制の撤廃により、国民の生活はほぼコロナ前の状態に戻ると予想されています。

1日の新規感染者数の推移(2023年1月2日〜2023年7月1日)
参照:マレーシアのパンデミックの最新情報
https://data.moh.gov.my/covid

ある日系の会社では、コロナの症状が出た場合、すぐに検査を受けることを義務づけていました。そのおかげで感染者を早めに発見し、隔離などの対策をとることができました。それでも同じ部署で仕事をしている人には次々と感染し、自宅隔離やリモートワークを余儀なくされることもあり、そのために業務に支障をきたしたり、人手不足に悩まされたりなど、今でもコロナの影響はまだ残っています。

しかし、たとえコロナに感染したとしても、以前のような深刻な状況にはならず、国民の意識も普通の風邪やインフルエンザに罹ったくらいの感覚で、以前のようなストレスや心配はずいぶんと軽減され、心に余裕も持てるようになりました。

コロナ前と後で大きく変わったことのひとつは、ビジネスの形態だと思います。たとえば外食産業であれば、コロナによって人々の移動が制限されたためにフードデリバリーの需要が特に増加し、コロナ後の今でもその需要はかなり定着していて、利用しつづけている人は多いです。また便利で安価なデリバリーサービスのさまざまな新しいモデルも出現し、ショッピングセンターに行く手間や時間が省けるオンラインによる商品購入というシステムも順調に増えています。会社勤務は現在ではもとに戻り、交通渋滞も以前と同じように戻りましたが、一方で、今でもリモートワークを継続している会社や従業員の存在もよく耳にします。

私の携わっている教育業界でも完全に対面授業が復活しましたが、それでもこの数年で培ってきたオンラインクラスでのスキルやオンラインならではのメリットもたくさんあり、現在では対面とオンラインの両方の利点を生かしながら授業や会議をしています。

マレーシアでは現在、待ちに待った海外旅行に出かける人も急増しています。またコロナ禍で開催や参加が大きく規制されたお祭りや行事なども、以前と同じように規制なく行われるようになり、もとの活気を取り戻しています。しかし同時に将来またコロナ禍が再発する可能性への懸念も多くの人が持っています。

この数年で、コロナにかかわらず、人類を危機にさらす想定外の出来事がこれから先も発生する可能性があること、またその危機は予告なしにいつでも誰にでもやってくることを実感しました。だからこそ、恵まれた環境があればそれに感謝し、また危機が訪れたときにも被害を最小限に抑え、それを乗り切っていける柔軟性や対応力をふだんから養っていくことが大切ではないかと思っています。

電車の中(マスクの着用は半々くらい)


橋本ひろみ(はしもと・ひろみ):マレーシア、クアラルンプール在住。翻訳者、日本語教師