コロナ終息に向けて:各国レポート最終回(24)ポーランド

ポーランド(人口約3801万人)

岩澤葵

ポーランドからコロナの存在感がなくなってから、もうずいぶんと経ちます。記憶をたどってみると、隣国ウクライナで戦争が始まってからはまったくと言っていいほど市民のあいだでは話題にのぼらなくなりました。

2022年3月28日、政府は残されていたすべての規制の解除を発表。これにより、医療現場を除くマスク着用の義務、出入国の際に抗原検査あるいはPCR検査を受ける義務など、コロナを理由とする一切の規制・義務がなくなりました。街はすっかりコロナ前の状況に戻り、当時を思い返すと懐かしいほどです。

ショパン・ピアノコンクールをはじめ文化行事やスポーツの大会など、新型コロナウイルスの流行初期に中止や延期をされていたイベントは、遅れて開催され、クリスマスマーケットや記念日などの季節行事も、通常通り開催されるようになりました。日本からの留学生や各国からの観光客もたくさんポーランドを訪れています。

日曜日にワジェンキ公園のショパン像の前で過ごす人たち

コロナ後にポーランドに残ったものといえば、リモートワーク、フードデリバリーや宅配ロッカーのサービスなどです。風邪気味のときにマスクをする人も増えたように感じますし、お店の入口に置かれた消毒液もそのまま残っています。そのほかでは、職業やライフスタイルの選択にかかわる価値観が若者のあいだで変化したように感じます。

コロナ禍の外出禁止やリモートワーク生活でプライベートの時間が増えてからは、家族との時間や自分のために時間を使う生活スタイルを重視している人が増えているようです。企業側は、休暇の取りやすさや職場環境など、賃金以外の「働きやすさ」の面でベネフィットを提示して従業員を長くつなぎとめることが課題だといいます。いまや転職の際には、求職者にとってリモートワークが可能かどうかも重要項目です。複数の収入源をもつ人、場所や勤務形態にとらわれず家庭や学業と両立して仕事をする人、実にさまざまなスタイルで、それぞれ自身に合った生き方の選択をしている印象を受けます。これはポーランドに限らず、他の地域でも同じような傾向があるのではないでしょうか。

コロナ終息後も、各地でさまざまな問題が起きていますが、平和を願うばかりです。


岩澤葵(いわさわ・あおい):ポーランド・ワルシャワ在住