コロナ終息に向けて:各国レポート「第四弾」を終えて

ニュージーランドからのレポートをもちまして、第四弾も終わりです。

前回から10カ月以上経ってからのレポートになりましたが、これまでとほぼ同じ方々が執筆してくださり、第一弾から第三弾までと変わらず、26カ国27人からのレポートをお届けすることができました。

この企画を始めてからちょうど2年。その年月と、その間の世界各地のさまざまな状況の変化を考えると、今回もまた同じ国から同じ数のレポートを寄せていただけたのは、たいへん貴重なことだと思います。

2022年5月27日現在、日本での新型コロナウイルス感染者数の累計は約875万人、2022年5月26日の新規感染者数は約3万人です。東京都の26日の新規感染者数は3391人とここ1カ月ほぼ横ばいといえます。

それでも、以前に比べ重症化のリスクが少ないことから、この3月、日本政府は「まん延防止等重点措置」を全面解除に踏み切りました。

今年のGWは3年ぶりに行動制限のない連休となり、日本の行楽地も久々の賑わいでした。

つい先日には、2年2カ月ぶりに外国人観光客の受け入れ再開も発表されました。

海外に目を向けると、2カ月前からのロックダウンがいまだに続いている上海や、新型コロナウイルスの感染拡大で厳戒態勢にある北朝鮮のニュースなどはあるものの、おおかたの国では、以前のような脅威にさらされておらず、コロナに関する規制もほぼ緩和されています。

今回のレポートでも、ひとりひとりの文章や写真から、各地で日々の生活が取り戻されつつあることがおわかりいただけたのではないでしょうか、

もちろん、国による違いもあります。

たとえばマスクに関しては、「着用義務」が「推奨」レベルになってからも外ではほとんどの人がマスクを着けている国もあれば、外ではいまやマスク姿はまったく見かけないという国もあります。人が集まるところでは、むしろマスクを外さないほうが気まずくなるといった報告もありました(こうしたライブ感あふれる感想は、このレポートならではだと思います)。

「コロナ」は完全に終息したわけではありません。どこの国でもいまだかなりの数の感染者がいます。少し前まではよく、今後を占うのに「コロナ後(ポスト・コロナ)」という言い方がされていましたが、新型コロナウイルスといかにうまく共存していくか、それこそが今後の課題であることも各国共通の認識だとわかりました。

今回のレポートで、この企画はいったん幕を閉じます。

ただし、(そうなってほしくありませんが)今後もし新型変異株などの登場で各国の状況が大きく変わることがあれば、第五弾をお届けすることになるかもしれません。

いずれにしても、新型コロナウイルスの出現から世界各国で何が起きたのかを振り返るためのひとつの記録として、いつかこの「各国レポート」を何らかの形でまとめたいと思っています。

この企画にご協力いただいたみなさま、そしてお読みくださったみなさま、ありがとうございました。

「ウクライナ侵攻」の影響が深刻化している地域も多いなか、世界じゅうの人々が健康で安全な毎日を送れることを心から願いつつ。

株式会社リベル

コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(27)ニュージーランド

ニュージーランド(人口約495万人)

目時能理子

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

前回(2021年6月)のレポートでは、市中感染もなく、コロナとは無縁の日常生活を送ることができたニュージーランドでしたが、デルタ株の到来とともに感染者が増え、政府は最大都市オークランドで再び完全なロックダウンを行いました(2021年8月)。しかし完全に感染を抑えることはできず、やがてオミクロン株が流行り出すと、政府は「ウイルスの感染拡大を遅らせる」というようになり、ゼロコロナは事実上断念された形となりました。一時期(2022年2月下旬~3月上旬)は1日に2万人以上の新規陽性者を数えたニュージーランドですが、5月11日現在の政府発表による感染状況は、国内の新規陽性者数7,970人となっており、入院中の患者は381人、死亡者28人、累計の死亡数は902人となっています。

線の左側はワクチンパスをもっている人だけが入れます

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

現在はワクチンパスポートの事実上の強制はなくなったニュージーランドですが、今年の4月までは、接種2回以上の人のみに発行されるワクチンパスポートがなければ、図書館をはじめ、ほとんどの建物に立ち入ることが許されず、飲食店での飲食は拒絶され(持ち帰りは可)、医療や教育従事者は解雇されるという非常に厳しい政策がとられていました。私の周囲にも、仕事を失わないために泣く泣くワクチン接種をした人が多くいます。マスク着用に関しては、現在も公共交通機関でのマスク着用は義務化され、外に出る時はマスク着用が奨励されています。学校は対面授業が再開しましたが、大学など一部ではリモート授業のみという状況がつい最近まで続いていました。

ワクチン接種会場

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

昨年後半に感染者数が増え出すと政府は接種者にクーポン等給付などワクチン接種キャンペーンを大々的に行いました。報道にも偏りが見られ、また上述したようにワクチンを打たないと行動や日常生活が著しく制限され、さらに失職の危機に瀕する政策もあって、対象となる人口の9割以上が2回接種を完了しています。3回目に関しては、71%が接種済みと発表されています。

接種状況からもわかるとおり、ニュージーランドでは比較的容易にワクチン接種が受け入れられました。しかし、日常生活で接種者と未接種者を区別する場面が多く見られたことから両者の間で分断が起きているように思います。フードコートでは飲食店の床が線で区切られ、線の向こう側のテーブル席にはワクチンパスをもつ接種者のみが立ち入り可能という現場を見た時は、複雑な気持ちになりました。自由と平等な国だったはずのニュージーランドですが、新たな局面を迎えているように個人的には感じられます。

ある日のサタデーマーケット。マスクはしていたりしていなかったり

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

2年以上、国境を閉じていたニュージーランドですが、徐々に外国からの訪問者を受け入れ始め、8月からは旅行者を含むすべてのビザ保持者の受け入れを再開すると発表されました。今後は、諸外国に倣って「ウィズコロナ」になっていくのでしょう。ニュージーランドの重要な産業である観光や留学受け入れも再び活発になっていくものと思われます。 パンデミックが起こってからの一連の動きを見て今思うのは、当初、厳格なロックダウンをニュージーランドで実施することができたのは、政府にそれを可能にする力があったからで、その力はワクチンを推進する際にも強烈に発揮されました。ある意味、自粛要請にとどまる日本とは対照的な経緯をたどったわけですが、どちらがいいのか自問自答する日々です。


目時能理子(めとき・のりこ):イタリア語・英語翻訳家、英語・イタリア語コーチ、ニュージーランド・オークランド在住だったが、最近日本に帰国


コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(26)アメリカ・ハワイ

アメリカ・ハワイ(人口約141.6万人)

シーモア・ダニエル

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

新型コロナ発生から2年以上経過したという事実が感覚的に噛み合っておらず、体感的には2020年から今まで「時の経過」の境目がなく繋がっている気分です。今までパンデミック前のライフスタイルがずっと「お預け」状態だったため、こういった心理状態が生まれると思うのですが、規制が大幅に緩和されたアメリカではもう「脱コロナ」色がとても強く、話題にも上らなくなってきました。

11月に中間選挙での惨敗が予測されている民主党は、「規制党」のレッテルを払拭すべく緩和に躍起になっています。とは言ってもコロナが消えたわけでは全くなく、目下オミクロンの変異株BA.2が猛威を振るっている最中です。同じく、ハワイでもコロナ感染は急増しており、少なくともホノルル市内での新規感染者数は1日約400人強を記録しております。ちなみにハワイ州のワクチン接種率は現在77%で、アメリカ合衆国全体で見ると接種率が6番目に高いと言われております(1位:ロードアイランド州)。

2年前に我が家にやってきた猫のハナちゃん。すっかり大きくなりました!

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

個人レベルというか家族レベルでは、1年前に比べるとかなり安定感が戻ってきた感じでしょうか。1年前は子供がリモート授業を受けながら家にずっといる状態で、同時に妻が子供の世話をしながら彼女自身がリモートワークをこなさなければならないという、聞いただけでも青ざめる生活でした。普段なら学校で楽しく友達と過ごす貴重な時間が奪われ、退屈なリモート授業を強制されれば誰でもストレスは溜まります。そのストレスの矛先が妻に向き、結果として妻の仕事が疎かになり、それがまたストレスになるという悪循環が出来上がってしまったため、妻は帯状疱疹にかかり1か月休職をする事態に。その上、コロナという見えない脅威が子供たちの心理的安定感にダメージを与え、娘達、特に長女の心理状態は芳しいものではありませんでした。「ウィルス」に対する過剰な恐怖心から長女は手洗いを何回も繰り返すようになり、手の皮が剥けるまでの深刻な状態になっていました。

一方私は、リモートワークが許されず、逆に出勤することによりメリハリができたお陰で、妻のようにうっぷんが溜まることがなく、よく「いいとこどり」をしてると文句を言われました。そして、家に帰ると長女と妻の怒鳴りあいの喧嘩を調停する毎日。実は1年前に引っ越しをしたのですが、引っ越しの遠因はコロナにあったことに気づきました。考えてみると、あれもこれもコロナが原因で起きたことが多いのですが、その渦中にいるときは「これはコロナによって起きていることなんだな」とまでは思い至りませんでした。

今は1年前に比べコロナ予防に対する心がけがかなり緩んでいます。もちろん病院に勤務しているのでマスクとゴーグルはつけているのですが、用心からではなく惰性でつけているのが本音です。また、以前はコロナ感染者との濃厚接触がある度に「どうしよう」と思っていましたが、正直、心配するのに疲れました。また、前はレストランに行くことに対し消極的でパーティーに呼ばれても不参加というパターンが多かったのですが、最近では積極的に参加しています。昨日もパーティーに呼ばれ、楽しい一時を過ごしました。

一時期は「どうなるのだろう」と、心配していた長女の荒れた心も、いまでは打って変わってパンデミック前の状態に戻りました。やはり学校が開校したことで「毎日友達と会えるようになった」のが一番大きいですね。この私たちの世代が「当たり前」だと思っていたことが容赦なく奪われてできなくなってしまった事態を子供に「理解しろ」と言っても難しいと思います。私たちはコロナによって強いられた「我慢」の限界に近づいてきているのではないでしょうか? コロナだから「やらない、できない」は、1年前は通用したかもしれませんが、今では多少言い訳がましく聞こえます。ダラダラと長くなってしまいましたが、コロナ渦でも無事に結婚13年目を迎えることができたこと、また「タロウ」君という新しい猫が家族に加わったことを報告させていただきます。

新しく家族に加わったタロウ君です

シーモア・ダニエル:臨床カウンセラー。2019年よりハワイ在住


コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(25)ルワンダ

ルワンダ(人口約1230万人)

吉田香奈子

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

去年2021年末はオミクロン変異株の感染拡大により、一時的に感染者数が増えたこともありましたが、ルワンダ政府の厳格なコントロールが功を奏し、今年、2022年の初めから急激に感染者数が減り、今では、1日あたりの新規感染者数は5人くらいで推移しています。市井の人々からは、「コロナは終わった」という声が聞こえてくるほどです。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

移動に関しては、時間や地域の規制もなく、皆、自由に行き来をしています。店舗も通常営業に戻っているほか、学校も再開しています。一方で、ルワンダ政府の通達により、公共の場所では、ワクチンを2回接種したという証明書(ワクチン証明書)の提示が求められます。また、公共の場所でのマスク着用も義務とされています。

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

2回目のワクチンを接種した国民は全人口の約7割に当たる830万人、3回目のブースター接種を終了した人は全人口の約3割の370万人います。現在では、ワクチン接種が開始された当初のようなワクチンへの不信感は薄らいでおり、みんな積極的に3回目接種を受けているように見受けられます。ルワンダ政府は、毎日COVID検査の実施数、感染者数、死者数、ワクチン接種者数を発表し続けているほか、2週間に1回、コロナ対策を状況にあわせて柔軟に変更、実施してきました。この結果、目に見える形で予防ができているとわかることから、国民もワクチンを信頼しているのではないかと思います。

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

2022年4月現在、街ゆく人々はリラックスしており、コロナは収束した、という認識が広く共有されています。公共の場所でマスク着用が義務づけられている一方で、銀行、携帯キャリア会社など、ルワンダで高学歴、高給与の人々が集まる職場ではマスクを外して仕事をしています。レストラン、バーも通常通り営業しており、現地人も外国人も、人生を楽しもうとしています。過去のコロナ感染予防政策の経験から、たとえ再び感染者数が増えても、2週間から1か月間、政府による移動規制がかかれば、それで収束できると信じているのでしょう。また、これ以上、コロナによって人生に制約を課されたくない、という思いも見えます。

日本人はコロナ予防に慎重を重ねている印象がありますが、現在、日本の年齢中央値は48歳であるのに対し、ルワンダのそれは20歳であり、親子ほども違うことから、行動様式も異なってくるのでしょう。ルワンダは今後も、政府への信頼と人口の若い力が後押となって、コロナ収束という楽観的な見通しを信じ、脱コロナ復興を進めていくでしょう。


吉田香奈子(よしだ・かなこ):主婦。夫は国際NPOに勤務している


コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(24)オランダ

オランダ(人口約1728万人)

國森由美子

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

政府や国立の研究機関が提供している情報によると、新型コロナウイルスの新規感染陽性判明者数は2022年4月初旬に1日あたりの平均が10,000人を超えていましたが、その後減少し、4月22日現在では3,000人台となっています。

オランダでは、昨年2021年11月初旬、陽性判明者数が初めて10,000人を超えました。当時はちょうど南アフリカでオミクロン変異株の出現が報告された頃で、オランダでの主流はまだデルタ株でした。その後、1日当たりの新規陽性判明者数が最高の86,000人を記録した2022年2月時点では99%がオミクロン株に置き換わっていて、現在もオミクロン株が主流となっています。ちなみに、日本では同じオミクロン株でもさらに細かい型について取り沙汰されているようですが、オランダではそれは問題視されていません。

筆者の受けた印象では、今年3~4月にかけてはもう誰が感染してもおかしくはない状況でした。オミクロン株が主流になってからは子どもや10代の感染がひじょうに多く、わたしが直接やり取りをしているピアノの生徒たち(小学生)は、学校および家庭内の感染状況に日々ふりまわされ、大変そうでした。政府の規制により、家庭内感染が判明した場合、同居家族全員が5日間自粛生活をする、その後、最寄りのPCR検査会場で陰性結果が出れば通常にもどる、また、学校でもクラスに感染した生徒が出た場合、当人のみならず兄弟姉妹も5日間自粛、体調が悪くなければオンライン授業を受けるということが義務づけられた期間は、傍目から見てもかなり混乱状態でした。これはもちろん子どもたちだけでなく、教師にも当てはまるので、たとえば担任・副担任のどちらもが検査で陽性になってしまうと学級閉鎖にせざるを得ない状況になります。中学校以上の教育機関でも、生徒・教師そして各家庭の誰もがあれこれ苦労していたと思います。

自宅近くの小学校にて。休み時間の小学生たち
新緑に子どもの歓声が響いていました。平和な光景ですね

わたしの知人(70代)は、ブースター接種を含め3回のワクチンを接種済みにもかかわらず感染したそうで、そういう例はほかからもかなり聞いています。隣人(60代)も「PCR検査で陽性が判明した」とある日連絡をくれました。隣人は持病があるので、ブースター接種を含め常に早めにワクチン接種を受けており、「この二年、ほんとうにとても気をつけて過ごしてきたのに」と嘆いていました。幸い発熱はなく、頭痛と多少咳が出るくらいの症状で、ほどなく回復したそうです。これほどの感染力の強さなので、もしかしたらわたしも知らずに感染していたかもしれません……。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

現時点での規制や制限は限定的で、たとえばマスク着用義務に関しては、病院内や空港および機内などでは継続されていますが、それ以外の場、公共交通機関やスーパーマーケットなどの店舗内や屋内イベント会場、飲食店などでは3月下旬に廃止されました。

教育機関も今回のパンデミック以前とほぼ変わりなく対面授業をしています。そして、マスクの着用も含め、こまめな手洗い、ソーシャルディスタンス(オランダでは1.5m)すべてが3月下旬より義務ではなく推奨、つまりアドバイス(勧告)になりました。プロサッカーなどスポーツの試合もコンサートも人数制限はすでにありません。また、飲食店の営業時間の制限もなくなりました。

4月27日のキングスデー(国王誕生日)の祝日
水上カフェやボートの上で盛り上がる人たち

たくさん特設されていた保健所管轄の無料のPCR検査場もどんどん減っています。今後は各自必要に応じてセルフテストキットを購入、自己責任で健康管理をすることになります。このようになった理由のひとつとしては、オミクロン変異株では感染しても重症になることが少なく、また病院もなんとか逼迫せずに治療に従事できているということがあげられます。ただ、高齢者や持病のある方などは引き続き注意して過ごす必要があるでしょう。

オランダでは、昨年2021年春から夏にかけて規制が緩和されて感染も落ち着いたかに見えたのですが、それはやはり一時的に過ぎず、ウイルスは性懲りもなく変異もすれば蔓延もして、12月にふたたびかなり厳しいロックダウンになりました。その時期にロックダウンしたのは欧州で唯一オランダだけだったそうです。そして、感染者数が下がりきらないまま、規制は段階的に解除され、前述のとおり3月下旬にほぼ廃止となりました。ご存じのように、2月下旬からのロシアのウクライナ侵攻でEU圏内のオランダも大騒ぎになりました。これにより、コロナ問題と優先順位が入れ替わった印象もあります。

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

ワクチンの3回目のいわゆるブースター接種は、2021年11月から医療・介護関係者や高齢者から順に受けられるようになっていました。そもそもワクチン接種が始まった当初は2回接種でこのウイルス騒ぎが収まっていくだろうとの希望的観測があったわけですが、その後の感染症専門家たちの見解でブースターが推奨されたわけですね。そして、今ではさらに二度目のブースター接種(すなわち4回目の接種)も始まっています。政府発表の数字では、オランダの18才以上のブースター接種率は63.3%となっています。

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

上記いろいろ書きましたが、オランダの現状をいま一度簡潔に述べるとすれば、今回の新型コロナ感染症COVID-19については政府の判断でいわば強制終了した感があります。個人的にも、もちろんこのまま終息していくことを願っていますが、言うまでもなくウイルスがこれでなくなるわけではなく、今後はようすを見ながら気をつけて過ごしていくしかないのではと思っているところです。

キングスデーのライデンの街中のようす

またこの時期のオランダは5月休みというのがあり、外国へ旅行に行く人たちがとても多く、空港が大混乱となっています。KLMなどは地上勤務者の人員不足でフライトをキャンセルしたりもして、批判噴出状態です。以下、オランダ語のニュースのリンクです。いかに異様な光景か、雰囲気だけでもわかるかと思います。

https://nos.nl/artikel/2427132-topdrukte-schiphol-voorbij-maar-nog-steeds-lange-rijen-bij-incheckbalies


國森由美子(くにもり・ゆみこ):オランダ語文芸翻訳者、音楽家。オランダ・ライデン在住


コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(23)マレーシア

マレーシア(人口約3200万人)

橋本ひろみ

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

マレーシアでは2021年の年末から2022年の初めにかけて、1日の新規感染者数は停滞していましたが、今年の2月からオミクロン株が猛威をふるい、2022年3月10日をピークとして、1日に30,787人もの新規感染者がでました。知り合いや身近な人のなかにも感染者が出たという話も多く耳にしました。その後減少し続け、現在では昨年末同様の状況にまで収まってきました。

ワクチン接種がかなり進んだため、現在の感染者数は134,469人いるものの、その97.6%にあたる131,235人は自宅隔離であり、重症化するケースも少なく、病院や隔離センターの負担や使用状況も去年の逼迫した状況に比べかなり余裕が出てきています。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

2021年10月18日からクアラルンプールを含む州や地域において、国家回復計画(NRP)および強化された活動制限令(EMCO)の第4段階が施行され、標準作業手順書(SOP)の緩和が発表されました。この段階では、マスク着用はまだ義務づけられていますが、手洗いなどの感染対策を行い、ソーシャルディスタンスを保つなどといったSOPを守ることで、3回目までのワクチン接種完了者については、ほとんどの活動が再開できるようになりました。

また、宗教活動や集会も許可され、州をまたがる移動も規制がなくなり、レストランなどの営業時間の制限もなくなりました。SOPを守ることにより、スポーツやライブやイベントも再開され、学校や教育機関も再開が許可されました。今年の2月8日には、建物に入る前に行われていた体温チェックと手書きの個人情報の記録の提示義務も廃止されました。

さらに、2020年3月18日よりコロナ感染症対策として実施されていた観光ビザでの入国禁止措置が2022年4月1日より解除されることがマレーシア政府より正式発表され、ワクチン接種完了者に関しては入国時の自宅や隔離施設などでの隔離期間も免除されるようになりました。現在、これらの規制緩和によりコロナ前の状況にさらに近づいています。

活気を取り戻しつつあるバザーの風景

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

2022年4月12日現在、マレーシア保健省の公開データによると、最低1回のワクチン接種を受けた人は、27,567,306人で、国内の人口の84.4%であり、2回目の接種を受けた人は25,984,454人で国内人口の79.6%、ブースター接種を受けた人は15,933,049人で国内人口の48.8%となっています。2回目の接種までは政府の奨励もうまくいき、わりとスムーズに接種が進んでいきました。しかし、ブースター接種に関しては、副反応が大きいことや様々な懸念や意見もあり、まだ国内人口の約半分にとどまっています。

いつもの渋滞が戻ってきたクアラルンプール中心部

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

今年の4月1日、ワクチン接種完了者は、マレーシアとシンガポール間を隔離や規制なしで移動ができるようになったことを受け、国内はお祭り騒ぎのような歓声に包まれました。これを皮切りに徐々に他国との国境も開かれていき、多くの人が待ち望んでいた海外旅行や留学、海外での就職活動が、勢いを増して展開していくと思われます。

しかし、新型コロナウイルスがマレーシアに到来して以来、コロナ禍で受けたダメージは経済的にも精神的にも大きく、今後いかに回復に向けて活動していくのかが問われています。とくに経済面では、失われた雇用、外国人労働者不足、国や企業、個人の経済危機、流通の停滞など、多くの課題が残されています。

また、規制は大きく緩和されたものの、人々のコロナ感染に対する懸念はまだまだ強く、企業でも、仕事が在宅でできれば、社員はそのまま在宅勤務を続けていますし、学校や教育機関でも対面授業は再開されているものの、感染者が出るとなんらかの対応をしなければならなかったり、また、いまだにオンライン授業を続けていたりする教育機関もあります。実際の活動においては、状況を見ながら慎重な判断が迫られています。

現在(2022年4月15日)マレーシアはラマダン(断食)の月で、約半月後には断食明けを祝うマレーシアの最大の祝祭ハリラヤがあります。従来は、首相(や王室)のハリラヤ・オープンハウスが開催され大勢の人が集まったり、帰省や親戚宅を訪問して家族や親戚と共に盛大にお祝いをしたりします。今年はウィズコロナで、どのようなハリラヤになるのでしょうか。週単位、月単位で状況も変化していますが、状況を見ながら最善の判断をしていきたいと思います。一日も早くコロナの終息を迎え、新しい日常が到来することを心待ちにしています。

マスクを着用し、公共交通機関を利用する人々

橋本ひろみ:マレーシア、クアラルンプール在住。翻訳者、日本語教師


コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(22)オーストラリア

オーストラリア(人口約2499万人)

徐廷美

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

昨年、2021年6月のレポートでは、1日の新規感染者が数十人にとどまっていると述べたが、オミクロン株の影響からか、12月中旬から徐々に感染者が増加した。そして今年1月に入るとその数は急激に増え、中旬には1日の新規感染者が15万人に上るまでとなった。その後減少傾向を見せ、2万人前後まで下がったところで、3月中旬より再び上昇を見せ(これはオミクロン株BA2の影響かどうかはっきりしない)、現在は5万人前後で推移している状況だ。

感染者の多くは20代であり、次いで30代、40代だが、10代の感染者も多い。コロナによる死亡者数は、やはり70代以降に集中しており、80代が最も多い。だが、4月15日現在、ICUに入院している全国の重症者は129人で、医療現場において脅威とはなっていない。ワクチン接種2回完了者は人口の83.4%で、3回目のワクチンについては61.7%が接種を終了している。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

オーストラリア政府は従来、厳しいロックダウン政策をとってきた。国境も完全に封鎖し、オーストラリア国民と永住権保持者以外の入国を認めてこなかった。ところがイギリスなどヨーロッパ各国に倣ったのか、昨年10月15日にはロックダウンを終了した。一部公共施設でのマスク着用を求める以外は、大人数での集まりも制限しなくなり、現在はほぼコロナ以前の生活に戻っていると言っても過言ではない。

今年2月18日には水際対策もゆるめて、留学生やビジネスマンだけでなく、一般観光者の入国も可能になった。飲食店の営業制限もなくなり、スマートフォンによる入店チェックも入店者の追跡も現在は行われていない。教育現場も小学校から大学まで、全て対面授業となり、マスクの着用も義務づけられてはいない。

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

人々はすでにウィズコロナ政策を受け入れ、感染をそれほど恐れているような様子は見られない。このイースターホリデーは街も活気にあふれ、海外旅行を楽しむ人々が急増したと言われている。病院、高齢者施設等では、コロナ感染対策を行っているが、他の感染症と同様のレベルの予防策、ケア方法であり、コロナだけを特別に恐れる雰囲気はなくなりつつある。今後も、経済の復活を目指したい政府のコロナ政策に大きな変化はないと思われる。

祝祭の雰囲気を取り戻したシドニー・ロイヤルイースターショーの模様(4月17日、シドニー・オリンピック・パークにて)

徐廷美(そ・じょんみ):2014年からオーストラリア・シドニーで7年生活し、日豪両国の看護師資格を取得。現地の大学院で看護学を専攻後、現在は日本で大学教員


コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(21)モザンビーク

モザンビーク(人口約3000万人)

森本伸菜

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

2022年4月5日時点でのコロナ感染者総数は約22万5,000人。死者は2,200人。2020年9月に非常事態宣言から災害事態宣言(State of Public Calamity)に移行して以来、現在も感染拡大が続いているとしてレッドアラートのレベルには変更ありません(*)。

*災害事態宣言は、3段階の警戒レベル(警戒度が高い順に赤、オレンジ、黄)が設定されており、今現在も「警戒レベル赤」である。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

現在、夜の外出禁止令は撤廃され、すべての国境も開いています。学校もすでに普通に再開しています。長く禁止されていたバーの営業も再開され、営業時間も今では23時までになりました。私のいるトーフはビーチで有名なところです。2020年には閉鎖されていたそのビーチも、昨年6月には「黙って歩くだけ」が許可され、次に「16時まで遊べる」ようになり、今は「18時まで遊べる」ようになりました。ただし、ビーチでの飲酒は今でも禁止です。

屋内、または屋外でも人が多く集まる市場などではまだマスク着用が義務づけられていますが、マスクをしている人はどんどん減っています。なお、政府からの支援は、以前にもお伝えしたように何もありません。

パーティができるようになりました

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

現在のワクチン接種率(必要接種完了)は、国民の43%と公表されています。ただし、これは2回接種したとして計算されているので、1回だけの人もいるので、人数をみればもっと高い数字になると思います。ワクチンは海外から寄付されたもので、そのメーカーは中国製が数種、そのほかはアストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどです。やはり中国製のものが一番多いと思います。

一般の人は当初はなんとなくワクチンに対して拒否ムードでしたが、政府の強い推奨によって時間とともに抵抗感がかなりなくなったように見えます。とは言ってもワクチン自体の絶対数が足りないので、全員が打てる状況ではありません。

私たち家族も本来は無料のはずの中国製のシノバックを有料で2回打ちました。その後、2021年11月末に息子のパスポートを取るために南アフリカに出国した際、ブースターとしてファイザー製のワクチンを打ちました。ファイザーでは副反応が出て、熱、倦怠感がありながらも、経営しているレストランのための食材集めをしておりました。そしてモザンビークに戻るためにコロナのテストをしたところ陽性となり、出国できなくなり、滞在を2週間近く伸ばしました。ブースターの副反応と思っていたのは、コロナ感染の症状だったようです。

下校風景

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

現在もレッドアラートのレベルであることに変わりないですが、私たちの周りではもう、コロナは深刻な問題ではないとの認識が大きく広がっています。うちのレストラン・スタッフ12人のうち半数以上が、昨年12月から今年の1月にかけてコロナに罹りました。特に検査をしたわけではありませんが、症状からコロナだと確信しています。皆、症状も軽く終わりました。

今の時期は海外からの観光客が少ない時期ですが、それでも過去2年の同時期に比べ、外国人観光客は確実に増えているように見えます。皆、今年はコロナ以前の状況近くに戻るだろうと期待しています。友人たちは母国への帰省を含め、海外旅行の計画を立て始めています。


森本伸菜(もりもと・のびな):モザンビーク・トーフで日本食レストラン「すみバー・アンド・キッチン」を南アフリカ人の夫と経営。現地の子どものためのコミュニティなどの活動に深く関わっている