コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(27)ルワンダ

rwanda

ルワンダ(人口約1,230万人)

吉田香奈子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

9月27日現在、累計感染者数4,820人、累計死者29人です。回復済みの患者数を差し引いた現時点の感染者数は1,721人です。人口が1,200万人ですので、先進国と比べたら死者数はかなり少ないです。感染者数が多い理由は、1日当たりの検査数が2,000〜3,000件とかなり多いことが影響していると思います。

第2波が来たというよりは、第1波がまだ終わっていない、という印象です。じわじわと国全体に感染者が広がっていますが、医療現場ではICU病床が増やされ、平静が保たれています。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

8月、首都キガリで急激に感染者数が増加してからは、首都への往来を禁止されていましたが、9月25日以降、往来が再開されました。国際便も再開しています。3月から閉鎖されていた学校もようやく再開する見込みが立ちました。外出時のマスクの着用は義務化されています。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

貧困層への食糧の配布がありました。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

夜間を除き、外出自由ですので、特に不便を感じることはないようです。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

ようやく新規感染者数の増加が落ち着いてきたようです。この傾向が長く続けば良いのですが、6月に移動規制を緩和した途端にクラスター感染が発生した経緯がありますので、油断はできません。


吉田香奈子(よしだ・かなこ):ルワンダ・キガリ在住の主婦。夫は国際NPOに勤務している。

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(26)オーストラリア

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オーストラリア(人口約2,499万人)

徐廷美

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

前回、5月20日時点での感染者は7,079名と報告したが、ビクトリア州メルボルンでの第二波により、9月2日時点での総感染者数は25,923人、死亡者数は100名から663名へと増加している。現在一日の新規感染者はニューサウスウェールズ州で50名前後、ビクトリア州ではようやく100名を切ってきたところだ。死亡者もビクトリア州での死者が総死亡者数のほとんどを占める(576名)。ビクトリア州の第二波は6月下中から始まり8月上旬にピークを迎え、最も多い新規感染者は一日で700名以上にもなった。メルボルンではこれを受けて、厳しいロックダウンが導入され、学校の閉鎖、夜間外出禁止、日中の外出制限が行われた。感染者の多くが海外からの帰国者で、空港での検査をすり抜けてしまう例や、帰国者のホテル隔離の不徹底などが問題視されている。

各州はメルボルンでの感染拡大を持ち込まないよう、州境を封鎖するなどの手段を講じたため、ビクトリア州以外での第二波は起こっていない。シドニーは現在、一日に数十名の新規感染者がいるものの、ほぼ以前の生活に戻っていると言ってもよい。ただ、大学はほぼオンライン授業を続けており、リモートワークは推奨されたままである。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

オーストラリア永住者の再入国は認められているものの、一部のビジネス、留学、旅行等の外国人の入国は未だに認められていない。そのため、例えば留学ビザで居住している者が日本に一時的に戻った場合、オーストラリアに再び入国することはできない状況である。メルボルンは現在もロックダウン中のため、バーやクラブ、映画、コンサート、カジノ等は閉鎖されている。すべての学校もオンライン授業である。また、マスク着用も義務付けられ、行動制限などの規則を破った場合の罰金もある。シドニーを含めた各都市では、行動制限、休業要請はなくなっており、マスクはスーパーなどで推奨するにとどまっている。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

休業補償や生活支援は、永住者、国籍保持者に限られている。留学生への授業料減額などは各州によって異なるが、授業料の10%を減額するなどの支援や、大学独自の留学生への支援を行っているところもある。PCは中学生以上のほぼ100%の学生がもともと保有しているため、オンライン授業の導入はスムーズに行われてきた印象がある。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

ロックダウン中のメルボルンは先にも述べたように、依然として行動が制限され、日常とはかけ離れた生活であるが、それ以外の地域ではほぼ日常生活を取り戻している。ただ、感染者が全くいないわけではないので、やはりレジャーや外出を控えたり、宅配を利用したりするなどの傾向は変わっていない。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

前述したとおり、日本との行き来ができないことが、ややストレスである。基本、国際郵便も受け付けていないので、日本の食品などが手に入りにくい。気兼ねなく外出できるわけではないので、やはりまだ窮屈な印象がある。観光国のオーストラリアが観光客なしで、しかも留学生も受け付けていない状況で、政府としてはかなり財政的に痛手ではないかと思われる。

コロナ感染症については、シドニーでは感染する機会は低い印象があり、少しでも体調が悪い場合は、近隣ですぐに無料で検査を受けられるため、そういう点は安心できる。


徐廷美(そ・じょんみ):オーストラリア・シドニー生活6年目。日豪両国の看護師資格をもち、現在は大学院で看護学を専攻している。


コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(25)イタリア

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イタリア(人口約6,046万人)

飯田亮介

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

夏のバカンスシーズンでひとの移動が増加して以来、3カ月ほど前から第二波と思われる増加が始まりました。海外旅行から帰ってきた人々が原因と思われる感染者増加もあります。

全国の新規感染者数は9月18日現在で1,907人/日。最悪だった3月21日(6,557人/日)に比べればまだ少ないですが、6月末にいったん1日あたり120人台まで落ちたことを考えれば、やはり増えてきています。ただし、第一波にくらべるとまだ重症患者数と死者数は少なく済んでいるようです。同じ欧州のフランスやドイツやスペインなどに比べても(各国データリンク)、イタリアの第二波の感染者数増加スピードは非常にゆっくりです。疑わしきはすぐに検査という体制が定着したこと、重症化リスクが高い老人たちが今も警戒していること、そのあたりに理由がありそうですが、それだけでは近隣諸国との明白の差は説明できません。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

EU諸国ならば基本的にどこでも自由に行けるようになりましたが、マルタ、スペイン、ギリシア、クロアチアへの渡航者は帰国前72時間以内または帰国後48時間以内のPCR検査が義務づけられています(少なくとも10月7日まで)。同じ欧州でもアルバニアなど感染爆発の起きている一部バルカン諸国やベラルーシ等への渡航は規制されています。ちなみに日本への渡航者は、イタリア帰国時に14日間の自宅待機が義務づけられています(こちらも10月7日以降に規定が変化する可能性があります)。

屋内公共スペースでは今もマスクの着用が義務づけられていますが、飲食店や学校などでは席と席のあいだの法定ソーシャルディスタンスの確保義務があるため、着席時はマスクを取ることができます。

最近、第二波の影響で、午後6時以降は路上でもマスクの着用が義務づけられるようになりました。これは主に都市部の盛り場で夕方以降、若者を中心に多くの人が集まり、密集状態が生まれやすいことをにらんだ対策です。ただしジョギングなどの運動時は免除されていますので、マスクによる直接の感染予防が目的というよりは、ソーシャルディスタンスを維持させるための心理的効果を狙った着用義務ではないかと思われます。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

9月14日より全国で学校が始まりました。僕の住むマルケ州では実に7カ月ぶりです(ただし内3カ月は例年どおり夏休み)。学童の感染予防を目的とした指針はもちろん多々ありますが、どれだけ効果があるのかは怪しいところで、第二波の始まった今、学校再開により感染者数増加スピードに拍車がかからないか不安はあります。

しかし学校に子どもを送れないと、共働きの多いイタリアでは親たちの仕事に対する影響が相当に大きく、ひいては国の経済に対する影響も馬鹿になりません。ロックダウン中に行われたリモート授業を継続するという手もあるでしょうが、児童の使うデバイス、家族によるサポートの有無等、家庭ごとに環境の差も大きく、義務教育としては不公平過ぎるという意見も出ています。

ネオワイズ彗星とモントットーネ村

ネオワイズ彗星とモントットーネ村

⑤近況について、ご自由にお書きください。

僕のいる人口1,000人弱のモントットーネ村ではこれまでに感染者が4人しか出ておらず(それでも人口比では決して少なくないのですが)、重篤者もいないために、海外で報道されるイタリアよりもずっと雰囲気がのんびりしており、店内のマスク着用もけっして徹底されていませんし、握手やハグをかわす姿も珍しくありません。子どもたちが外で遊んでいる時に、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの維持をうるさく言う親もほとんどいません。先日、午後6時以降にマスクも着けずに村の若者数名が路上で集まっていたため、警察が罰金を科したところ、大げさだとして不評を呼んだほどです。

第一波でCOVID−19が猛威を振るい、世界的に大きな話題となったイタリアですが、全国まんべんなく被害があったわけではなく、大きな被害は主に北部、それも一部の地域に斑点状に集中しています。そのため実際には、同じ「あのイタリア」でも、土地によっては警戒レベルにこうした温度差があります。そこが危ないと言えば、危ないかもしれません。

第二波がこのまま緩く過ぎ去り、ワクチンが完成するというシナリオに期待したいところですが、これから秋冬にかけて例年のウイルス流行シーズンになるので、けっして楽観はできないと思っています。

ヴェットーレ山と天の川。大好きな山にもまた行けるようになりました

ヴェットーレ山と天の川。大好きな山にもまた行けるようになりました


飯田亮介(いいだ・りょうすけ):イタリア語翻訳者。イタリア中部・モントットーネ村在住。https://note.com/giapponjin

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(24)マレーシア

malaysia

マレーシア(人口約約3,200万人)

橋本ひろみ

①新型コロナウイルス感染について、いまはどうなっていますか?

マレーシアでは、2020年6月10日から8月31日まで回復活動制限令(RMCO)が発令され、感染終息に向けて取り組んできましたが、まだ見通しが立たず、先日2020年12月31日まで延長するとの発表がありました。現在の感染者などの状況は以下のとおりです。

1.新規感染者: 14名
2.感染者合計:9354名
3.完治者合計:9075名(97.0%)
4.治療中患者: 151名(1.61%)(重症患者 5名 内呼吸器装着 3名)
5.死亡者計 :128名(1.4%)

現在の治療中患者数は151名で、そのうちICU室での治療が必要な患者数は5名(呼吸器使用3名)。数は安定していますが、第二波感染を抑え込むための対策として、公共の場所でのマスク着用、三密を避ける行動や手洗い、うがいの徹底などが求められています。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

7月の下旬にマレーシアのケダ州でクラスターが発生しました。これはインドから帰国した永住権を保持しているレストランのオーナーが、帰国後に義務づけられている自宅隔離を守らなかったために、従業員や顧客に広がったものです。現在でもその特定場所は封鎖や除菌活動が行われており、このクラスターは感染力が高いらしく、さらなる感染が懸念されています。また、マレーシアでは8月1日から公共の場所ではマスク着用が義務となり、違反者は1,000リンギット(日本円で約25,000円)の罰金が課されます。また自宅隔離やSOP(標準行動手順書)を守らない人も多くみられ、特に厳しく監視されるようになりました。

③外国への出国、外国からの入国についての制限はありますか?

基本的にマレーシア人の国外渡航は禁止されています。外国人によるマレーシア入国に関しては、政府の指定施設での14日間強制隔離を強いられますが、長期ビザ保有者などは入国許可を得られれば入国することができます。また、マレーシア政府は海外からの入国者からの陽性患者増加を非常に懸念しており、感染者数の多いインド、インドネシア、フィリピンからの入国に関しては一時的に停止されています。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

現在では一部を除き、経済活動や学校もほとんどが再開し、日常が戻ってきたように思いますが、マレーシア政府は各業界に対して発令したSOPを順守するよう、引き続き厳しく監視しています。多くの場所では、政府の〈My Sejahtera〉というアプリで登録し、入口で体温チェックを受け、消毒が行われます。37.5度以上の発熱があれば入場できません。少しでも体調不良や発熱があれば、企業や学校も休みととるように奨励する傾向があり、イベントや一部の業界などでも依然として人数制限や時間制限を行っているるものもあります。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

現在、マレーシアでの感染状況は安定しており、政府の対応も評価されているようですが、クラスターなども確認されており、終息までにはまだまだ時間がかかりそうです。日常が少しずつ戻ってきてはいるものの、自宅勤務やオンライン授業を引き続き行なっている企業や学校も多く、まだ再開していないレストランや店なども多くみられます。収入の減少や人員削減などで職を失った人もいます。これから経済活動をどのように立て直していけるかが問題です。政府の政策も重要ですが、コロナの感染終息は国民一人ひとりが結束して努力していかなければならない課題なので、政府も国を挙げて国民全体の意識の向上を呼びかけています。生活面でも文化面でも、コロナと共存しながら最善の生活や新しい日常を模索する日々が続きそうです。

クアラルンプール市内の病院の入り口における登録と体温チェック設備

クアラルンプール市内の病院の入り口における登録と体温チェック設備


橋本ひろみ:マレーシア、クアラルンプール在住。翻訳者、日本語教師

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(23)ポーランド

poland

ポーランド(人口約3,839万人)

岩澤葵

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

感染者数は未だ減少することなく、現在、一日に500人前後の新規感染例が報告されています。5月末から6月にかけて感染者数がやや落ち着いていたこともあり、規制解除が進みました。屋内施設でのマスク着用、1.5メートルのソーシャルディスタンスの確保等の規制はあるものの、街は日常の様子を急速に取り戻しました。バカンスシーズンの7月には、規制解除に喜ぶ人たちで溢れ、パンデミックなどまるでなかったかのように感じてしまう自分さえいました。しかし、こうした人びとの気の緩みから感染は再び緩やかに拡がり、第二波がやってきました。8月の半ばには800人を超える感染者が発表される日がたびたびあり、過去最悪の事態となりました。

私は7月の半ばに一時帰国して日本からポーランドの様子を見守っていましたが、感染者の数だけを見ても、日本と比べて状況が深刻なのは明らかです。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

7月3日からポーランドへの入国が可能な対象者が増え、他国と行き来する人が一気に増加しました。日本を含む7か国および、EU域内からの入国後の隔離措置が免除となりました。これは、旅行などを目的とする短期滞在も通常通り可能ということで、街には一気に観光客が増えました。

しかし第二波到来の影響により、現在は44か国の指定国空港発の航空便がポーランドへの着陸禁止。およびロシア、ベラルーシなど、一部の国からの入国後の隔離措置が再開しています。また保健省は感染予防措置のため、地域ごとに赤、黄、青ゾーンに制限のレベルを分け、行動制限を強化しています。制限は主に大人数が集まる施設やイベントなどに関する内容です。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

私が在学するアカデミーでは、申請すれば在学期間を1か月延長することが可能です。主に、卒業演習のリサイタルと論文の提出がある生徒に対する措置です。私はこれに該当するマスター2年生にあたるため、申請し、現在も在学しています。2019~2020のゼメスターの試験は、オンラインではありますが、例年通りの日程で行われました。授業はオンラインに移行しロックダウン後も継続されていましたが、集団演習や対面でのレッスンといった実技科目に重きが置かれる音楽アカデミーではほとんど意味をなさなかったと言っていいでしょう。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

日本と比べて人びとの感染に対する危険意識は非常に低いように感じられます。スーパーやショッピングモールに入店する際にマスクはするものの、街中で移動する際などは着用しておらず、みんなマスク着用を形式的に行っているように見受けられます。屋内に入る際にのみマスクを着用するという習慣がこの数か月で人びとに浸透したようです。それ以外は、ポーランドの人たちは今までとあまり変わりない生活を送っているのではないでしょうか。もちろん、リモートワークなどが定着しているようには見られますが、街での暮らしに関しては、私が目にする部分はパンデミック前と変わらない穏やかな景色です。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

本来ならば7月に留学を終了して完全帰国する予定でしたが、再びポーランドに帰ってきました。予定していたヨーロッパでのオーケストラの就職活動が一番の目的ですが、これからも予定どおり行動できるかはわかりません。他の職業もそうでしょうが、音楽家も今、非常に厳しい状況です。今後も続くであろうこの状況に対して柔軟な気持ちを持ちつつ、ヨーロッパでの活動を諦めずに続けて行きたいと考えています。


 岩澤葵(いわさわ・あおい):クラリネット奏者。ポーランド・ヴロツワフ在住。ヴロツワフ音楽院修士課程在学中。

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(22)モザンビーク

mozambique

モザンビーク(人口約2,949万人)

森本伸菜

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

モザンビーク政府の統計では感染者数3,916人、死者23人、検査をした人、96,387です(8月末時点)。隣国の南アフリカに比べるとこの数字は大変少なく、友人、同僚は皆この数字は正確ではない、検査を十分にできないから数が少ないのだと思っています。検査数の少なさ=感染者の少なさ、というわけです。とは言ってもモザンビークでは呼吸器系の症状で病院が対処しきれないという状況はなく、このパンデミックのために建てられた私のいるインニャンバネ州のコロナ・クリニックは不思議なことに閑古鳥が鳴いています。

事実、モザンビークをはじめ、アフリカ諸国はコロナ研究者たちを困惑させるほど、感染率が緩やかで、陽性者も少ない数字を維持しています(南アフリカは例外で、その次にアフリカで多いナイジェリアは世界で50番目です)。多くの研究発表がありますが、まだこのウィルスについては100%は解明されていません。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

モザンビーク政府は4月1日に緊急事態宣言を発表し、フィリペ・ニュシ大統領は3回延長しました。その3回目の延長が終わる7月末、いったいどうなるのか、と国民はかたずを飲んで政府の発表を待ちました。というのも、憲法で緊急事態宣言延長は3度までと規定されているからです。新型コロナのパンデミックなど予想もされずつくられた憲法ですからそのような規定がありました。国を本当に通常の状態に戻すのか? 7月の末はまだ感染者も多く、日ごと数が大幅に増えている時期でした。国会で1週間討論され、またさらに30日延長することになりましたが、経済を動かすためにいくつかの規制を緩めました。例えば労働者の多い職場ではローテーションで働く。外国人でも経営の中枢にいる人は入国を許すなどです。しかし、公共の場でのマスクの着用、ソーシャルディスタンスの厳守、バーなど、夜のエンタテインメント施設の閉鎖、政治集会、宗教集会、チームでするスポーツ、コンサートなど、大勢の集まるイベントの禁止などはそのまま続けられています。

先週、モザンビーク人、外国人居住者は有効なパスポート、ビザがある人は内務省の許可なしに海外渡航を許すという発表がありました。しかし、隣国の南アフリカは国境を閉じたままです(モザンビークから海外に行くには空路はすべて南アフリカ経由になります)。

学校に関していえば、ややこしい状況になっています。高校最終学年の生徒は新型コロナのため試験を受けられず、全員卒業になりました。政府はコロナの安全対策のできている学校は再開してもよいと発表しましたが、地方の学校では無理な話です。1クラス100人近い生徒数だったり、きれいな手洗いの水がない、衛生的なトイレがないという状況で、多くの親たちは学校再開に反対しています。それでも、7月末から高校は再開すると決定されましたが、実際にはまだすべての学校が閉鎖されたままです。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

私のいる小さな町、トーフでは、本当にわずかずつ「ノーマル」に戻りつつあります。人々はロックダウンに疲れているように見えます。まだかなり厳格に気を付けている人もいれば、気を緩めている人もいます。

もともとは観光客の街で、今のシーズンはヨーロッパから多くの観光客が来る時期ですが、それはまったくありません。しかし、その代わり首都マプトの多くの外国人居住者たちが、家族連れで長期滞在のためにトーフを訪れています。例年ならヨーロッパに帰るのですが、それができないためトーフが潤っているという皮肉です。おかげで私たちは週末だけレストランを開けるようにしました。スタッフの数を減らし、席も少なくしました。感染を防ぐ考えうるすべての安全対策をとって営業を始めました。仕事に戻れて、スタッフはとても喜んでいます。

みんなまだとても警戒をしており、マスク着用、頻繁な手洗いはすでに慣習化しています。これはおそらく長く続くこれからの「ニュー・ノーマル」なのでしょう。


森本伸菜(もりもと・のびな):モザンビーク・トーフで日本食レストラン「すみバー・アンド・キッチン」を南アフリカ人の夫と経営。現地の子どものためのコミュニティなどの活動に深く関わっている。

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(21)ニュージーランド

newzealand

ニュージーランド(人口約495万人)

目時能理子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

3月からの厳しいロックダウン政策が功を奏し、6月上旬以降、市中感染が100日以上出ていなかったニュージーランドですが、8月11日に最大都市オークランドで市中感染4例(全員1つの家族)が見つかり、前回同様すばやい判断で、オークランドはレベル3(2番目に厳しい警戒レベル)、それ以外の地域はレベル2の措置が取られることになりました。8月31日からはオークランドの制限が緩和され、他の地域同様、レベル2となっています。

市中感染がなかったあいだも、海外からの帰国者(現在入国できるのは原則としてニュージーランド市民および永住者のみ)の中から陽性者はごく少数ながら出ていましたが、彼らは全員管理された隔離施設にいるため、政府としてもコントロールできる状態でした。しかし今回、第2波といえるほど大きなものかどうかはわかりませんが、市中感染が見つかったことで、感染拡大を防ぐために迅速な警戒措置に至りました。

わずか一桁の感染者が出た時点でロックダウンに入るというのは、世界的に見ても珍しいと思うのですが、政府としての確固たる姿勢には安心感を覚えます。現在の陽性者は131名、そのうち入院している人は11名なので、医療現場が特に混乱しているということはないようです。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

レベル3の警戒措置のあいだは、オークランドからオークランド外への移動は制限されていました。しかし、レベル2になった現在は国内の移動に関しても特に制限はありません。オークランドに関しては、公共交通機関を利用する際、マスクの着用が8月末から義務づけられました。パンデミック当初、ニュージーランド政府はマスクの効果に対して懐疑的でしたが、少し前からマスク着用を呼びかけるようになりました(この辺りはWHOの見解に倣っているように思います)。

出入国に関しては、入国できるのは原則としてニュージーランド市民および永住者のみ(就労ビザなどの一時滞在ビザ保持者は原則として入国できません)。入国したら、空港からそのまま政府が管理する隔離施設に移動し(ホテルなどが使われています)、2週間の自己隔離が義務化されています。その費用(約20万円)は当初は全額政府負担でしたが、最近、条件によって自己負担にするようルールが変わりました。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

最初のロックダウン(3月)で実施された給与補償がまだ続いており、レベル3では小売店は営業不可、レストランやカフェは持ち帰りのみ営業可能となっていたため、この給与補償が続行する形で現在も補償が続いています。自営業者にも補助があります。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

前回のロックダウンが終わり、市中感染がゼロだった時期は、日常生活や街の様子はコロナ前に戻ったかのようでした。町中に感染者がいないので、みんな、安心して過ごしていたように思います。その後、市中感染が出て、オークランドはレベル3へ移行したわけですが、前回のような緊張感はあまり感じられず、ソーシャルディスタンスなども甘くなっていたように思います。

レジャー関係は、外国からの旅行客がいない状態なので、打撃を受けているところも多い一方、今まで国外に行っていたニュージーランド人が国内旅行をするようになったため、思ったより影響を受けていないリゾートタウンもあるようです。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

市中感染がゼロのあいだは、誰もマスクをすることなく、ある種の桃源郷のような趣があったニュージーランド。しかし、国境を閉鎖しても、南半球の小国であっても、やはり新型ウィルスとは無縁でいられないのだと思います。前回のロックダウンは国民一丸となってやりきった感がありましたが、今回の警戒措置では、反対する人々のデモなどもあり、国民のあいだでも意見が分かれてきているような気がします。いずれにせよ、まだしばらくは世界的にも沈静化することはなさそうなので、あまり振り回され過ぎず、日々の生活を大切に過ごしていこうと思っています。


目時能理子(めとき・のりこ):イタリア語・英語翻訳家、英語・イタリア語コーチ、ニュージーランド・オークランド在住。

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(20)アイルランド

アイルランド

アイルランド(人口約約492万人)

石川麻衣

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

9月15日現在、一日の感染者数357、死者3名。今までの国内感染者数31,549、死者1,787名。段階的に規制を解除していく予定だったものの、国民からの不満もあり、予定を繰り上げて6月末にはすべての規制がほぼ解除されました。しかし、第二派の到来で再び規制が強化され、室内や野外で集まれる人の数がまた制限されている状況です。

老人施設などのクラスターが目立った第一波に対し、第二波は食肉工場などでクラスターが発生し、劣悪な環境で働く低賃金労働者たちの問題が明るみになりました。また、パブ経営者たちも多大な被害を受けています。アイルランドでは、ギネスビールを飲みながらアイリッシュ音楽を楽しめるパブが旅行者にも人気ですが、今は食事を提供するパブ以外は営業禁止。5か月間店を閉め続けたパブ経営者たちはさすがにしびれを切らし、「とにかく店を開けさせてくれ」と政府に訴え、パブ同士で結束して#Supportnotsympathy(「同情するなら金をくれ」の意味)運動をSNS上で展開。「俺たちは怒っている」とばかりに腕を組んでカメラを睨みつけるパブ経営者の写真がネットに出回りました。結果、政府はパブへの1600万ユーロの補償政策を発表しました。一方で、パブが規制に違反した際の罰はさらに重くなった模様です。

歩行者天国の路上にテーブルやいすを広げるレストランやカフェ

歩行者天国の路上にテーブルやいすを広げるレストランやカフェ

そんななか、政府のお偉いさんがたがゴルフクラブの会合に出席し、その数が室内のイベントで集まれる人数50名を上回っていたことが判明し、国民の怒りが爆発しました。大臣たちは辞職や謝罪に追われ、ラジオでは毎日のように、怒り狂った国民の声が流されました。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

お店に入る時や交通機関を利用する時は、マスクはマストです。第二波後は、政府が公共交通機関の使用を控えるよう呼びかけたため、以前よりも少し空いたように思います。

近くの崖でもソーシャル・ディスタンシング

近くの崖でもソーシャル・ディスタンシング

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

フリーランスを含め、コロナで仕事を失った人や収入が減った人などがすぐに申請できる「Covid19 失業手当」(一週間に一人当たり3万円程度支給)は、2021年の4月まで続くそうです。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

保育園は少し前からすでに再開していますが、5か月間休みだった学校もようやく8月末に再開したようです。先日、観光スポットに10代の若者が100人単位で押し寄せ、泥酔して公共物を破損させた事件がニュースになりました。そういった若者の奇抜な行動が目立つ昨今ですが、彼らがストレスを抱えるのも当然かなとも思います。すべてが停止し、将来の見通しもままならない状況の彼らを、一概にも、責めるわけにはいかない気がします。在宅勤務が可能になったことで都会に住む理由がなくなり、田舎へ引っ越す人が増えました。北西部のドニゴール地方では住宅の購入数が劇的に増えているようです。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

何か起こるごとに国民がしっかりと感情をあらわにし、政府に対して怒ったり訴えたりして、不完全ながらも一つずつ速やかに問題を解決していく国民の瞬発力に、学ぶことが多い今日この頃です。

国立劇場アベイ座は、国がいま向き合うべき問題を綴った「アイルランドへの手紙」を一般公募し、国民の切実な思いを俳優たちが読み上げるという取り組みをオンラインで企画しました。ジャーナリストのフィンタン・オートゥール氏も登壇して自身の文章を詠みあげ、この「不可視な」コロナによって、食肉工場で働く低賃金労働者、集団で暮らさざるを得ない移民たち、施設で暮らすお年寄りなど、今まで視界の隅っこでしか認識していなかった「弱者」、いわば、「目に見えぬ者(The Invisible)」が可視化された、と語りました。「弱者から目を逸らせば、そのツケが自分に回ってくる。その複雑な社会構造がやっとコロナによって明るみになった。だからこそ私たちは誰一人として見捨ててはならない、これを機に誰もが『見える』存在にならなければならない」と語っていたのが印象的でした。

また、何人かの政治家も登場し、自ら詩を詠みあげました。実は、アイルランドの大統領は詩人なのです。こういった場で、政治家たちもいっしょになって何かを創り続けることの重要さを訴えるのを見ていると、この国には、政治と芸術との間にあまり隔たりがないように感じられます。不安はあるものの、夫とともに芸術に携わる者として、大変心強くもあります。

ロックダウン後初めての観劇「幸福な王子」。由緒ある建物の中でソーシャルディスタンスを保ちながらの観劇

ロックダウン後初めての観劇「幸福な王子」。由緒ある建物の中でソーシャルディスタンスを保ちながらの観劇


石川麻衣(いしかわ・まい):通訳、英日翻訳家(主に演劇、芸術関係)、ナレーター。国際演劇協会会員。アイルランド・ダブリン在住

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(19)コロンビア

colombia

コロンビア(人口約4,965万人)

ゴンサロ・ロブレド

 ①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

8月末現在、新型コロナウイルス感染者数の国別トップ10には、中南米のブラジル、ペルー、メキシコ、コロンビア、チリの5か国がランクインしています。ロイター通信の報告によると、7月末の世界の感染者の26.83%が中南米に集中しているとのことで、世界でもっとも感染者数の多い地域となってしまいました。

ブラジル:米国に次いで感染者数が2番目に多く、うち回復者数は世界一の300万人強。感染拡大の原因のひとつに、陽性でも間違って陰性と出てしまう不良品のPCR検査キットを、政府が326万ドルで購入していたことが挙げられており、この件では8月25日、キット購入の裏取引をした厚生省の官僚が逮捕されました。

ペルー:8月末現在、首都リマの病院は満員で、多くの患者が車椅子で寝ている状態です。自宅待機の患者たちが酸素を自前で調達しなくてはならないケースもあり、500~1500ドルといった高額で売り付けられる酸素ボンベを購入できずに亡くなる人もいるそうです。そんななか、複数の地域の組長たちがグループを作り、リマのもっとも貧しい地区を周り、彼らが持っているボンベに無料で酸素を入れる活動を広げています。

コロンビア: 感染ピーク時の7月26日には93.2%だった集中治療室の占有率は、8月末現在75%まで減少。感染者のうち、入院患者は全体の3.7%で、集中治療室の利用者は0.34%、それ以外の約95%は自宅で回復を待っている状態です。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

3月半ば以降、中南米のほとんどの国でなんらかの外出規制が敷かれましたが、地域によってその内容はさまざまです。

ペルー:3月に厳しい外出規制が出されたものの、5月からは少しずつ緩和しています。8月12日以降は、日曜日の外出を禁じ、違反者は逮捕されます。そんななか、8月23日の日曜日に、あるクラブが120人を集めてパーティを開催しました。警察が現場に踏み込んだ際、多くの人が将棋倒しになり、それによって13人が窒息などで死亡、6人が怪我をしました。逮捕者のうち15人がコロナに感染していたことが判明しています。

コロンビア:9月以降は少しずつ元の生活に戻していく計画のようですが、8月末までは外出禁止令が敷かれ、違反した者には4年から8年の服役が科せられます。全国の空港はすべて閉鎖され、飛行を許されているのは国際線の数機のみです。大勢が集まるイベントも、バーでの飲酒も禁止されています。

チリ:8月現在は23時から朝5時まで外出禁止令が敷かれ、公共の交通機関ではマスクの着用が義務づけられています。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

公的支援:国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)は、中南米・カリブ諸国に対し、コロナ対策として、ベーシックインカム、食品券配布、零細企業支援の3つを提案しました。各国で国単位や市町村単位のさまざまな支援がされていますが、例えばコロンビアでは、貧困層に対してすでにいくつかの支援が行われてきました。それに加え、支払った消費税が返金されるプログラムや、雇用を守るための企業支援プログラムなどが始まっています。しかし、貧困層に約40ドルを配布するプログラムでは、システム上にある住民の登録データが間違っていたり、不正行為があったりと、数々の困難にぶつかっているようです。

教育:新型コロナウイルスの拡大は社会のさまざまな分野に大きな悪影響を与えていますが、なかでも教育分野への影響は、将来、社会に大きな格差を生み出すと危惧されています。ユネスコによる5月のデータでは、休校になった世界の12億人の生徒のうち、1億6000万人が中南米とカリブ海地域の生徒であるとされています。同地域の33か国のうち、ニカラグア以外の32か国で休校措置が執られ、29か国ではいまだに再開されていません。給食もないため、とくに貧困層の子どもたちの食生活に大きな悪影響を及ぼしています。遠隔授業を実施している国のうち、生徒にPCやタブレットを配布している国は、33か国中8か国。ウルグアイはすでに数年前から、電子媒体を生徒に配布する政策を実施しています。PCやWifiがある世帯に比べ(メキシコでは約半数)、テレビはほぼすべての世帯にあるため(メキシコでは92.5%)、多くの国で補習の教育番組がテレビで放送されています。

④近況について、ご自由にお書きください。

世界銀行は、2020年の中南米のGDP成長率を1.8%増と見込んでいましたが、6月には7.2%減へと大幅に修正しました。中南米社会はインフォーマル経済の比重が大きく、外出できなければ人びとはたちまち生活できなくなってしまいます。経済活動も徐々に再開されていますが、再び感染が拡大するのは避けられません。

中南米のなかでもコロナ感染対策においてもっとも優秀なのは、ウルグアイです。医療機関のコントロールに成功し、国の規模も社会的格差も小さいことも相まって、ロックダウンなしにコロナ禍を乗り切ることができています。しかし他の中南米諸国がウルグアイを手本とするには、環境が異なりすぎるので難しいでしょう。

米国の企業「ジョンソン・エンド・ジョンソン」は、近日中に中南米の合計6万人の希望者を対象に、新しいワクチンの臨床試験を行う予定です。一日も早いワクチンの開発に希望が託されています。


ゴンサロ・ロブレド:コロンビア出身のジャーナリスト。スペイン語翻訳者。1981年より日本在住。スペインのエル・パイス紙に寄稿した記事:
https://elpais.com/autor/gonzalo-robledo/

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(18)スロヴェニア

slovenia

スロヴェニア(人口約206万人)

木村高子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

スロヴェニアでは5月中旬に流行終息宣言が出され、さまざまな制限も解除されましたが、6月下旬から感染者数が再び増えはじめ、現在は1日あたりの感染者数が二桁台になっています(総人口200万人の国では、これは決して少ない数ではありません)。第一波では、高齢者施設での感染拡大が大問題になりましたが、対策を講じたおかげで今回はそんなことはなく、むしろ若者の比率が高いことが特徴とされます(そのため、少なくとも第二波の死亡率は下がっています)。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

6月に入ってから、すべての海外渡航の中止勧告が引き下げられ、中旬には、国際線を含む旅客交通が再開されました。国内の移動制限もまったくありません。スロヴェニア政府は諸外国を、往来自由国(緑)、2週間の自主隔離が必要な往来制限国(赤)、そのどちらでもない国(黄:スロヴェニア国民及び永住権を持つ外国人がこれらの国からスロヴェニアに入国した場合は、自主隔離義務が免除される)に色分けしています。最近では、南の隣国クロアチアをはじめとするバルカン諸国で感染者が急増しており、8月20日からクロアチアも「赤」に指定されました(他に、ボスニア、マケドニアが「赤」に指定されています。30日には、セルビアが「赤」から「黄」に変更されました。同じく国境を接するイタリア、オーストリア、ハンガリーは「緑」)。クロアチアの海岸でバカンスを過ごすスロヴェニア人は非常に多いので、これは大問題です。

国内でも、特にクロアチアからの帰国者の間で感染が増大しています。国内のほとんどの店が営業再開し、第一波のときに禁止されていた大型店舗の日曜営業も解禁になりました。医療機関も、急ぎでない検査などはずっと延期になっていましたが、いまでは再開しています。500人までの集会も解禁されましたが、その後に感染者数が再び増加したため、許可人数が引き下げられました。一方、室内でのマスクの着用義務については、第一波以来、ずっと続いています。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

すべての大学生に対して一時金の給付がありました。また自営業者は、収入が大幅に減少した場合、給付金を受け取ることができます。観光業支援のため、全国民、及び永住権を持つ外国人には、一人当たり200ユーロのクーポンが支給され、年末までなら国内のホテルやキャンプ場で使用できます。我が家もこれを利用して、海岸地方で数日過ごしてきました。なお、その間に日帰りでイタリアに行きました(7月下旬)が、国境検査などはまったくありませんでした。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

町の様子はほとんどコロナ以前に戻りました。少なくとも屋外のカフェやレストランはどこも満員です。アジア系の団体観光客は完全に姿を消しましたが、フランス語やドイツ語を話す観光客はたくさん見かけます。店に入る時のマスク着用と消毒液使用を除けば、コロナのことを忘れてしまいそうなくらいです。ロックダウン中は、町はまるでゴーストタウンのように閑散とし、店に入る時も店員がマスク着用と消毒液の使用を見張るなどピリピリした雰囲気を感じましたが、現在はそんなことはまったくありません。ただし、寒さが厳しい季節になったら、屋外で過ごすのは難しくなるでしょう(知人を自宅に招いたり招かれたり、というのは、今のところ控える人が多いようです)。

小中学校と高校は9月から通学が再開されましたが、大学だけは、現時点で授業再開の見通しは立っていません。

バカンスシーズンの7~8月は、③で述べたクーポンを利用して、多くの人が国内旅行をしていました。今年の特徴としては、可能な限り飛行機の使用を控える人が多いようです。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

前回のレポートに書きましたが、スロヴェニアでは5月から、毎週金曜日に反政府デモが行われてきました。当初は三密を避けるために自転車に乗ってぐるぐる回るだけでしたが、それも6月以降は政府機関の前に(自転車なしで)集まる形で、現在も続いています。政府に対する不満はさまざまですが、最近では、②で述べたクロアチアの「赤」指定が遅すぎたと考える人も多いようです。

8月いっぱいでバカンスシーズンが終わり、クロアチアの海岸で休暇を過ごしてきた人たちが戻りつつあります。スロヴェニアはクロアチア、セルビア、ボスニアなどのバルカン諸国と歴史的に深い繋がりがあり、いまでも多くの往来があるので、国境を閉鎖するわけにはいきませんが、今後、それが原因で感染者数がさらに増えないか気がかりではあります。


木村高子(きむら・たかこ):英語・フランス語・スロヴェニア語翻訳者。スロヴェニア・リュブリャナ在住。