コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(26)オーストラリア

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オーストラリア(人口約2,499万人)

徐廷美

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

前回、5月20日時点での感染者は7,079名と報告したが、ビクトリア州メルボルンでの第二波により、9月2日時点での総感染者数は25,923人、死亡者数は100名から663名へと増加している。現在一日の新規感染者はニューサウスウェールズ州で50名前後、ビクトリア州ではようやく100名を切ってきたところだ。死亡者もビクトリア州での死者が総死亡者数のほとんどを占める(576名)。ビクトリア州の第二波は6月下中から始まり8月上旬にピークを迎え、最も多い新規感染者は一日で700名以上にもなった。メルボルンではこれを受けて、厳しいロックダウンが導入され、学校の閉鎖、夜間外出禁止、日中の外出制限が行われた。感染者の多くが海外からの帰国者で、空港での検査をすり抜けてしまう例や、帰国者のホテル隔離の不徹底などが問題視されている。

各州はメルボルンでの感染拡大を持ち込まないよう、州境を封鎖するなどの手段を講じたため、ビクトリア州以外での第二波は起こっていない。シドニーは現在、一日に数十名の新規感染者がいるものの、ほぼ以前の生活に戻っていると言ってもよい。ただ、大学はほぼオンライン授業を続けており、リモートワークは推奨されたままである。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

オーストラリア永住者の再入国は認められているものの、一部のビジネス、留学、旅行等の外国人の入国は未だに認められていない。そのため、例えば留学ビザで居住している者が日本に一時的に戻った場合、オーストラリアに再び入国することはできない状況である。メルボルンは現在もロックダウン中のため、バーやクラブ、映画、コンサート、カジノ等は閉鎖されている。すべての学校もオンライン授業である。また、マスク着用も義務付けられ、行動制限などの規則を破った場合の罰金もある。シドニーを含めた各都市では、行動制限、休業要請はなくなっており、マスクはスーパーなどで推奨するにとどまっている。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

休業補償や生活支援は、永住者、国籍保持者に限られている。留学生への授業料減額などは各州によって異なるが、授業料の10%を減額するなどの支援や、大学独自の留学生への支援を行っているところもある。PCは中学生以上のほぼ100%の学生がもともと保有しているため、オンライン授業の導入はスムーズに行われてきた印象がある。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

ロックダウン中のメルボルンは先にも述べたように、依然として行動が制限され、日常とはかけ離れた生活であるが、それ以外の地域ではほぼ日常生活を取り戻している。ただ、感染者が全くいないわけではないので、やはりレジャーや外出を控えたり、宅配を利用したりするなどの傾向は変わっていない。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

前述したとおり、日本との行き来ができないことが、ややストレスである。基本、国際郵便も受け付けていないので、日本の食品などが手に入りにくい。気兼ねなく外出できるわけではないので、やはりまだ窮屈な印象がある。観光国のオーストラリアが観光客なしで、しかも留学生も受け付けていない状況で、政府としてはかなり財政的に痛手ではないかと思われる。

コロナ感染症については、シドニーでは感染する機会は低い印象があり、少しでも体調が悪い場合は、近隣ですぐに無料で検査を受けられるため、そういう点は安心できる。


徐廷美(そ・じょんみ):オーストラリア・シドニー生活6年目。日豪両国の看護師資格をもち、現在は大学院で看護学を専攻している。


コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(25)イタリア

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イタリア(人口約6,046万人)

飯田亮介

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

夏のバカンスシーズンでひとの移動が増加して以来、3カ月ほど前から第二波と思われる増加が始まりました。海外旅行から帰ってきた人々が原因と思われる感染者増加もあります。

全国の新規感染者数は9月18日現在で1,907人/日。最悪だった3月21日(6,557人/日)に比べればまだ少ないですが、6月末にいったん1日あたり120人台まで落ちたことを考えれば、やはり増えてきています。ただし、第一波にくらべるとまだ重症患者数と死者数は少なく済んでいるようです。同じ欧州のフランスやドイツやスペインなどに比べても(各国データリンク)、イタリアの第二波の感染者数増加スピードは非常にゆっくりです。疑わしきはすぐに検査という体制が定着したこと、重症化リスクが高い老人たちが今も警戒していること、そのあたりに理由がありそうですが、それだけでは近隣諸国との明白の差は説明できません。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

EU諸国ならば基本的にどこでも自由に行けるようになりましたが、マルタ、スペイン、ギリシア、クロアチアへの渡航者は帰国前72時間以内または帰国後48時間以内のPCR検査が義務づけられています(少なくとも10月7日まで)。同じ欧州でもアルバニアなど感染爆発の起きている一部バルカン諸国やベラルーシ等への渡航は規制されています。ちなみに日本への渡航者は、イタリア帰国時に14日間の自宅待機が義務づけられています(こちらも10月7日以降に規定が変化する可能性があります)。

屋内公共スペースでは今もマスクの着用が義務づけられていますが、飲食店や学校などでは席と席のあいだの法定ソーシャルディスタンスの確保義務があるため、着席時はマスクを取ることができます。

最近、第二波の影響で、午後6時以降は路上でもマスクの着用が義務づけられるようになりました。これは主に都市部の盛り場で夕方以降、若者を中心に多くの人が集まり、密集状態が生まれやすいことをにらんだ対策です。ただしジョギングなどの運動時は免除されていますので、マスクによる直接の感染予防が目的というよりは、ソーシャルディスタンスを維持させるための心理的効果を狙った着用義務ではないかと思われます。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

9月14日より全国で学校が始まりました。僕の住むマルケ州では実に7カ月ぶりです(ただし内3カ月は例年どおり夏休み)。学童の感染予防を目的とした指針はもちろん多々ありますが、どれだけ効果があるのかは怪しいところで、第二波の始まった今、学校再開により感染者数増加スピードに拍車がかからないか不安はあります。

しかし学校に子どもを送れないと、共働きの多いイタリアでは親たちの仕事に対する影響が相当に大きく、ひいては国の経済に対する影響も馬鹿になりません。ロックダウン中に行われたリモート授業を継続するという手もあるでしょうが、児童の使うデバイス、家族によるサポートの有無等、家庭ごとに環境の差も大きく、義務教育としては不公平過ぎるという意見も出ています。

ネオワイズ彗星とモントットーネ村

ネオワイズ彗星とモントットーネ村

⑤近況について、ご自由にお書きください。

僕のいる人口1,000人弱のモントットーネ村ではこれまでに感染者が4人しか出ておらず(それでも人口比では決して少なくないのですが)、重篤者もいないために、海外で報道されるイタリアよりもずっと雰囲気がのんびりしており、店内のマスク着用もけっして徹底されていませんし、握手やハグをかわす姿も珍しくありません。子どもたちが外で遊んでいる時に、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの維持をうるさく言う親もほとんどいません。先日、午後6時以降にマスクも着けずに村の若者数名が路上で集まっていたため、警察が罰金を科したところ、大げさだとして不評を呼んだほどです。

第一波でCOVID−19が猛威を振るい、世界的に大きな話題となったイタリアですが、全国まんべんなく被害があったわけではなく、大きな被害は主に北部、それも一部の地域に斑点状に集中しています。そのため実際には、同じ「あのイタリア」でも、土地によっては警戒レベルにこうした温度差があります。そこが危ないと言えば、危ないかもしれません。

第二波がこのまま緩く過ぎ去り、ワクチンが完成するというシナリオに期待したいところですが、これから秋冬にかけて例年のウイルス流行シーズンになるので、けっして楽観はできないと思っています。

ヴェットーレ山と天の川。大好きな山にもまた行けるようになりました

ヴェットーレ山と天の川。大好きな山にもまた行けるようになりました


飯田亮介(いいだ・りょうすけ):イタリア語翻訳者。イタリア中部・モントットーネ村在住。https://note.com/giapponjin