コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(19)コロンビア

colombia

コロンビア(人口約4,965万人)

ゴンサロ・ロブレド

 ①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

8月末現在、新型コロナウイルス感染者数の国別トップ10には、中南米のブラジル、ペルー、メキシコ、コロンビア、チリの5か国がランクインしています。ロイター通信の報告によると、7月末の世界の感染者の26.83%が中南米に集中しているとのことで、世界でもっとも感染者数の多い地域となってしまいました。

ブラジル:米国に次いで感染者数が2番目に多く、うち回復者数は世界一の300万人強。感染拡大の原因のひとつに、陽性でも間違って陰性と出てしまう不良品のPCR検査キットを、政府が326万ドルで購入していたことが挙げられており、この件では8月25日、キット購入の裏取引をした厚生省の官僚が逮捕されました。

ペルー:8月末現在、首都リマの病院は満員で、多くの患者が車椅子で寝ている状態です。自宅待機の患者たちが酸素を自前で調達しなくてはならないケースもあり、500~1500ドルといった高額で売り付けられる酸素ボンベを購入できずに亡くなる人もいるそうです。そんななか、複数の地域の組長たちがグループを作り、リマのもっとも貧しい地区を周り、彼らが持っているボンベに無料で酸素を入れる活動を広げています。

コロンビア: 感染ピーク時の7月26日には93.2%だった集中治療室の占有率は、8月末現在75%まで減少。感染者のうち、入院患者は全体の3.7%で、集中治療室の利用者は0.34%、それ以外の約95%は自宅で回復を待っている状態です。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

3月半ば以降、中南米のほとんどの国でなんらかの外出規制が敷かれましたが、地域によってその内容はさまざまです。

ペルー:3月に厳しい外出規制が出されたものの、5月からは少しずつ緩和しています。8月12日以降は、日曜日の外出を禁じ、違反者は逮捕されます。そんななか、8月23日の日曜日に、あるクラブが120人を集めてパーティを開催しました。警察が現場に踏み込んだ際、多くの人が将棋倒しになり、それによって13人が窒息などで死亡、6人が怪我をしました。逮捕者のうち15人がコロナに感染していたことが判明しています。

コロンビア:9月以降は少しずつ元の生活に戻していく計画のようですが、8月末までは外出禁止令が敷かれ、違反した者には4年から8年の服役が科せられます。全国の空港はすべて閉鎖され、飛行を許されているのは国際線の数機のみです。大勢が集まるイベントも、バーでの飲酒も禁止されています。

チリ:8月現在は23時から朝5時まで外出禁止令が敷かれ、公共の交通機関ではマスクの着用が義務づけられています。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

公的支援:国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)は、中南米・カリブ諸国に対し、コロナ対策として、ベーシックインカム、食品券配布、零細企業支援の3つを提案しました。各国で国単位や市町村単位のさまざまな支援がされていますが、例えばコロンビアでは、貧困層に対してすでにいくつかの支援が行われてきました。それに加え、支払った消費税が返金されるプログラムや、雇用を守るための企業支援プログラムなどが始まっています。しかし、貧困層に約40ドルを配布するプログラムでは、システム上にある住民の登録データが間違っていたり、不正行為があったりと、数々の困難にぶつかっているようです。

教育:新型コロナウイルスの拡大は社会のさまざまな分野に大きな悪影響を与えていますが、なかでも教育分野への影響は、将来、社会に大きな格差を生み出すと危惧されています。ユネスコによる5月のデータでは、休校になった世界の12億人の生徒のうち、1億6000万人が中南米とカリブ海地域の生徒であるとされています。同地域の33か国のうち、ニカラグア以外の32か国で休校措置が執られ、29か国ではいまだに再開されていません。給食もないため、とくに貧困層の子どもたちの食生活に大きな悪影響を及ぼしています。遠隔授業を実施している国のうち、生徒にPCやタブレットを配布している国は、33か国中8か国。ウルグアイはすでに数年前から、電子媒体を生徒に配布する政策を実施しています。PCやWifiがある世帯に比べ(メキシコでは約半数)、テレビはほぼすべての世帯にあるため(メキシコでは92.5%)、多くの国で補習の教育番組がテレビで放送されています。

④近況について、ご自由にお書きください。

世界銀行は、2020年の中南米のGDP成長率を1.8%増と見込んでいましたが、6月には7.2%減へと大幅に修正しました。中南米社会はインフォーマル経済の比重が大きく、外出できなければ人びとはたちまち生活できなくなってしまいます。経済活動も徐々に再開されていますが、再び感染が拡大するのは避けられません。

中南米のなかでもコロナ感染対策においてもっとも優秀なのは、ウルグアイです。医療機関のコントロールに成功し、国の規模も社会的格差も小さいことも相まって、ロックダウンなしにコロナ禍を乗り切ることができています。しかし他の中南米諸国がウルグアイを手本とするには、環境が異なりすぎるので難しいでしょう。

米国の企業「ジョンソン・エンド・ジョンソン」は、近日中に中南米の合計6万人の希望者を対象に、新しいワクチンの臨床試験を行う予定です。一日も早いワクチンの開発に希望が託されています。


ゴンサロ・ロブレド:コロンビア出身のジャーナリスト。スペイン語翻訳者。1981年より日本在住。スペインのエル・パイス紙に寄稿した記事:
https://elpais.com/autor/gonzalo-robledo/