コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(10)オランダ

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オランダ(人口約1738万人)

國森由美子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

7月初旬より、オランダ国立公衆衛生研究所(RIVM)のウェブサイトでは、詳細なレポートをPDFファイルにまとめて公開し、一週間ごとに更新しています。検査数に関しては、4月に入ってから徐々に拡大しており、現在は、疑わしい症状のある人はその時点から自宅待機すると同時に、居住地域の最寄りの保健所(GGD)に連絡・予約して検査を受けられる態勢になっています。

また、オランダ政府のウェブサイトでは別途、「(新型)コロナウィルスダッシュボード」というページを開設しており、国全体、そして地域ごとの感染状況を一目で把握できるようになっています。(不謹慎ながら)おもしろいのは、ここでは各地域の下水中のウィルス含有量の測定結果やその推移も見られることで、思えば、これも重要なデータであることに違いありません。

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上記PDFファイルの2020年9月1日付の統計によれば、オランダの2月からの感染者は累計71,129名、そのうち入院者は1万2182名、死者は6,230名となっています。これまでの検査数は123万6830件、うち感染陽性は2万3441例、その割合は全体の1.9%です。先週の統計結果を見ると、15歳以上64歳以下の感染者が多く、入院者は全体で23名、死者は12名でした。医療現場の逼迫は、現時点では起きていません。また、今年3月から4月にかけての第一波のピーク時には、再生産数の値が2を超えていましたが、9月初旬の時点ではその値は0.99となっています。

6月に緩和策が徐々に拡大するなか、7月上旬から夏の休暇が始まり、国内外の移動が増えると、それに比例して感染者も増加しました。このままでは大きな第二波が到来するおそれがあるということで、政府は8月6日と18日に記者会見を開き、現状を説明、国内での追加的な措置を指示しました(②に後述)。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

5月中旬から緩和策へ移行した後も、オランダでは引き続きテレワークが推奨されています。公共交通機関の利用者には、6月1日からマスクの着用が義務化されました。その後、マスクについては、政府が記者会見を開いた8月6日以降、国ではなく、各自治体に権限が委ねられる形になっており、アムステルダムやロッテルダムの人の密集しやすい繁華街、ショッピングセンターなどで市の要請による義務化が行われていました。違反者への罰金もありましたが、これは8月末で一旦中止となりました(8月28日付の発表)。したがって、9月1日以降のマスクの義務は、6月1日以降実施されている公共交通機関利用時のみとなります。

基本的な感染予防(手洗い、1.5mの距離を維持して行動、風邪症状があれば自宅自粛して検査を受ける)を続けながらも、社会的・経済的な活動が行えるのが理想であるとはいえ、行政もなにかと苦慮しています。最近は、プライベートな集まりや家庭内での感染が増えています。8月18日の政府の会見で、家庭内での集まりの来客は(基本的な予防策を講じつつ)最大6名までという措置が発表されました。もしも感染者が出た場合の追跡可能な許容人数が6名であるという、感染症専門家のアドバイスによるものです。夏の休暇中、海辺や遊園地など、あまりに人が密集した場合には強制的に閉鎖された例もありました。

オランダ国外への渡航情報は、政府のサイトで日々更新されています。そこには黄・オレンジ・赤に色分けされた世界地図も掲載されています。黄色は要安全確認地域(ただし、同地域内にオレンジで示された都市がある場合もあります)、オレンジは必要な場合のみ渡航可能な地域で、この地域から帰国する国民には10日間の自粛義務があります。赤は渡航を勧めない地域です。本来ならば、ここに緑の安全地域があってもいいようなものですが、残念ながら、今は世界中のどこにも安心して行き来できる地域はないということですね。

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6月中旬の時点でオランダ外務省のページに掲載された地図

9月1日の政府の記者会見によると、オランダでは現在、カフェやレストランなど飲食店は政府の規制に従いながら営業を再開していますが、9月から緩和が予定されていたナイトクラブやディスコは、引き続き、当面は再開しないことになりました。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

第一波の際には、国からの休業補償は、各自治体に申請する形で行われました。オランダでは、毎年9月第三火曜日に国会開会式が行われ、その際に一年間の予算が発表されます。それに先立ち、今後の支援策(10月1日施行)については、基本的に来年7月1日まで続けられるという方針が政府より発表されたばかりです。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

他国でも見られるように、オランダでも政府の施策に反対するデモが発生しています。それが以前とは大きく異なることではないかと思います。また、新学期が始まるに当たり、これまでオンライン授業だった中・高等学校(オランダは中・高一貫教育)の通学が再開されたところです。6月に再開した小学校までの教育機関では、幸いにも大きな問題は起こりませんでしたが、15歳以上の生徒たちの集まる環境は未知の世界なので、関係者の緊張が感じられます。大学については、これまでどおり、少なくとも12月まではオンライン講義が続く見込みです。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

わたし自身の日常生活はこれまでと変わりなく、文芸翻訳、家事などをしながら過ごしています。もろもろ〆切もあり、それなりに忙しい日々です。7月からは、小学生の子どもたちのピアノのレッスンを以前のように対面の出張レッスンに切り換えました。今のところ、何事もなく続けられています。

先週、ワクチンのニュースが報道されました。オランダでは、9月末よりcovid-19のワクチンの試験接種がボランティアを対象に始まるそうです。ボランティアはこれから募集し、三段階にわたり試験接種を行った後、結果が判明するとのことです。

終息まではまだしばらくかかりそうですが、とにかく、石鹸での手洗い、ウィルスの性質を理解した上での行動を心がけて、気長につきあっていくしか術はなさそうです。

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いつもの散歩コースの川沿いの景色。ベンチの横に設置されているのは「本のおうち」、誰もが利用できるミニ図書館です。古本が主体ですが、時々、オランダ文学基金より新しい児童書が届いたりもします。


國森由美子(くにもり・ゆみこ):オランダ語文芸翻訳者、音楽家。オランダ・ライデン在住。