十年一剣を磨く

書籍翻訳者として仕事をするにあたって、
手元に置いておきたい書籍の紹介、第2弾です。
今日ご紹介するのは、

講談社校閲局編
日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版』(講談社)

日本語の正しい表記と用語の辞典

 

です。

マスコミ各社から、いわゆる用字用語集と呼ばれるものが刊行されています。
たとえば、
『記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集』(共同通信社)
『NHK漢字表記辞典』(NHK出版)
『朝日新聞の用語の手引き』(朝日新聞出版)
『毎日新聞用語集』(毎日新聞社)
『読売新聞用字用語の手引き』(中央公論新社)
など。

なかでも、講談社の社内用資料集を一般に公開するかたちで刊行された
『日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版』
は、新聞社や通信社から刊行されている用字用語集とは違って、書籍用の表記基準が示されているので、書籍の翻訳に携わるのであれば、まず備えておきたい一冊です。

この本はとくに、「数字の書き方」(113~186ページ)が充実しています。
数字の表記に迷ったら、『日本語の正しい表記と用語の辞典』を参考にすれば、
たいていのことは解決するはずです。

ところで、数字といえば、

十年一剣を磨く

という言葉をご存じでしょうか。
中国唐代の詩人、賈島(かとう)の詩の一節に出てくる言葉です。
書籍翻訳者デビューをめざして、日々、剣を磨きつづけている方も多いと思います。
これからも、その剣を磨くために役立つ情報を、折に触れてこのブログでお届けしたいと思います。

ちなみに賈島は、「推敲」の故事でも知られています。
次回は、推敲や校正にまつわる話題を取り上げようと思います。

(S)

校正畏るべし

久しぶりに「翻訳者の仕事道具」シリーズです。

書籍翻訳セミナー「フィクション編」でも紹介しましたが、書籍翻訳者として仕事をするにあたって手元に置いておきたい書籍を、これから何回かにわたって紹介していきたいと思います。

まずは、校正紙(ゲラ)の校正作業に欠かせない一冊から。

『校正記号の使い方 第2版――タテ組・ヨコ組・欧文組』
(日本エディタースクール出版部、2007年)

校正記号の使い方

 

版元の説明文には次のように書かれています。
「校正作業に必要な校正記号について、縦組・横組・欧文組のそれぞれに分けて、具体的な例示を出しながら解説した、校正者必携のテキスト。」

「校正者必携」とありますが、書籍翻訳者にも欠かせない一冊です。
弊社のデスクにも常備してあります。

ゲラの赤字入れは、ついつい自己流になってしまいがちなもの。
赤字を確実に反映してもらえるよう、校正の指示は基本から離れないように気をつけたいものです。

論語の「後生畏(おそ)るべし」をもじった有名な警句があります。

校正畏るべし。

思いがけないミスによって重大な問題が生じないよう、ていねいな校正指示を心がけたいと、自戒を込めて思うこのごろです。

(S)

–追記–
校正に関して興味深い読み物が一冊あるのを思い出しました。
高橋輝次  『増補版 誤植読本』(ちくま文庫)
校正をめぐるアンソロジーです。本好きにはたまりません。

 

翻訳者の仕事道具(2) 椅子

翻訳者の大事な仕事道具のひとつである椅子
みなさんはどんな椅子をお使いでしょうか。

弊社オフィスでは、これ ↓ を使っています。

Ayurchairアーユル・チェアーといいます。
腰が痛くならずに何時間でも座っていられます。

お尻を後ろに突き出す感じで、座面の深いところにお尻をおき、
脚を60~90度開いて座ると、この椅子のよさが引き出されるそうです。

長時間座っていても苦にならないということは、
すなわち、お尻や腰の痛さを言い訳に席を立てない、
ということでもあります。
功罪相半ばする椅子だと、一部のスタッフは思っています(笑

ちなみに、椅子を選ぶときはショールームに行き、
お目当ての椅子に最低でも1時間は座ってみると、
その椅子が自分に合っているかどうかわかるそうです。

逆にいうと、それぐらい座ってみないと
椅子との相性はわからないと、
ショールームの紹介記事で読んだことがあります。

寒さも厳しくなってきました。
みなさま、体調にお気をつけください。

(S)

 

 

翻訳者の仕事道具(1)

苦労して翻訳原稿を仕上げると、
ほどなくして編集者さんから「初稿ゲラ(校正紙)をお送りします」と連絡があります。

皆さんはゲラに赤入れするとき、どんな赤ペンを使っているでしょうか?

人によって、ペン先の太さや軸の太さなど、好みがあると思います。
「できるだけ細かい字を書きたいので、なるべくペン先の細い赤ペンを使うようにしている……」
「はっきりとした読みやすい字を書きたいので、ふつうより少し太めの赤ペンを使っている……」

でも、少しでも読みやすい原稿に仕上げようと試行錯誤しているうちに、気がついたら修正液を使いすぎて読みにくい原稿になってしまい、どうしよう……と思ったことはありませんか?

frixion ball_light

弊社ではゲラに赤を入れるとき、パイロットの「フリクションボール」という「消えるボールペン」を使っています。
フリクションボール・シリーズにもいくつかのラインナップがありますが、ゲラの赤入れにちょうどいいと思うのは「フリクションボールノック 0.5mm」という製品です。

ペン先と反対側のラバーでこすると、摩擦熱でインクの色が無色透明になり、何度でも書いたり消したりできます。つまり、気がすむまで原稿の修正ができるのです。

ただし、いくつか注意点があります。

・編集者さんによっては、ごくまれに、消えるボールペンを使った赤入れを好まない人がいるようです(でも、年間60冊以上の書籍翻訳を手がけている弊社では、編集者さんから「消えるボールペンは使わないでください」と言われたことは、まだありません)

・フリクションボールのインクは、摂氏60度以上になると透明になってしまいます。つまり、せっかく赤入れした文字が消えてしまいます!
(赤入れしたゲラを、真夏に車の中など高温になる場所に放置しないよう、ご用心)

でも、せっかく書き込んだ赤字が消えてしまっても心配ありません。

原稿をビニール袋に入れて一晩、冷蔵庫の冷凍室入れておくと、文字が復活するそうです。その後、室温に2~3時間置き、インクを自然解凍します。
(フリクション・ボールのインクは、マイナス10度でインクの色の復元が始まり、マイナス20度で完全に色が戻ります)

さいわいなことに、弊社のキッチンではまだ、冷蔵庫で冷凍されている原稿を見かけたことはありません。

[※弊社では「消えるボールペン」を使っていて不都合が生じたことはありませんが、ご使用にあたっては製造元のウェブサイトなどに書かれている注意事項をご確認ください]

(S)