2014年もあと1日。
書籍の翻訳、書籍以外の翻訳、通訳、リーディング、
いろいろなお仕事で、さまざまなかたちでお世話になりました。
1年間、本当にありがとうございました!
2015年もどうぞよろしくお願いいたします。
みなさま、よいお年をお迎えくださいませ。
(弊社が翻訳を担当した2014年刊行の書籍を並べてみました)
(N)
先ほどチェックしていた訳文にこんな表現がありました。
会ったのはほんの数回だけだった。(A)
ん? この文章に何か問題が?
ええ、ないとはいえません。できればこう直したいところです。
会ったのはほんの数回だった。(B)
会ったのは数回だけだった。(C)
会ったのは数回だった。(D)
どうですか?
(B)または(C)で十分、というより、(A)よりすっきりして意味もまったく同じですよね。
「ほんの」と「だけ」を重ねる必要はありません。
むしろ、どちらかのほうが「それしか会っていない」という意図がすっと伝わりまませんか?
あるいは、文脈によっては(D)でもいいぐらいです。
訳文をチェックしていると、こうした「くどい表現」が非常に頻繁に目につきます。
そうです! この「非常に」も不要である場合が多いです。
訳文をチェックしていると、こうした「くどい表現」が頻繁に目につきます。
このほうがいいと思いませんか?
「非常に」や「とても」に当たる語(=英語のvery、仏語ではtrès など)は、西洋言語の原文ではたくさん出てきます。
ですが、それをいちいち「非常に」と訳していると「いかにもこなれてないなあ」という感じがすると、編集者さんたちもよくおっしゃいます。
実際、先ほどの例文と同じで「非常に」を入れないほうがその形容詞や副詞が際立つことが多いのです。
これまで形容詞や副詞を強調する言葉を原文に忠実に「とても」と訳していたとしたら、一度、思い切ってとってみてください!
(Y)
毎月弊社には、5〜6冊の完本が届きます。
伝票に「完本」と書いてある小包が届くたび、どんな本に仕上がったのかとワクワクします。
この1年のあいだに、弊社には64箱の完本が届きました。
翻訳者さん、編集者さんをはじめ、たくさんの方の思いのたっぷり詰まった本。
わたしたちにとっても、愛しい本ばかりです。
12月の新刊5冊を紹介します。
*上段左:『ラウンドタワー』
〈アルケミスト双書〉より。11〜12世紀に建てられ、アイルランドに100基ほど現存する円形石塔の謎を追う。
*下段左:『特捜部Q カルテ番号64』(上・下)
人気警察小説シリーズ「特捜部Q」の第4弾が文庫に。
おかげさまで、来年1月からの書籍翻訳セミナーには東京近辺だけでなく、遠くにお住いの方からもお申し込みをいただいています。
「聴きにいっていいですか?」と言ってくださる編集者さんも何人もいらっしゃり、みなさまのご期待に応えるものにしなくては・・・と気が引き締まる思いです。
詳しい内容が知りたいという声も多いので、ブログを通じて少しずつプログラムをご紹介していきます。
第1回目は、以下を中心に「書籍翻訳の現状」です。
1)翻訳本の流れ-著者・海外出版社・版権エージェント・日本の出版社と翻訳者の関係
2)訳者になるには?-出版社はどうやって訳者を決めているか?
3)翻訳形態-共訳になるのはどんなとき? 下訳や翻訳協力は実績になる?
4)訳者の仕事はどこまでか?-翻訳、ゲラ校正、あとがきなど
5)出版社との契約-契約書は必ず必要か?
6)書籍翻訳料はどれぐらい-買取? 印税か?
7)電子書籍の現状
8)実務翻訳と書籍翻訳の違い
たとえば、
・海外で面白い本を見つけて、ぜひ自分で訳したいと思ったら、どうすれば訳者になれる近道か?
・原書の中にわからないことがあった場合、訳者は著者に質問することができる?
・書籍翻訳では訳文をだしただけでは終わらない、では、訳者の仕事はいったいどこまで?
・あとがきが必要なのはどんなとき?
・翻訳料が買取りか印税かはどうやって決まる?
などなど……さまざまな疑問にお答えします。
ただし、こうした疑問に対する答えは一つではありません。
出版社によって作品によって、ケースバイケースです。
実際、翻訳者さんのなかには、1、2社の出版社と仕事をした条件がスタンダードだと思っていたら、別の出版社ではまったく違っていて驚いた、という経験をされた方も多いのではないでしょうか。
弊社リベルは、これまでたくさんの出版社・編集者さんと仕事をしてきました。
その経験を踏まえ、さまざまな具体例を挙げて日本における出版翻訳の現状を俯瞰的にお伝えしたいと思っています。
(Y)
いやあ、それにしても忙しい。
御用納めまであと一週間。いつもは無駄口と笑い満載の我らがオフィスも、今日ばかりは、人数はいつもより多いのに、しーんとしています。というか、殺気立っている……
それにしても12月はなんでこんなに時間がないのでしょう。
前半は忘年会やイベントつづき。後半ともなると、印刷所が年内早く閉まる関係で初校・再校ラッシュ。そして編集者さんが年末年始の休みに原稿やレジュメを読むためか、訳稿の締切も多いのです。
そういえば、昨年末はどうにかその山を越えたと思ったら、1月2日にゲラを戻すとか、1月3日だしのリーディングとか、なぜか三が日締切がいくつかあり……かくして、一部の翻訳者さんにはお休みを返上させてしまい……
そのうえ! 緊急事態が発生し(泣)、その処理で大晦日までオフィスにおりました。
1月2日にはまた仕事の続きのためにスタッフが集合していましたっけ。
ああ、今年こそ年末年始は人並みにお休みしたい!
スタッフもお休みさせてあげたい!
翻訳者さんたちにも無理を言いたくない!
だから今夜もみんなで、夜更けまで頑張るのです(汗)
(Y)
Artという言葉には「芸術」という意味と「(特殊な)技能」という意味があります。
書籍翻訳は、まさしくArtではないでしょうか。言いかえれば、翻訳家はArtist(芸術家)であると同時に、Artisan(職人)でなければなりません。
翻訳本は著者の「作品」であるだけでなく、訳者にとっても「作品」です。その証拠に原書が同じでも翻訳者が違えば、表現も文体も異なります。作品が醸す雰囲気まで変わることもあります。
でも、訳稿はまた「商品」でなければなりません。使う人=読者の立場にたった売れるものをつくらなければならないのです。
訳者のセンスやこだわりが表れる「作品性」と、客観性や読みやすさが問われる「商品性」。そのバランスが書籍翻訳のだいご味です。
翻訳家をめざす人のほとんどは本好きです。大好きな作家もいれば、お気に入りの小説もあるでしょう。「この言葉カッコいい!」とか「こういう表現があったか」と念願の書籍を翻訳できたときには、使いたい言い回しがたくさん。きっとArtistとしての感性は全開になります。
ですが、それがひとりよがりな文章につながり、「商品」としては今ひとつとなることも多いのです。
これまで、たくさんの翻訳者さんの訳文をみてきました。
どんな翻訳者の訳文にも必ず「うまいなあ」とか「ステキだなあ」と感心する表現があります。どれもArtistとしての翻訳者の個性がどこかに現れた「作品」です。
でも、まったくストレスなく読めて「商品」としても完成している訳稿をポンとだしてきてくれる翻訳者はなかなかいない……。
そして、いろいろな人の訳文をリライトしてきて、わかったことがあります。
実は書籍翻訳初心者の多くが陥る共通のNG表現や言い回しがたくさんあるということです。そこにさえ気づけばクオリティが飛躍的にアップする――そういった訳文に出会うことはしばしばです。
書籍翻訳会社としての日々の重要な仕事のひとつは、そういった訳文を合格ラインの「商品」にすることかもしれません。
うちのスタッフは全員翻訳者です。もちろん私たちより優秀な翻訳家さんはたくさんいます。
ですが、他人のあらは目につくもの。いろいろな訳文をみればみるほど、意地悪な読者の目になって、欠点を見つけるのが得意になります。
そんな私たちが気づいた「翻訳者が陥りやすいNG表現」を、翻訳セミナーとこのブログで具体的にお伝えしたいと思っています。
でも、ホント、他の翻訳者のリライトをしているからといって、いざ自分で翻訳をすると、客観的にはなかなかなれず、完璧からはほど遠い……(泣)。
それがまた、翻訳の難しいところですね!
(Y)
みなさま、こんにちは。
この年末で、多言語翻訳会社リベルを立ち上げて丸12年経ちます。
最初のメンバーは、英語、仏語、伊語、西語、韓国語、中国語の翻訳者8人。
仲間が集まることで、書籍翻訳という、本来孤独な仕事をよりダイナミックで面白いものにしたい。それが始まりでした。
とはいえ、みんな、貧乏な翻訳者。資金などほとんどなく、最初の数年は事務所も代表の自宅の仕事部屋でした。
そのうち、多言語の強みでしょうか、「ニッチなものはリベルに……」と思ってくださる出版社も増え、気がつけば、これまで70社以上の出版社さんからお仕事をいただき、翻訳した言語は15言語、作品数は400点にのぼります。
翻訳やリーディングをお願いした翻訳者さんは300人以上でしょうか。
年末の締切ラッシュに追われる今日このごろですが、これまでお世話になった編集者さんや翻訳者さんたちを思い浮かべながら、来年1月から始まる翻訳セミナーについてを中心に、書籍翻訳会社の悲喜こもごも(!)をブログで紹介していけたらと思います。
どうぞ、よろしく!
(Y)