コロナ終息に向けて:各国レポート最終回(21)韓国

 

韓国(人口約5163万人)

小佐野百合香

202361日から韓国ではマスク着用が「義務」から「勧告」となりました。医療機関と薬局、療養型病院を除き、マスクをする必要はなくなったため、うっかりマスクを忘れて外出してしまうことも増えました。それでも何の問題もなく一日過ごせることに、韓国でもコロナ前の日常へと戻っていることを感じます。

マスク着用の義務が解除されると同時に、感染時の隔離も「7日間の義務的隔離」から「5日間の隔離の勧告」へと変わり、原則的に隔離は必要なくなりました。2年間、Zoomによるオンライン授業だった大学の講義も、今年からは完全に対面授業です。コロナによる店舗の営業時間制限も一切ありません。私が通っている韓国の大学では、5月に久しぶりに大学祭が開かれ、韓国の若者に人気の「赤頬思春期」という歌手が来たことで、校内は人であふれかえり、完全にコロナ前に戻ったような雰囲気でした。日韓を往来する際のワクチン接種やPCR検査もなくなったため、航空券代がコロナ前に比べて高いことを除けば何の障壁もなく往来することが可能になりました。外を歩いていると、夏休みに行く海外旅行の話が聞こえてきます。

しかし、コロナが終結したわけではなく、周りにも感染者は一定数います。インターンをしている職場の上司が日本出張に行く前日にコロナにかかり、出張の日程を延ばすこともありました。また、マスクの義務が解除されてからも地下鉄のような密閉された空間では半分くらいの人がマスクをしています。2年を越える厳しい防疫生活で私たちに生まれた感染症への不安感はまだまだ残っているようです。

次第にコロナ前の日常へ戻りつつある韓国ですが、コロナの前と後で最も変化したことは、人との関わり方ではないかと思います。私の通っていた歴史学科では毎学期、3泊程度の地方合宿を行っていました。学科の先輩、後輩、教授が一緒に地方の遺跡をまわり、夜はレクリエーションをし、お酒を飲んで……という歴史学科ならではの行事でしたが、コロナで2年間中止されていました。ついに昨年の2学期から再開され、今学期も韓国の江原道という地域を訪問しました。しかし対面イベントが2年間中止されていたこと、オンライン授業で人との関わりが減ったことで、レクリエーションを盛り込みすぎると学生が負担を感じて参加人数が減ってしまうと運営側が嘆いていました。

人であふれている大学祭の風景

韓国ではコロナの前から、アルコールやレクリエーションの強要に対して敏感になっており、合宿の前にお酒を無理強いしないようにと再三注意されてはいましたが、対面イベントや人との関わりが制限されたことで文化そのものに変化があったのだと思います。2年間の防疫生活で生まれた変化や、感染症への不安感は、コロナ前の状況には完全に戻らず、上書きされて新しい文化になっていくのだと思います。


小佐野百合香(こさの・ゆりか):ソウル市立大学に在学中。韓国史学科4年生