コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(5)中国

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中国(人口約14億人)

高希

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

8月25日時点で中国の現存の感染者は893人となり、全国範囲で毎日およそ30人前後の新しい感染者が出ています。そのほとんどは海外から入国した人で、無症状の感染者が多いです。全国的な第二波は来ていないように思えます。大連やウルムチでは100人を超えるクラスター感染が発生しましたが、今は収束し、新たな感染者も出ていません。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

国内の移動の制限はほとんどありませんが、クラスター感染が発生した大連やウルムチに関しては、訪問者および在住者に14日間の隔離が要請されています。隔離に該当するのかを判断するには健康コードというものが利用されています。健康コードは国や市などによって開発されたQRコードで、通信業社と連携し、利用者の過去14日間の移動履歴データが入れられています。危険度が高い地域に訪問した人にはレッドコードが表示され、その他の人にはグリーンコードが表示されています。グリーンコードであれば、制限なしで移動できます。

入国についてですが、帰国者の検疫制限は出発国によって少し違います。大きなルールとしては、搭乗日までの5日間以内のPCR検査陰性の証明書の提示が義務付けられています。中国に到着してから、体調に問題があったり、問診でひっかかったりすれば、空港で再度PCR検査を受けることもあります。また、入国後はすぐに指定されたホテルまでバスで移動し、14日間の隔離が行われます。都市によっては、ホテルでの隔離期間を短めにしたり、ホテルで隔離されたうえに在宅隔離を追加されたりという場合もあります。出国に関してはとくに制限がなく、渡航先へのビザと便があれば自由に移動することができます。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

国は会社向けに税金延納や保険延納などの政策を講じています。個人向けの施策は主に市などによって立てられていて、地方ごとに異なります。成都市では、6月と8月にそれぞれ100元(約1550円)のクーポン券がアリペイ(Alipay)などのアプリ経由で市民全員に配られました。ただし、その100元は30元券が2枚と10元券が4枚からなり、買い物の総額が60元以上で30元のクーポン、30元以上で10元のクーポンが使えるというルールです。金額が少なく制限も多いため、正直なところ、日本の10万円の補助金が羨ましくてたまりません!

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください

中国では、日常が戻ってきたように感じます。地下鉄や電車の中でのマスク着用や場合によっては健康コードの提示すること以外、なんの支障もなく自由に生活を送れています。一部の映画館も営業を再開しました。ただし、ソーシャルディスタンスを保つため、座席は一席おきに空席を設け、上映が120分を超えたら一旦中止して観衆に館内から出てもらい、換気や消毒を行うといったルールがあります。学生たちは夏休みが終わり、本来なら学校に戻る時期ですが、密を避けるためにオンライン授業を推奨する学校もあります。

⑤近況について、ご自由にお書きください

中国国内ではコロナがすでに収束していて、海外からの感染者をコントロールできれば第二波も発生せずに通常の生活に戻れると思います。ただ、海外の新型コロナが深刻化することによって産業や国際関係に大きな影響がもたらされ、その影響がいかに私たちの生活を左右するのかが心配です。

新型コロナの影響で食糧の減産などが発生していますが、中国政府もYouTuberの爆食い禁止や、宴会で料理の注文量を下げるように呼びかけています。食糧不足を見据えた政策なのではないかと予測している記事もあり、個人の食生活にも影響を与えるのではと不安を覚えました。

さらに、アメリカと中国の貿易摩擦が強まり、アメリカはHUAWEIやTikTokをはじめ、国際展開している中国企業に圧力をかけつづけています。一見、遠くにある国同士の争いにも見えますが、いつか自分の生活にも影響が出てくるのではないかと思っています。7月にはヒューストンの中国総領事館が閉鎖されたことに応じて、私の住む成都市のアメリカ総領事館が閉鎖されました。アメリカの外交官やスタッフは決められた期間内に領事館から離れなければならず、アメリカ領事館に勤めていた中国人スタッフも一気に職を失いました。同領事館でビザを申請しようとしていた人たちも、急遽ほかの領事館での再申請を余儀なくされました。このように、私たち一般市民の生活も、両国の関係によって大きく翻弄されています。米中摩擦が続き、深刻化すればするほど、多くの人の生活に影響が出てくるでしょう。

一方で、今回のコロナ禍は、自分の生活や社会を見つめ直すきっかけにもなりました。今まで当たり前だと思っていた毎日や食生活、人生プランがどれだけ揺らぎやすいものなのかを様々な出来事が教えてくれました。今まで当たり前だと思ったこと、当たり前に受け取っていたことへの感謝の気持ちが湧き溢れています。それらは当然のことではなく、誰かの努力で積み重ねたもので失いやすいものでもあるからこそ、大切しなくてはならないと心の底から思いました。


高希(こう・き):中日・中英翻訳者。中国南西部の四川省成都市在住。

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(4)マダガスカル

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マダガスカル(人口2,697万人)

フランス語情報センター翻訳チーム
(中平信也、脇るみ子)

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

8月21日現在で、

  • 感染者数: 14,218人(8月21日の感染者は64人)
  • 快復者数: 13,206人
  • 治療中の患者数: 834人
  • 重症者数: 76人
  • 死亡者数: 178人
  • 感染者数に対する死亡者数の割合:1.13%。国際水準よりもかなり低い。

まだ第一波の段階といえるだろう。1日当たりの感染者数は7月22日の614人をピークに減少しており、最近は2桁台にまで落ちている。マダガスカル政府は第一波のピークは越えたとみている。その一方で、医療場での基本的な資材(外科用マスクや酸素吸入器など)の不足が報じられている。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

自治体を超えた人の移動は禁止されている。コロナ感染拡大が沈静化しつつあるトアマシナ市内の商店の営業や企業等の活動は17:00まで。しかし、近郊をあわせて人口400万人を擁する首都アンタナナリボでは、市内バスや市内タクシーに運行禁止や運行時間・乗車人数等さまざまな制限措置が設けられている。そのため、自転車の荷台に人を乗せて料金をとる「vélo-taxi(自転車タクシー)」が大量に出現したが、当局がこの規制にのりだしたため、vélo-taxiの運転手の抗議デモが発生している。経済活動を縮小させる制限措置により、日々の収入を失った人たちの「コロナよりも飢餓の方がこわい」という声が大きくなっている。マスク着用が義務化されており、違反した場合は社会奉仕(道路清掃やドブさらいなど)をしなければならない。空港は閉鎖されているため、出入国は不可能。日本の外務省の海外安全情報は、マダガスカルを危険度レベル2(不要不急の渡航は止めてください)から同レベル3(渡航は止めてください)に引き上げている。

コロナによって新たに出現した職業:vélo-taxi「自転車タクシー」

コロナによって新たに出現した職業:vélo-taxi「自転車タクシー」

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

国は困窮者に食料品を無料配布しているが、すべての困窮者に届いているわけではない。マダガスカルに進出している日本企業および日本資本の参加している現地法人は、支援物品(私たちの所属する現地法人ソマコワは、マスク、石鹸、バケツ、コメ、食料油など)を贈呈している。

ソマコワ職員による同社所在県代表への支援物資の贈呈式

ソマコワ職員による同社所在県代表への支援物資の贈呈式

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください

前回レポートした5月前半以降、コロナ感染者が爆発的に増加し、私たちが拠点としているマダガスカル第2の都市トアマシナ(別称タマタブ)も人通りの絶えた「死の街」と化した。現在は沈静化の途上にあるとみられ、規制が緩和され、街の活動も回復しつつある。マダガスカル政府は3月20日に停止された国際線定期便の運航を10月1日に再開しようとしているが、再開されたとしても、入国後に隔離や検査が行われるどうか不明。一方、日本企業は、社員の海外派遣の可否を外務省の海外安全情報に依拠して決めているところが多く、同情報の危険度がレベル1(十分注意してください)にまで下がらないと社員を海外に派遣ができないことになっている。現在はレベル3。それがいつレベル1にまで下がるのかが、マダガスカルで日本企業が復活するポイントのひとつだ。

⑤近況について、ご自由にお書きください

コロナ感染は終息の方向に向かっているとみられているが、マダガスカルの経済はコロナで傷み、市場で働くなど日払いで生計を立てていた人たちは困窮している。経済が回復するには人の移動や外出時間の制限などの規制のない平常復帰の必要があるが、それまでマダガスカル国民が窮乏生活に耐えることができるどうか不安である。けれども、トアマシナの郊外の村落では電気もきていないにもかかわらず、住民の多くが携帯電話で通話をしている。サイクロンで飛ばされてきたという太陽光パネルを軒先に立てかけ、携帯電話をならべて充電しているのだ。この太陽光パネルのもとをたどれば、先進国からの援助で輸入されていたものなのだという。私たちは、ともするとコロナ禍による生活苦をマダガスカルの人々が自力で乗り越えられないものと決めてかかりがちである。彼等の生きる知恵や力を甘く見過ぎているのかもしれない。


株式会社フランス語情報センター翻訳チーム:代表の中平信也(なかだいら・しんや)とパートナーの脇るみ子(わき・るみこ)で運営。どちらも日本在住のフランス語通訳・翻訳者。マダガスカルと日本のあいだを定期的に往復している。