コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(4)マダガスカル

madagascar

マダガスカル(人口2,697万人)

フランス語情報センター翻訳チーム
(中平信也、脇るみ子)

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

8月21日現在で、

  • 感染者数: 14,218人(8月21日の感染者は64人)
  • 快復者数: 13,206人
  • 治療中の患者数: 834人
  • 重症者数: 76人
  • 死亡者数: 178人
  • 感染者数に対する死亡者数の割合:1.13%。国際水準よりもかなり低い。

まだ第一波の段階といえるだろう。1日当たりの感染者数は7月22日の614人をピークに減少しており、最近は2桁台にまで落ちている。マダガスカル政府は第一波のピークは越えたとみている。その一方で、医療場での基本的な資材(外科用マスクや酸素吸入器など)の不足が報じられている。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

自治体を超えた人の移動は禁止されている。コロナ感染拡大が沈静化しつつあるトアマシナ市内の商店の営業や企業等の活動は17:00まで。しかし、近郊をあわせて人口400万人を擁する首都アンタナナリボでは、市内バスや市内タクシーに運行禁止や運行時間・乗車人数等さまざまな制限措置が設けられている。そのため、自転車の荷台に人を乗せて料金をとる「vélo-taxi(自転車タクシー)」が大量に出現したが、当局がこの規制にのりだしたため、vélo-taxiの運転手の抗議デモが発生している。経済活動を縮小させる制限措置により、日々の収入を失った人たちの「コロナよりも飢餓の方がこわい」という声が大きくなっている。マスク着用が義務化されており、違反した場合は社会奉仕(道路清掃やドブさらいなど)をしなければならない。空港は閉鎖されているため、出入国は不可能。日本の外務省の海外安全情報は、マダガスカルを危険度レベル2(不要不急の渡航は止めてください)から同レベル3(渡航は止めてください)に引き上げている。

コロナによって新たに出現した職業:vélo-taxi「自転車タクシー」

コロナによって新たに出現した職業:vélo-taxi「自転車タクシー」

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

国は困窮者に食料品を無料配布しているが、すべての困窮者に届いているわけではない。マダガスカルに進出している日本企業および日本資本の参加している現地法人は、支援物品(私たちの所属する現地法人ソマコワは、マスク、石鹸、バケツ、コメ、食料油など)を贈呈している。

ソマコワ職員による同社所在県代表への支援物資の贈呈式

ソマコワ職員による同社所在県代表への支援物資の贈呈式

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください

前回レポートした5月前半以降、コロナ感染者が爆発的に増加し、私たちが拠点としているマダガスカル第2の都市トアマシナ(別称タマタブ)も人通りの絶えた「死の街」と化した。現在は沈静化の途上にあるとみられ、規制が緩和され、街の活動も回復しつつある。マダガスカル政府は3月20日に停止された国際線定期便の運航を10月1日に再開しようとしているが、再開されたとしても、入国後に隔離や検査が行われるどうか不明。一方、日本企業は、社員の海外派遣の可否を外務省の海外安全情報に依拠して決めているところが多く、同情報の危険度がレベル1(十分注意してください)にまで下がらないと社員を海外に派遣ができないことになっている。現在はレベル3。それがいつレベル1にまで下がるのかが、マダガスカルで日本企業が復活するポイントのひとつだ。

⑤近況について、ご自由にお書きください

コロナ感染は終息の方向に向かっているとみられているが、マダガスカルの経済はコロナで傷み、市場で働くなど日払いで生計を立てていた人たちは困窮している。経済が回復するには人の移動や外出時間の制限などの規制のない平常復帰の必要があるが、それまでマダガスカル国民が窮乏生活に耐えることができるどうか不安である。けれども、トアマシナの郊外の村落では電気もきていないにもかかわらず、住民の多くが携帯電話で通話をしている。サイクロンで飛ばされてきたという太陽光パネルを軒先に立てかけ、携帯電話をならべて充電しているのだ。この太陽光パネルのもとをたどれば、先進国からの援助で輸入されていたものなのだという。私たちは、ともするとコロナ禍による生活苦をマダガスカルの人々が自力で乗り越えられないものと決めてかかりがちである。彼等の生きる知恵や力を甘く見過ぎているのかもしれない。


株式会社フランス語情報センター翻訳チーム:代表の中平信也(なかだいら・しんや)とパートナーの脇るみ子(わき・るみこ)で運営。どちらも日本在住のフランス語通訳・翻訳者。マダガスカルと日本のあいだを定期的に往復している。