トルコ(人口約8,200万人)
西岡いずみ
①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
2020年9月2日現在の新規感染者数は1596人、累計感染者数は27万3301人。6月2日に新規感染者数が786人まで減少した後、再び増加に転じ、ここ3か月ほどは毎日1000人前後で減増を繰り返しています。保健相の8月19日の発表では、トルコ全土の集中治療室の平均利用率は64.8%とのことです。
②国や自治体からの規制や制限はありますか?
現在、都市間の移動制限は解除されており、ショッピングセンターや飲食店の営業も再開されていますが、多くの県でマスク着用義務が課されています。入出国制限は6月中旬にほぼ解除されており、入国者の隔離処置などは行われていません。
移動規制の解除に伴い、保健省はHES(‘Hayat Eve Sığar.’(生命は家に収まる)の略)という、コロナ感染者の追跡、感染状況表示のためのアプリを開発提供しました。また、飛行機、鉄道、バスなど公共交通機関による国内移動の際には、HESコードというコロナ感染の履歴、感染者との接触履歴を示す追跡ナンバーを取得して提示しなければ、チケットが買えない仕組みになっています。
③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?
被雇用者に対する3か月の休業補償、マスクの無料配布(現在は最高価格1枚1リラという制限付きで販売)、各種税金・社会保障費納入の延期、低所得者への援助金がありました。
④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください
5月以降、さまざまな制限が解除され、コロナウイルス感染防止対策は実質的に各個人と各事業主に託された形です。そのため、人や場所に応じて対応にバラつきがあり、場合によっては感染の危険を感じることもあります。とくに祭りや結婚式、兵役に就く若者の送別、葬式などでは、互いの間隔を考慮しないで人が集まることが多く、これが感染増加に影響を及ぼしているとして問題視されています。テレビ、ネットのニュースでもそのような映像が頻繁に見られます。しかし、5月の断食月と砂糖祭りの時とは異なり、8月初めのイスラム教の犠牲祭(クルバン・バイラム)には外出禁止令は出されませんでした。私も8月に夫の田舎で結婚式に参加しましたが、ニュースで見たとおりの光景でした。地方の結婚式は花嫁花婿の家の庭に多くの人が集まって踊り、踊らない人たちも花嫁花婿や踊る人たちを見ようと、前へ前へと密集します。また、食事もふるまわれます。村内や近郊でコロナによる患者や死者がいることが話題になっているにもかかわらず、マスク着用者がほとんどおらず、非常に居心地悪く感じました。
⑤近況について、ご自由にお書きください
現在、学校教育は9月に再開されると発表されています。我が家の娘はこの9月に高校に入学するのですが、登録手続きの際に受けた説明によると、本来40人のクラス定員を20人にし、さらに10人ずつに分けて、一方のグループが対面教育を受ける際、もう一方のグループは遠隔教育を受けるという計画だそうです。しかし、外出規制がある時期に国営テレビやインターネットで、教育省や各学校、各教師による遠隔授業がありましたが、内容に乏しかったり、接続できなかったりしたので、このような形できちんとした教育を受けることができるのか心配です。また、いままでにない形での不定期な登校で、新しい級友とどのように関係を築くのだろうという不安もあります。
一方、外出制限期間中呼びかけに応じなくなっていた近所の猫たちはというと、制限解除により再び定期的に餌がもらえるようになったためか、「ピスィ、ピスィ(猫、猫)」の呼びかけに応じてくれるようになりました。猫たちと再び交流できるようになったことは、不安や心配が多い中でのささやかな癒しとなっています。
西岡いずみ(にしおか・いずみ):主婦、ときどき翻訳者。トルコ・イスタンブル在住