コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(12)デンマーク

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デンマーク(人口約580万人)

針貝有佳

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

順調に感染者数が減ってゆるゆるモードになっていたせいか、7月末から第2波が到来しています。第1波に比べるとはるかに小規模ですが、局地的に感染者数の増加が見られています。

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日ごとの新しい感染者数(2020年3月10日〜9月4日)

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

第2波到来中の8月上旬に夏休みが明けたこともあり、8月22日から公共交通機関(電車・バス・地下鉄・フェリー・タクシー・駅構内)でマスク着用が義務化されました。違反すると罰金の対象になるので、みんなしっかりルールを守っています(12歳未満は対象外)。また、当初の予定では8月には段階的再開のフェーズ4に移行する予定でしたが、第2波の影響によりフェーズ3に留まっています。そのため、ナイトクラブ・ディスコなどへの休業要請は解除されていません。100人以上の集会も禁止されたままです。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

政府から経済的なサポートがあります。一定の基準を満たすサラリーマンには最大75%の給与補償、時給で働く人には最大90%の給与補償(上限は月約50万円)です。また、30%以上の売上減など一定の条件を満たす自営業者には、所得の90%まで補償(上限は月約39万円)があります。イベントのキャンセル等に伴う費用負担についても、政府が経済補償をしています。このあたりの対応は、デンマークが高福祉国家であることを感じさせてくれます。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

7月の夏休みには弛緩した空気が漂っていました。夏休みは国内で過ごした人が多く、国内の観光地は賑わっていたようです。我が家はユトランド半島北西部の田舎にあるサマーハウス(別荘)で過ごしたのですが、サマーハウス付近は例年以上に賑やかでした。不思議だったのは、電車には人数制限が設けられていたにもかかわらず、フェリーや長距離バスは人数制限もなく満席だったことです。この頃はまだマスクが推奨されておらず、マスクをつけている人もほとんどいなかったので、満席の密室空間に身を置いて「これでいいのだろうか?」と不安になりました。今は公共交通機関でマスク着用が義務づけられましたが、全体的にだんだんコロナ慣れして意識が緩んでいる感じがします。各教育機関や職場での対応はそれぞれです。たとえば、近所の小学校では、親は学校の敷地内に立ち入り禁止で、校舎には仮設の手洗い場が設置されており、手洗いや消毒を徹底しています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

ロックダウン中は意外と元気にひきこもり生活を楽しんでいた我が家ですが、その後も続いた自粛期間や子どもの夏休みを経て、少々コロナ疲れが出ています。春のロックダウン時は天候も良く、屋外空間を存分に使えた点が大きな救いだったので、寒くて暗い秋冬のロックダウンはなんとしても避けたいところです。ときどき、ふと「今度日本に帰れるのはいつだろう」と日本に想いを馳せることがあります。グローバルな時代ですが、国境の存在をハッキリと感じています。それでも今はSNSやメールで気軽に近況報告できる時代。物理的な距離と心理的な距離は比例せず、私たちの想いはいとも簡単に国境を超えていきます。大変なこともありますが、このデジタル時代の到来がありがたく、皆さんとのつながりに感謝する日々です。


針貝有佳(はりかい・ゆか):デンマーク語の翻訳者、ライター。デンマーク・ロスキレ在住