ニュージーランド(人口約495万人)
目時能理子
①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
3月からの厳しいロックダウン政策が功を奏し、6月上旬以降、市中感染が100日以上出ていなかったニュージーランドですが、8月11日に最大都市オークランドで市中感染4例(全員1つの家族)が見つかり、前回同様すばやい判断で、オークランドはレベル3(2番目に厳しい警戒レベル)、それ以外の地域はレベル2の措置が取られることになりました。8月31日からはオークランドの制限が緩和され、他の地域同様、レベル2となっています。
市中感染がなかったあいだも、海外からの帰国者(現在入国できるのは原則としてニュージーランド市民および永住者のみ)の中から陽性者はごく少数ながら出ていましたが、彼らは全員管理された隔離施設にいるため、政府としてもコントロールできる状態でした。しかし今回、第2波といえるほど大きなものかどうかはわかりませんが、市中感染が見つかったことで、感染拡大を防ぐために迅速な警戒措置に至りました。
わずか一桁の感染者が出た時点でロックダウンに入るというのは、世界的に見ても珍しいと思うのですが、政府としての確固たる姿勢には安心感を覚えます。現在の陽性者は131名、そのうち入院している人は11名なので、医療現場が特に混乱しているということはないようです。
②国や自治体からの規制や制限はありますか?
レベル3の警戒措置のあいだは、オークランドからオークランド外への移動は制限されていました。しかし、レベル2になった現在は国内の移動に関しても特に制限はありません。オークランドに関しては、公共交通機関を利用する際、マスクの着用が8月末から義務づけられました。パンデミック当初、ニュージーランド政府はマスクの効果に対して懐疑的でしたが、少し前からマスク着用を呼びかけるようになりました(この辺りはWHOの見解に倣っているように思います)。
出入国に関しては、入国できるのは原則としてニュージーランド市民および永住者のみ(就労ビザなどの一時滞在ビザ保持者は原則として入国できません)。入国したら、空港からそのまま政府が管理する隔離施設に移動し(ホテルなどが使われています)、2週間の自己隔離が義務化されています。その費用(約20万円)は当初は全額政府負担でしたが、最近、条件によって自己負担にするようルールが変わりました。
③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?
最初のロックダウン(3月)で実施された給与補償がまだ続いており、レベル3では小売店は営業不可、レストランやカフェは持ち帰りのみ営業可能となっていたため、この給与補償が続行する形で現在も補償が続いています。自営業者にも補助があります。
④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。
前回のロックダウンが終わり、市中感染がゼロだった時期は、日常生活や街の様子はコロナ前に戻ったかのようでした。町中に感染者がいないので、みんな、安心して過ごしていたように思います。その後、市中感染が出て、オークランドはレベル3へ移行したわけですが、前回のような緊張感はあまり感じられず、ソーシャルディスタンスなども甘くなっていたように思います。
レジャー関係は、外国からの旅行客がいない状態なので、打撃を受けているところも多い一方、今まで国外に行っていたニュージーランド人が国内旅行をするようになったため、思ったより影響を受けていないリゾートタウンもあるようです。
⑤近況について、ご自由にお書きください。
市中感染がゼロのあいだは、誰もマスクをすることなく、ある種の桃源郷のような趣があったニュージーランド。しかし、国境を閉鎖しても、南半球の小国であっても、やはり新型ウィルスとは無縁でいられないのだと思います。前回のロックダウンは国民一丸となってやりきった感がありましたが、今回の警戒措置では、反対する人々のデモなどもあり、国民のあいだでも意見が分かれてきているような気がします。いずれにせよ、まだしばらくは世界的にも沈静化することはなさそうなので、あまり振り回され過ぎず、日々の生活を大切に過ごしていこうと思っています。
目時能理子(めとき・のりこ):イタリア語・英語翻訳家、英語・イタリア語コーチ、ニュージーランド・オークランド在住。