コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(22)モザンビーク

mozambique

モザンビーク(人口約2,949万人)

森本伸菜

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

モザンビーク政府の統計では感染者数3,916人、死者23人、検査をした人、96,387です(8月末時点)。隣国の南アフリカに比べるとこの数字は大変少なく、友人、同僚は皆この数字は正確ではない、検査を十分にできないから数が少ないのだと思っています。検査数の少なさ=感染者の少なさ、というわけです。とは言ってもモザンビークでは呼吸器系の症状で病院が対処しきれないという状況はなく、このパンデミックのために建てられた私のいるインニャンバネ州のコロナ・クリニックは不思議なことに閑古鳥が鳴いています。

事実、モザンビークをはじめ、アフリカ諸国はコロナ研究者たちを困惑させるほど、感染率が緩やかで、陽性者も少ない数字を維持しています(南アフリカは例外で、その次にアフリカで多いナイジェリアは世界で50番目です)。多くの研究発表がありますが、まだこのウィルスについては100%は解明されていません。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

モザンビーク政府は4月1日に緊急事態宣言を発表し、フィリペ・ニュシ大統領は3回延長しました。その3回目の延長が終わる7月末、いったいどうなるのか、と国民はかたずを飲んで政府の発表を待ちました。というのも、憲法で緊急事態宣言延長は3度までと規定されているからです。新型コロナのパンデミックなど予想もされずつくられた憲法ですからそのような規定がありました。国を本当に通常の状態に戻すのか? 7月の末はまだ感染者も多く、日ごと数が大幅に増えている時期でした。国会で1週間討論され、またさらに30日延長することになりましたが、経済を動かすためにいくつかの規制を緩めました。例えば労働者の多い職場ではローテーションで働く。外国人でも経営の中枢にいる人は入国を許すなどです。しかし、公共の場でのマスクの着用、ソーシャルディスタンスの厳守、バーなど、夜のエンタテインメント施設の閉鎖、政治集会、宗教集会、チームでするスポーツ、コンサートなど、大勢の集まるイベントの禁止などはそのまま続けられています。

先週、モザンビーク人、外国人居住者は有効なパスポート、ビザがある人は内務省の許可なしに海外渡航を許すという発表がありました。しかし、隣国の南アフリカは国境を閉じたままです(モザンビークから海外に行くには空路はすべて南アフリカ経由になります)。

学校に関していえば、ややこしい状況になっています。高校最終学年の生徒は新型コロナのため試験を受けられず、全員卒業になりました。政府はコロナの安全対策のできている学校は再開してもよいと発表しましたが、地方の学校では無理な話です。1クラス100人近い生徒数だったり、きれいな手洗いの水がない、衛生的なトイレがないという状況で、多くの親たちは学校再開に反対しています。それでも、7月末から高校は再開すると決定されましたが、実際にはまだすべての学校が閉鎖されたままです。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

私のいる小さな町、トーフでは、本当にわずかずつ「ノーマル」に戻りつつあります。人々はロックダウンに疲れているように見えます。まだかなり厳格に気を付けている人もいれば、気を緩めている人もいます。

もともとは観光客の街で、今のシーズンはヨーロッパから多くの観光客が来る時期ですが、それはまったくありません。しかし、その代わり首都マプトの多くの外国人居住者たちが、家族連れで長期滞在のためにトーフを訪れています。例年ならヨーロッパに帰るのですが、それができないためトーフが潤っているという皮肉です。おかげで私たちは週末だけレストランを開けるようにしました。スタッフの数を減らし、席も少なくしました。感染を防ぐ考えうるすべての安全対策をとって営業を始めました。仕事に戻れて、スタッフはとても喜んでいます。

みんなまだとても警戒をしており、マスク着用、頻繁な手洗いはすでに慣習化しています。これはおそらく長く続くこれからの「ニュー・ノーマル」なのでしょう。


森本伸菜(もりもと・のびな):モザンビーク・トーフで日本食レストラン「すみバー・アンド・キッチン」を南アフリカ人の夫と経営。現地の子どものためのコミュニティなどの活動に深く関わっている。