コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(23)マレーシア

マレーシア(人口約3200万人)

橋本ひろみ

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

マレーシアでは2021年の年末から2022年の初めにかけて、1日の新規感染者数は停滞していましたが、今年の2月からオミクロン株が猛威をふるい、2022年3月10日をピークとして、1日に30,787人もの新規感染者がでました。知り合いや身近な人のなかにも感染者が出たという話も多く耳にしました。その後減少し続け、現在では昨年末同様の状況にまで収まってきました。

ワクチン接種がかなり進んだため、現在の感染者数は134,469人いるものの、その97.6%にあたる131,235人は自宅隔離であり、重症化するケースも少なく、病院や隔離センターの負担や使用状況も去年の逼迫した状況に比べかなり余裕が出てきています。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

2021年10月18日からクアラルンプールを含む州や地域において、国家回復計画(NRP)および強化された活動制限令(EMCO)の第4段階が施行され、標準作業手順書(SOP)の緩和が発表されました。この段階では、マスク着用はまだ義務づけられていますが、手洗いなどの感染対策を行い、ソーシャルディスタンスを保つなどといったSOPを守ることで、3回目までのワクチン接種完了者については、ほとんどの活動が再開できるようになりました。

また、宗教活動や集会も許可され、州をまたがる移動も規制がなくなり、レストランなどの営業時間の制限もなくなりました。SOPを守ることにより、スポーツやライブやイベントも再開され、学校や教育機関も再開が許可されました。今年の2月8日には、建物に入る前に行われていた体温チェックと手書きの個人情報の記録の提示義務も廃止されました。

さらに、2020年3月18日よりコロナ感染症対策として実施されていた観光ビザでの入国禁止措置が2022年4月1日より解除されることがマレーシア政府より正式発表され、ワクチン接種完了者に関しては入国時の自宅や隔離施設などでの隔離期間も免除されるようになりました。現在、これらの規制緩和によりコロナ前の状況にさらに近づいています。

活気を取り戻しつつあるバザーの風景

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

2022年4月12日現在、マレーシア保健省の公開データによると、最低1回のワクチン接種を受けた人は、27,567,306人で、国内の人口の84.4%であり、2回目の接種を受けた人は25,984,454人で国内人口の79.6%、ブースター接種を受けた人は15,933,049人で国内人口の48.8%となっています。2回目の接種までは政府の奨励もうまくいき、わりとスムーズに接種が進んでいきました。しかし、ブースター接種に関しては、副反応が大きいことや様々な懸念や意見もあり、まだ国内人口の約半分にとどまっています。

いつもの渋滞が戻ってきたクアラルンプール中心部

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

今年の4月1日、ワクチン接種完了者は、マレーシアとシンガポール間を隔離や規制なしで移動ができるようになったことを受け、国内はお祭り騒ぎのような歓声に包まれました。これを皮切りに徐々に他国との国境も開かれていき、多くの人が待ち望んでいた海外旅行や留学、海外での就職活動が、勢いを増して展開していくと思われます。

しかし、新型コロナウイルスがマレーシアに到来して以来、コロナ禍で受けたダメージは経済的にも精神的にも大きく、今後いかに回復に向けて活動していくのかが問われています。とくに経済面では、失われた雇用、外国人労働者不足、国や企業、個人の経済危機、流通の停滞など、多くの課題が残されています。

また、規制は大きく緩和されたものの、人々のコロナ感染に対する懸念はまだまだ強く、企業でも、仕事が在宅でできれば、社員はそのまま在宅勤務を続けていますし、学校や教育機関でも対面授業は再開されているものの、感染者が出るとなんらかの対応をしなければならなかったり、また、いまだにオンライン授業を続けていたりする教育機関もあります。実際の活動においては、状況を見ながら慎重な判断が迫られています。

現在(2022年4月15日)マレーシアはラマダン(断食)の月で、約半月後には断食明けを祝うマレーシアの最大の祝祭ハリラヤがあります。従来は、首相(や王室)のハリラヤ・オープンハウスが開催され大勢の人が集まったり、帰省や親戚宅を訪問して家族や親戚と共に盛大にお祝いをしたりします。今年はウィズコロナで、どのようなハリラヤになるのでしょうか。週単位、月単位で状況も変化していますが、状況を見ながら最善の判断をしていきたいと思います。一日も早くコロナの終息を迎え、新しい日常が到来することを心待ちにしています。

マスクを着用し、公共交通機関を利用する人々

橋本ひろみ:マレーシア、クアラルンプール在住。翻訳者、日本語教師