コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(5)マダガスカル

madagascar

マダガスカル(人口約2697万人)

フランス語情報センター翻訳チーム
(中平信也、脇るみ子)

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

マダガスカルには依然として入ることができないので、第三弾レポートも日本からマダガスカルの現状をお伝えする。

前回の報告では2020年8月21日の統計から「第一波のピークは越えた」とご報告した。マダガスカル政府も毎日行っていたコロナ禍関連の統計結果の発表を週に一度に変えた。ところが、2021年に入ると、同統計結果の数字は急速に悪化しはじめ、3月28日には過去最悪を記録した。また、国境封鎖を行っているにもかかわらず、南アフリカ型の新型コロナウイルスの感染が確認された。第一波よりも今回の第二波の方がより多くの感染者、重症者、死者をもたらしている。

5月9日現在の状態は以下の通り。
検査数:192,294件
感染者数:39,162人(うち、重傷者数:309人)
快復者数:36,261人
死亡者数:729人(昨年は1年を通じて約300人)
治療中の患者数:2,172人

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

第一弾のレポートでご紹介したように、マダガスカルには伝統生薬アルテミシアを原料としたコロナ予防/治療薬CVO(Covid Organics)が存在し、大統領自らがこの治療薬の宣伝をし、輸出も行っていた。このため、当初は「ワクチンは不要」との態度をとっていた。しかし、猛威をふるう第二波への対策を求められた政府は、CVOによる予防・治療以外の選択肢を国民に提供するため、5月2日、ワクチンの接種を発表した。

これを受けて5月7日、COVAXファシリティ(WHO主導によるワクチンの公平な配分を目指す国際的な枠組み。富裕国とワクチンを購入することが出来ない貧困国の格差を縮めることを目的とする)によるアストロゼネカ社のワクチン25万回分(2回の接種を前提として12万5,000人分)がイヴァト国際空港に届けられた。

COVAXは、受け取る側の国に対して、ワクチン配布と並行して接種を実施するスタッフの訓練や、適正温度でのワクチンの管理と運搬まで行い、最大で支援適格国の国民20パーセントに対して無償でワクチン接種の便宜を提供する。アストラゼネカ社のワクチンは、一般的な冷蔵庫の温度である2~8度での保管が可能であり、他社製に比して安価である。今回到着分は、医療関係者と国防関係者、高齢者を対象に優先接種が行われる。

他方、駐マダガスカル日本大使館が在留邦人の接種希望者を募ったとのことだ。マダガスカルのフランス大使館はマダガスカル在住フランス国籍保有者とEU加盟国の在留者にフランス大使館内に設置した会場でワクチンの接種を開始しているが、日本大使館がマダガスカル在住日本人にいつ接種を始めるのかは不明である。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

5月2日の政府発表により、国家保健非常事態宣言が2週間延長された。同宣言の詳細は第一弾のレポートで報じているが、その基本は、夜間外出の禁止(午後9時から午前4時まで)、コロナ蔓延地域の封鎖、学校の閉鎖(バカロレア試験クラスを除く)、集会の禁止などによる人流の抑制である。国際便の運航は引き続き停止しており、外国からマダガスカルに入国することは原則できない。在留外国人が帰国のためにマダガスカルを出国することは許可される。また、国内便も5月5日から全面的に運休。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

夜間外出禁止は以前からのことであり、私たちが拠点としているマダガスカル第二の都市トアマシナではJICAの港湾拡張プロジェクトの建設作業が通常通り継続されている。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

トアマシナの上記プロジェクト関係者には、血液採取によりコロナ感染の有無の検査が行われている。現地にいる日本人プロジェクト・マネージャーは検査結果が陽性で南アフリカに搬送された。また、私たちの関わる現地法人ソマコワ社にも2名のマダガスカル人に陽性者がでた。この2名は自宅静養中だが、ソマコワ社の唯一の日本人には「以前にコロナに罹患したが現在は完治。感染の恐れが残っているので要注意」との検査結果が伝えられた。

「以前にコロナに感染していた」という看過しがたい結果だが、マダガスカルのコロナ検査には精度に問題があると検査を始めた頃から言われているので、私たちは誤診だと思っている。おそらく、血液中にコロナウイルスによりできる抗体に似た抗体があっただけだろう。先進国を中心にコロナはその猛威を低下させているが、マダガスカルはコロナ感染に細心の注意を払わなければならない時期にまだある。


株式会社フランス語情報センター翻訳チーム:代表の中平信也(なかだいら・しんや)とパートナーの脇るみ子(わき・るみこ)で運営。どちらも日本在住のフランス語通訳・翻訳者。マダガスカルと日本のあいだを定期的に往復している。