コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(19)スロヴェニア

スロヴェニア(人口約208万人)

木村高子

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

前回のレポート(2021年6月)の後、秋になるとスロヴェニアでの感染者が再び急増し、12月には少し落ち着いたものの、今年の1月末から2月上旬にかけてピーク(1日あたりの新規感染者数2万人近く)に達しました。その後感染者数は減少しましたが、3月に入ってからは1日あたりの新規感染者数が2,000〜3,000人あたりで推移しており、これ以上の劇的な減少はまだ望めないようです。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

2021年秋以降、日常生活においてもPCT条件(回復証明(P)、ワクチン接種証明(C)、陰性証明(T)のいずれかの所持)を満たさないことには、日常生活に支障が出るようになりました。私もワクチン接種証明書を保存した携帯電話、身分証明書、それにマスクが外出時には不可欠になりました。こうした規則が施行された当初はまだ運用が甘く、ろくにチェックもせずに入店を許すケースも少なくありませんでした。しかし、感染数を抑えられなかったことから、その後は厳しくなり、入口に常駐する人にいずれかの証明書と身分証明書を提示せずには入店できなくなりました。また飲食店の営業制限や集会の開催制限も続けられました。

学校では、生徒達は抗原セルフ検査を週2、3回行うことが義務づけられました。求められる検査の頻度を含め、規則も頻繁に変わっていたので、生徒も教師も大変だったと思います。一部の学校では、教師が政府の方針に従わず、検査をしなかった児童も教室に迎え入れていたために、一時その学校が閉鎖されたというニュースもありました。その後2月21日以降、PCT条件の確認義務が撤廃され、同時に児童・生徒の検査も廃止されました。さらに店や接客業、集会の人数制限や営業時間の制限などもなくなりました。

4月14日より、屋内でのマスク着用義務も撤廃されました。これでコロナ関連のほぼ全ての規制が撤廃されたことになります。さまざまな規制緩和は、私としては時期尚早だと思うので、まだしばらくは屋内でのマスク着用を続けようと思っています(ただし、逆にマスクをしている人に対して難癖をつける人がたまにいるという話もききます)。

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

スロヴェニア人のワクチン接種率は決して高いとはいえず、2回目の接種を済ませたのは人口の約60パーセントにとどまっています。それでも3回目の追加接種が昨年末から、高齢者や基礎疾患を持つ人を優先して開始されました(現在3回目接種済みの人は人口の約30パーセントです)。希望者は市当局などがホームページで公表している場所・日時に行くだけで、予約なしに接種を受けることができます。オミクロン株の世界的な広がりを受けて、12月中旬には追加接種を、それまで推奨されていた2回目の接種の6か月後からではなく、3か月後から受けられるようになりました。

反ワクチン派の人々は、ワクチンが開発されたばかりの時期には毎週のように抗議集会を開いていましたが、最近ではそれもあまり見かけなくなりました。とはいえ、上記のPCT条件の確認が厳格化され、日常生活に支障が出始めた頃でも接種を拒否していた人がいたわけですから、この問題を巡る分断が存在することは今も変わりません。同じ家庭内でワクチンを巡って意見が割れる、という話もちらほら聞きました。先日は、1人で7回のワクチン接種を受けた人が逮捕されたというニュースが流れました。通常の2回の接種後、他人になりすまして5回接種し、8度目を受けようとしたところで逮捕されたということです。思いも寄らない考えを持つ人がいるようです。

去年10月に実施された屋外バザー

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

新型コロナウイルスの感染が広まりはじめた頃は、皆が戦々恐々として、街はゴーストタウンと化していました。当初はスロヴェニアの感染者はまだほとんどいない状況でしたが、冬の到来とともに感染率は急上昇し、一時期は人口比で世界最悪レベルになりました。現在でも決して終息しつつあるとは言えません。しかし、街の様子は、マスクをした人の姿が見える以外は、ほとんどコロナ以前と変わらないようになりました。だんだん暖かくなってきたこともあり、街のレストランも喫茶店もにぎわっています。

このような現状は、観光に力を入れている国としては、厳しい規制を続けることに対する反論が大きかったこと、また規制緩和に踏み切った周辺諸国に足並みを揃えた結果でしょう。現在、当然ながらアジア人の団体観光客は完全に姿を消しましたが、近隣諸国からの観光客の数は回復したように感じます。4月24日に議会選挙が行われたことも、規制緩和には大いに関係しているようです。正直なところ、PCT条件のチェックなどは続けてもよいのではないかと思いますが、私自身もこの2年間の「強制引きこもり状態」に疲れ、友人と直接会えることを喜んでいます。

実家の事情により、コロナ禍のもと、これまで3回日本との間を行き来しました。日本入国の際は、特に最初の頃は、多くの書類を揃えたり(2021年2月)、2週間の自宅待機中に毎日厚生労働省のアプリを使ったチェックを受けたり(2021年11月)と大変でした。ですが、スロヴェニアに戻る時は、今年初め以降は、ワクチン接種証明書と陰性証明書さえあればPCR検査も必要なくなり、だいぶ楽になりました。手続きが面倒だったとはいえ、私たち日本人は帰国できてよかったですが、日本人と外国人との間にコロナウイルスを持ち込むリスクに特に違いもないのに、長い期間、日本政府が外国人の入国をほぼ一律に禁じていたことについては、不公平だったのではないでしょうか。

去年の冬から現在にかけて、知り合いの間にもコロナに感染したという人が次々に出てきて、いつ自分が感染してもおかしくないという状況に不安もありました。しかしオミクロン株は重症化しにくいということも関係あるのか、幸い知り合いで重篤化した人はいませんでした。今後については、新型コロナウイルスもインフルエンザのように季節性の風邪のようになっていくのではないかと、希望も込めて考えています。

人通りの多い首都リュブリャナの中心街(今年4月)。

木村高子(きむら・たかこ):英語・フランス語・スロヴェニア語翻訳者。スロヴェニア・リュブリャナ在住