コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(18)フランス

フランス(人口約6706万人)

野村真依子

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

オミクロン株による感染拡大が2022年1月末に峠を越えたのち(ピーク時期の1日の新規感染者数は約40万人)、感染者数は順調に減り続けていましたが、3月に入って再び増加に転じました。オミクロン株BA.2の感染力が強い、ワクチン接種から時間が経過してワクチンの効果が落ちている、規制緩和が早すぎた、などがその要因として挙げられています。 とはいえ4月初旬の現在、感染者数増加の勢いは鈍化しつつあり、入院患者数も微増にとどまっています。最近の1日の新規感染者数は10万人くらいですが、規制が復活する兆しもなく、政府も市民も楽観的に見えます。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

2月初めから、それまであった規制(ワクチンパス、屋内外のマスク着用義務、集会の人数制限など)が段階的に解除されています。3月14日以降で残っているのは、公共交通機関と医療機関・関連施設でのマスク着用義務と、医療施設でのワクチン接種・陰性証明の提示くらいです。ただし、マスクは「推奨」されてはいるため、場所にもよりますが街中でも3分の1~4分の1の人がまだ着用している印象です。着用義務がある場でも守らない人はちらほらいますが、警察によるチェックはもはや見かけません。

あいかわらず薬局前に設置されているコロナ検査用テント(2022年4月)

濃厚接触者の隔離義務もかなり緩和され、自己検査であっても陰性であれば隔離する必要はなくなりました。この場合の検査キットも、濃厚接触者である旨を申告すれば基本的に薬局で無料配布されます。そもそもPCR検査や抗原検査も、ワクチン接種を拒否している人が自己都合で検査するなど一部の場合をのぞき、だいたいは自己負担なしで受けられます。

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

4月4日現在、対象となる人口の58.7%がワクチン3回接種済み、79.5%が2回接種済みです。インターネットで簡単に接種の予約が取れるため、希望者は速やかに接種を完了できますが、一方で、依然として接種に抵抗している人もいます。衛生パス(*)・ワクチンパスに反対するデモは一時期、毎週末の恒例行事になっていました。ワクチンパス導入が発表された際は、抵抗をあきらめた人が予約サイトに殺到しましたが、パスも不要になった今、接種率が急上昇することはなさそうです。とくに、2021年の年末から始まった5-11歳児の接種はあまり進んでいません。

接種キャンペーンは、日本のように職場レベルや自治体レベルではなく、全国一律に、年齢や職業、病歴に応じて各自が自由に予約する形で進んだため、全体を見れば効率よくスムーズに進んだと思います。

*ワクチン接種証明、陰性証明、回復証明のいずれか。病院や高齢者施設、障がい者施設、飲食店や文化・娯楽施設での提示義務があった。

カフェは元どおりのにぎわい(2022年4月)

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

さすがのコロナ禍もひと段落した感・もう慣れた感があり、日常がかなり戻ってきた気がします。4月10日には大統領選挙の第1回投票がありましたが、投票所では感染者も投票を許され、その場合でもマスク着用は義務ではない、という(ちょっとビックリな?)政府の対応でした。ウクライナ情勢など心配の種には事欠きませんが、夏休みの計画を本格的に立てる時期ということもあり、私を含む多くの一般市民の間では、コロナは頭の隅に追いやられています。

ただ、コロナによる出入国上の制約に次いで、今度はウクライナ情勢による航路上の制約で、あいかわらず日仏間の行き来は(人もモノも)一筋縄ではいかない状況が続いています。この点が早く解消されるとよいのですが……。

劇場で開催できず公園で行われたバレエの発表会での一コマ。足元はスニーカー(2021年6月)

野村真依子(のむら・まいこ):英語・フランス語翻訳者。フランス在住