コロナ終息にむけて:各国レポート(2)スウェーデン

sweden

「独自路線」で有名になってしまったスウェーデンより

久山葉子

スウェーデンはついに死者数が3000人を超えましたが、ピーク自体は4月頭にあり、そこから安定、減少傾向になっているので、市民の気持ちはかなり落ち着いてきている感じがします。

スウェーデンは結局ロックダウンも義務教育の休校もすることなく、今にいたっています。日常生活ではリモートワークが推奨され、大人はなるべく家にいますが、わずかでも風邪の兆候があれば外に出てはいけない(これは子どもに関しても同じ)ことになっています。外に出る場合は、必ずソーシャルディスタンスをとること。それを守っていれば、ショッピングをしたりレストランで食事したりすることもできます。絶対に禁止されているのは、高齢者施設の訪問と、50人以上の集会です。

わたし自身は高校で日本語を教えているのですが、3月17日火曜日に教育大臣から「高校・大学・成人学校はオンライン授業に移行するように」と突然のお達しがありました。翌水曜日に教員で集まってオンライン授業の準備をし、木曜日の朝8時15分にはオンライン授業が始まりました。ちゃんと生徒たちが集まってくれるのか不安だったのですが、なんとわたしの授業の出席率は100%。さすがデジタルネイティブな子どもたちです。オンラインだと少しくらい体調が悪くても出席できるので、その後も出席率は普段よりずっと高く、先生としてはうれしいかぎり。

この状態になってすでに2か月近くが経ちましたが、長引いてつらくなってきたというよりは、すっかり慣れてきたという感じです。もともとスウェーデンは禁止しすぎない”持続的可能な”政策をとっていて、この状態が長引いても大丈夫なようになっています。

子どもは学校に通えているし、たしかに外出することは各段に減りましたが、自炊に飽きたら高級レストランのテイクアウトを試してみるなど、大人たちも気晴らしをしています。所属しているアマチュアオーケストラの演奏会も練習も中止になってしまってさびしいですが、そのぶん、世界各国でオンライン開催されるセミナーやイベント、座談会などに顔を出し、ふだん田舎に住んでいる者としてはむしろ世界が近くなった気さえします。テクノロジーのおかげですね。

もちろん、この状態が長引けば長引くほど、経済への影響も大きくなります。今、自分にできるのは、うつらない・うつさないように気をつけて行動すること、そしてテイクアウトやショッピングを通じて地元のお店やレストランを支援することかなと思っています。スウェーデンの様子についてはこちらのエッセイにも書いていますので、ご興味のある方はどうぞ。

いまだ一斉休校していないスウェーデン、その理由とは 在住翻訳家のママが語る

スウェーデンの独自コロナ対策、キーワードは「信頼関係」か

コロナ禍でスウェーデン政府への「大批判」が「信頼 」に変わっていった4つの理由

今回のコロナで、各国の強みと弱い部分がはっきり浮き彫りになった気がします。自分の住んでいる国なのに、今までうやむやにしてちゃんと学んでこなかったことを、これを機会にしっかり見つめ直したいと感じるようになりました。オンラインでのコミュニケーションが活発になったことにも背中を押され、今まではお名前は存じ上げていただけの、スウェーデンの各分野にくわしい日本人の方々に連絡をとり、ご意見をうかがったりもしました。なかにはみなさんとシェアしないともったいなさすぎる! と思うようなやりとりもあり、機会を見つけては記事として発信するようになりました。

たとえば、今回スウェーデンは高齢者の死亡率が非常に高かったのですが、それがなぜなのかをカロリンスカ大学病院の泌尿器外科の医師をされている宮川絢子先生にうかがい、記事として公開しています。

スウェーデン新型コロナ「ソフト対策」の実態。現地の日本人医師はこう例証する

ほかにも環境にくわしいジャーナリストの方にお話をうかがったり(記事は今後公開予定)、この週末には教育・人権に関する座談会も拝聴させていただいたりしました。他国に住んで子育てをしているライターさんたちともネットワークを作り、いっしょに発信するプロジェクトも進めています。

というわけで、自宅に閉じこもっているわりには、学びの量が今までよりも格段に増え、刺激を受ける毎日です。今後もどんどん発信予定ですので、ご興味があればわたしのTwitter (@yokokuyama)をフォローいただければと思います。


久山葉子(くやま・ようこ):翻訳家、エッセイスト、日本語教師。スウェーデン中部のスンツヴァル在住。