コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(2)バングラデシュ

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バングラデシュ(人口1億6,365万人)

大橋正明

①新型コロナウイルス感染について、いまはどうなっていますか?

最近のバングラデシュでは、新規感染者の数が3,000人前後で推移し、これまでの感染者総数は数日前にパキスタンに追いつき世界15位の30万6,794人となっている。ただ、これまでの死亡者数は4,174人、死亡率が1.4%で異常に少ない。これは、人口の平均年齢が約25歳という若さが背景という指摘があるが、インドのそれはもっと高い。下の図にあるように、第一波がピークは少し過ぎたが、ずるずると高止まりが続いている。医療現場は、医師が新型コロナ対応で忙殺されるか、その感染を恐れて仕事に来ないかで、他の病気の患者の多くも困難な医療状況下にいる、という記事がしばしば登場する。

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/COVID-19_pandemic_in_Bangladesh

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

教育:ダッカ大学はオンラインで、7月から授業再開したとのこと。他の私立学校は不明だが、公立学校は9月、あるいはそれ以降まで閉鎖が続く予定。

移動:以前は感染者が集中するホット・スポットを特定してそこを閉鎖していたが、最近はその話を聞かない。飛行機の国内線などは飛んでいないが、長距離バスなどは動いている。休業要請は、今はされておらず、経済優先へ。それでも貧困者数が増えたという記事ある。

③外国への出国、外国からの入国についての制限はありますか?

入国後、14日間の自宅隔離を求めている(政府は公的費用での隔離はしていない)。また入国時にPCR検査結果の提出を求めている。外国との飛行機便の多くがキャンセルされ、日本とは中東経由の飛行機を使う場合が多い。したがって、出国も不可能ではないが、数は限られている。

④国や自治体からの援助はありましたか、あるいはありますか?

当初(4月頃)、500万人の貧困者に2,500タカ(日本円で3,250円程度、労働者の日当が500タカ位)携帯電話を通じて支給される、という支援が政府によってなされた。しかしこれには多くのインチキが見られた、という報道も多い。

⑤日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください

日本関係の企業や組織は、スタッフの在宅勤務を続けているところが多い。大使館員とJICAの幹部スタッフは残っているが、JICAの専門家やその家族も当面はバングラデシュに帰国できない。縫製工場などの多くの製造業は、稼働している。

⑥近況について、ご自由にお書きください

Vaccine Nationalismが世界的に跋扈し始め、HIV治療薬が知的財産権保護のためにアフリカなどの貧しい人々に長期間供給されなかった愚を、今回も繰り返さないかが、目下の最大の関心事。国際的には、COVAXやACT-Acceleratorなどが立ち上がり、国際協調路線を推し進めているが、米国や中国、インドなどが、これを機会に自国の影響力を高めようとするだろう。資金難のバングラデシュは、中国とインドと交渉し、自国民のワクチン確保に努めている。どこかの国みたいに、ワクチンの確保でカネの力を使わず(使えず)。

一番心配していたロヒンギャ難民への感染だが、爆発的感染は公式には記録されず、安定した状態。バングラデシュ政府は、これは対応をきちんとしたからとしているが、一部報道は、難民がコロナに感染すると、恐れているボシャンチョール島に隔離されるからといった理由で、積極的に検査や治療を受けていない、という指摘もある。実態は不明。

都会でリキシャ引きや家事手伝いなどのインフォーマル部門で働いていた貧しい人たちの多くは、収入を失い、家族と故郷に帰った模様だが統計はない。今のところ、農村部の豊かさがこの人たちを支えているよう。しかしこれからの洪水やサイクロンなどの大災害で農業も大被害を受けると、大規模な飢餓などに発展する可能性も否定はできない。以下の記事をご参考に。
https://www.thedailystar.net/frontpage/news/extreme-poverty-may-hit-100m-1948861


大橋正明(おおはし・まさあき):聖心女子大学教授、聖心女子大学グローバル共生研究所所長、シャプラニール監事、日本バングラデシュ協会会長