コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(20)デンマーク

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デンマーク(人口約580万人)

針貝有佳

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2021年6月上旬現在、北欧デンマークの感染状況は局地的な増加はあるものの、全体的には落ち着いています。2020年冬に感染が急増しましたが、12月~2021年3月の厳格なロックダウンで収まりました。4月には慎重にロックダウンの段階的解除を始め、5月には社会が大きく開き、街には活気が戻ってきています。

新規コロナ感染者の状況(2020年春〜2021年6月上旬) 新規感染者数:2021年6月3日 1028名、最近1週間以上の1日平均960名

新規コロナ感染者の状況(2020年春〜2021年6月上旬)
新規感染者数:2021年6月3日 1028名、最近1週間以上の1日平均960名

次に、ワクチンについて。

デンマークのワクチン接種は2020年12月に開始し、現在、2021年6月初めには国民の38.7%が1回目の接種済み、22.5%が2回目接種を済ませています。老人ホーム入居者・リスクの高い病気を抱えた人・85歳以上の高齢者・医療や施設関係者などからワクチン接種が始まりました。

高齢者から順番にワクチンを接種し、現在は65歳以上のワクチン接種がほぼ完了して、40代のワクチン接種が始まったところです。ただ、若者が感染源になることが多いので、現在、若者のワクチン接種も同時に進めています。若者のワクチン接種は10代後半が第一優先で、その後20代前半、20代後半と続きます。今、ちょうど20代前半のワクチン接種が始まったところです。夏には上記該当者の大半が、9月には(接種を希望しない人以外は)全員がワクチン接種完了の予定です。

②現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

2021年4月、段階的ロックダウン解除とともにコロナパスポート制度が導入されました。コロナパスポートとは、ワクチン接種済み・感染から回復済み・72時間以内の陰性結果(PCR検査及び抗原検査)を証明するパスポートのことを指し、携帯電話の専用アプリで表示できます。飲食店・美容院・文化施設などを利用する場合にはコロナパスポートの持参が義務づけられています。

コロナパスポート制度はデンマークでは上手く機能しているように感じます。その理由として、検査を無料で簡単に受けられるという点が挙げられます。PCR検査は事前にオンラインで日時場所を指定して予約します。多くの場合、大きな仮設の検査会場で非常にシステマチックに迅速に検査が行われ、たとえ行列ができていてもあまり待たずに検査を受けることができます。抗原検査は予約も不要で、検査会場に足を運べばその場で受けることができ、15~30分以内に結果が確認できます。手軽な無料検査のおかげでデンマーク国民がこれらの検査を受ける率は非常に高く、コロナパスポートも普及しています。

ちなみに、私の場合、普段会わない人に会う際にのみ念のため検査を受けており、今までにPCR検査と抗原検査を合わせて約10回受けました。けれど、デンマークには私よりもはるかに多く検査を受けている人がたくさんいます。とくに、職業柄、日常的な検査を欠かせない人も多く、そういった方は検査を受けることがルーティーン化しています。

また、職場や学校で感染者が出た場合は、該当部署や学年を一時閉鎖して全員に検査を義務づけるなど徹底した対策を行っているので、安全性は高いように感じます。

③変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

2020年の秋冬に再び感染者数が急増し、変異種への懸念もあったことから、12月から厳しいロックダウンが行われていました。寒くて暗い冬、ショップはクローズし、街はゴーストタウンのような雰囲気でした。また、在宅ワークや在宅学習ばかりで人に会うこともできず、若者をはじめとする国民のストレスは限界に達していました。

3か月半にわたるロックダウンの後、4月上旬のイースター休暇明けにやっと慎重に段階的なロックダウン解除が始まり、4月から5月にかけて大きく社会が再開しました。現在はショップも飲食店もオープンしています。ショップに入るためにはマスク着用義務がありますが、コロナパスポートは不要です。飲食店も屋外はコロナパスポート不要なので、晴れた日にはテラス席が多くの人で賑わっています。また、飲食店の中もコロナパスポートを持参すれば入れるので、ちらほらとお客さんが入るようになっています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

12月中旬から2月上旬まで低学年の子ども2人がずっと在宅だったときは本当に大変で、どうなることかと思いました。ただでさえ昼が短く寒い冬、先が見えない暗さと不安感がありましたが、今は子どもたちも学校に通い、街に活気が戻っているので、とても嬉しいです。デンマークでは検査率が非常に高く、ワクチン接種の見通しが立っていることもあり、明るく夏休みを迎えられそうな予感がしています。

ただ、海外在住者として気になるのが「日本に気持ちよく帰国できるのはいつになるのだろう?」ということです。そろそろ日本の家族・友達・温泉・美味しい和食が恋しくなってきました。一刻も早く状況が落ち着き、安心して一時帰国できる日が来ることを願っています。

我が家の庭テント。お天気の良い日にはテントで寝ています

我が家の庭テント。お天気の良い日にはテントで寝ています


針貝有佳(はりかい・ゆか):デンマーク語の翻訳者、ライター。デンマーク・ロスキレ在住。ホームページhttps://www.yukaharikai.com