「大丈夫ですよ」(セミナー第2回)

12年前にリベルを立ち上げて最初の仕事は、韓国本のリーディングでした。
『冬のソナタ』というドラマが韓国で話題になり、日本でも近々放映されるというので、そのノベライズ本を読んでくださいという依頼です。

残念ながらレジュメを依頼してきた出版社さんは版権を取得されませんでした(その後、日本でも『冬のソナタ』は大ヒット、ノベライズ本もベストセラーになったことはご存知の方も多いと思います)。

ですが、このドラマがきっかけとなり、日本で韓流ブームが起こります。
弊社でもこれまで数々の韓国本を手掛けてきました。
その第一作は、日本で映画も話題になった「シルミド」の原作本。

シルミド 表紙

今からおよそ50年前、韓国の朴政権は囚人ややくざ者を集め、北朝鮮に対する暗殺部隊を組織することを計画。そして「シルミド」島で密かに訓練を始める……。

実話をもとにしたこの小説の翻訳を依頼してくださったのは早川書房、担当編集者は山口晶さんでした。
ネクタイ姿の編集者さんがほとんどの早川書房のなかで、山口さんだけはいつもポロシャツやカッターシャツ。爽やかなのは服装だけでなく、どんなときも動じず騒がず、穏やかに仕事を進めます。

あるフランス小説の翻訳を依頼されたときのこと。原書の中に著者の手書きの手紙があり、それが判読できないなど、どうしても著者に質問しないと翻訳できない箇所がいくつかありました。山口さんからエージェント経由で著者に質問メールを送っていただきましたが、再校を戻す2日前になっても返信がきません。

さすがに焦って相談したところ、山口さんはあわてる様子なく「そろそろ来ますから大丈夫ですよ」とおっしゃいました。その根拠をしつこく質問すると「いや、なんかそんな気がするんですよねえ。だからきっと大丈夫です」ときっぱり。

果たして翌日、著者から返信がきました!

それ以来、山口さんの「大丈夫ですよ」のひとことにしょっちゅう助けられ、これまで弊社では早川書房の書籍を7言語から合計80冊以上翻訳させていただきました。

翻訳セミナーの第2回目は、その山口さんに

・翻訳作品の選び方、今後の傾向
・翻訳者選びの決め手、また依頼したくなる翻訳者とは?
・翻訳原稿、これだけは困ることは?
・フィクションとノンフィクションの違い
・書籍翻訳をめざす人へのアドバイス

などを具体的におききします。
質疑応答の時間もたっぷり設ける予定です。

いまや早川書房の書籍の統括部長になられた山口さんがどんな風に答えてくださるのか、今から楽しみです!
(Y)