アメリカ合衆国(人口約3億2,700万人)
N.K.
①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
前回のアメリカレポートを執筆した5月11日の時点では、アメリカ全土のコロナウイルス感染者数は134万人、死亡者は8万人を超えたところだった。3月下旬に20以上の州で出されていた外出禁止令などの規制もその頃から段階的に緩和されはじめ、5月中旬には全米50州で経済活動が再開された。あれから3か月以上過ぎた8月22日現在のアメリカ全土の感染者数は566万人以上、死亡者も17万6,000人を超えている。当初、爆発的に広がったニューヨーク州でのウイルス感染拡大は落ち着きを見せているが、その後、とくに南部や西部地域での感染者が急激に増え、7月には各地で再び経済活動を制限する動きが広まった。
②国や自治体からの規制や制限はありますか?
現在、日本からアメリカへの渡航者は入国から14日間ホテルなどの宿泊施設での待機を命じられている。アメリカ国内でも渡航制限を設けている地域があり、ニューヨーク、ニュージャージー、コネティカットの各州政府は、感染が拡大している33州と2地域からの入州制限を導入、それらの地域からの渡航者には14日間の自己隔離を義務付けている。
規制や制限は自治体によって異なるが、私の住む州でもレストラン店内での飲食は定員の25%までに制限されており、屋外にテントやテーブルを出して営業しているところも多い。また、すべての公共の場でのマスク着用を義務化しているが、アメリカではマスク着用に抵抗感を持つ人もいまだ多いらしく、マスク着用を拒否して騒ぎを起こした人の動画がメディアで取り上げられ、「マスク論争」という言葉も聞かれる。それでも、私が見る限りでは買い物などの際にマスクをするのは日常となっており、サージカルマスクや布製手作りマスク、応援するスポーツチームのロゴ入りマスクなど、多種多様のマスクを着用した人を目にする。実際に私の勤める大学でも、希望者には大学のロゴ入りマスクを学生や教職員に配っている。
③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?
3月下旬に可決された連邦政府の緊急経済対策の一環として、年収7万5,000ドル以下の大人1人に1,200ドル、子供1人に500ドルの給付金が配られた。また、州が支給する失業保険給付に週600ドルの上乗せ、家賃滞納による立ち退きの一時禁止などの対策も講じられてきた。大恐慌直後の水準とまで言われた4月の失業率14.7%は、その後の経済活動再開により改善が見られ、8月7日に発表された失業率は10.2%となった。しかし、依然として経済的影響を受けている人が多く、とくに貧困層への支援が求められている。追加経済対策をめぐっては与野党の対立が続き協議が難航していたが、8月8日にトランプ大統領が大統領令に署名し、7月に適応期限が切れていた失業保険給付の上乗せ措置の復活、学生ローンの利払い免除延長などの経済対策を実施すると発表した。
④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください
新学期が8月から9月にかけて始まるアメリカでは、学校再開に関する議論が高まっている。K−12と呼ばれる幼稚園年長から高校までの学校現場では新学期を前に、教室での対面式授業、リモート式のオンライン授業、そして、その両方を取り入れたハイブリット式授業のいずれかの方法で学校を再開するかという判断を迫られているが、子供たちを学校に通学させるかどうかの最終的判断は保護者に任せるところが多いようだ。しかし、健康上の不安から教職を辞する教員も多く、対面式授業再開に反対する教師らが各地で抗議活動を起こしているというニュースも報道されている。
大学でも授業再開に向けた対応に追われている。私の勤める大学でも新学期が始まり、学生たちもキャンパスに戻ってきているが、大学寮でも密を避けるために入寮できる人数を制限し、部屋が足りない分は大学が近隣のホテルをいくつか借り上げて寮として利用している。 ハイブリット式授業が取り入れられることになったが、教職員たちはできる限り在宅勤務を続けるよう指示されており、実際にはほとんどの授業がリモートで行われ、学生たちも寮やホテルの部屋、またアパートや自宅からリモート授業を受けている。
⑤近況について、ご自由にお書きください
アメリカではこの3か月間で、ウイルス感染拡大だけではなく、人種問題をめぐる社会運動も活発化し、治安や秩序といった面でも不安定な状態が続いている地域が多くある。経済活動、教育現場、そして日々の生活におけるコロナウイルス対策をめぐる議論も政治的問題に発展しており、11月に行なわれる大統領選挙も控え、不安定要素を多く抱えている気がする。
N.K.:大学講師。アメリカ東部在住。