スロヴェニア(人口約206万人)
木村高子
①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
スロヴェニアでは5月中旬に流行終息宣言が出され、さまざまな制限も解除されましたが、6月下旬から感染者数が再び増えはじめ、現在は1日あたりの感染者数が二桁台になっています(総人口200万人の国では、これは決して少ない数ではありません)。第一波では、高齢者施設での感染拡大が大問題になりましたが、対策を講じたおかげで今回はそんなことはなく、むしろ若者の比率が高いことが特徴とされます(そのため、少なくとも第二波の死亡率は下がっています)。
②国や自治体からの規制や制限はありますか?
6月に入ってから、すべての海外渡航の中止勧告が引き下げられ、中旬には、国際線を含む旅客交通が再開されました。国内の移動制限もまったくありません。スロヴェニア政府は諸外国を、往来自由国(緑)、2週間の自主隔離が必要な往来制限国(赤)、そのどちらでもない国(黄:スロヴェニア国民及び永住権を持つ外国人がこれらの国からスロヴェニアに入国した場合は、自主隔離義務が免除される)に色分けしています。最近では、南の隣国クロアチアをはじめとするバルカン諸国で感染者が急増しており、8月20日からクロアチアも「赤」に指定されました(他に、ボスニア、マケドニアが「赤」に指定されています。30日には、セルビアが「赤」から「黄」に変更されました。同じく国境を接するイタリア、オーストリア、ハンガリーは「緑」)。クロアチアの海岸でバカンスを過ごすスロヴェニア人は非常に多いので、これは大問題です。
国内でも、特にクロアチアからの帰国者の間で感染が増大しています。国内のほとんどの店が営業再開し、第一波のときに禁止されていた大型店舗の日曜営業も解禁になりました。医療機関も、急ぎでない検査などはずっと延期になっていましたが、いまでは再開しています。500人までの集会も解禁されましたが、その後に感染者数が再び増加したため、許可人数が引き下げられました。一方、室内でのマスクの着用義務については、第一波以来、ずっと続いています。
③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?
すべての大学生に対して一時金の給付がありました。また自営業者は、収入が大幅に減少した場合、給付金を受け取ることができます。観光業支援のため、全国民、及び永住権を持つ外国人には、一人当たり200ユーロのクーポンが支給され、年末までなら国内のホテルやキャンプ場で使用できます。我が家もこれを利用して、海岸地方で数日過ごしてきました。なお、その間に日帰りでイタリアに行きました(7月下旬)が、国境検査などはまったくありませんでした。
④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。
町の様子はほとんどコロナ以前に戻りました。少なくとも屋外のカフェやレストランはどこも満員です。アジア系の団体観光客は完全に姿を消しましたが、フランス語やドイツ語を話す観光客はたくさん見かけます。店に入る時のマスク着用と消毒液使用を除けば、コロナのことを忘れてしまいそうなくらいです。ロックダウン中は、町はまるでゴーストタウンのように閑散とし、店に入る時も店員がマスク着用と消毒液の使用を見張るなどピリピリした雰囲気を感じましたが、現在はそんなことはまったくありません。ただし、寒さが厳しい季節になったら、屋外で過ごすのは難しくなるでしょう(知人を自宅に招いたり招かれたり、というのは、今のところ控える人が多いようです)。
小中学校と高校は9月から通学が再開されましたが、大学だけは、現時点で授業再開の見通しは立っていません。
バカンスシーズンの7~8月は、③で述べたクーポンを利用して、多くの人が国内旅行をしていました。今年の特徴としては、可能な限り飛行機の使用を控える人が多いようです。
⑤近況について、ご自由にお書きください。
前回のレポートに書きましたが、スロヴェニアでは5月から、毎週金曜日に反政府デモが行われてきました。当初は三密を避けるために自転車に乗ってぐるぐる回るだけでしたが、それも6月以降は政府機関の前に(自転車なしで)集まる形で、現在も続いています。政府に対する不満はさまざまですが、最近では、②で述べたクロアチアの「赤」指定が遅すぎたと考える人も多いようです。
8月いっぱいでバカンスシーズンが終わり、クロアチアの海岸で休暇を過ごしてきた人たちが戻りつつあります。スロヴェニアはクロアチア、セルビア、ボスニアなどのバルカン諸国と歴史的に深い繋がりがあり、いまでも多くの往来があるので、国境を閉鎖するわけにはいきませんが、今後、それが原因で感染者数がさらに増えないか気がかりではあります。
木村高子(きむら・たかこ):英語・フランス語・スロヴェニア語翻訳者。スロヴェニア・リュブリャナ在住。