コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(4)ネパール

ネパール(人口約2,919万人)

勝井裕美

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

2022年の年明け後、感染者数が急増し、1日の新規感染者数が1万2,000人となったり、陽性率が5割を超えたりする日もありましたが、1月下旬には減少しはじめました。3月19日の1日の新規感染者数は17人(PCR検査と抗原検査の陽性者数合計)、陽性率は1%を切り、死亡者数ゼロ日も1週間続いています。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

年明けの感染者数急増時には郡(日本の都道府県に相当)ごとに学校での授業が禁止され、行動規制が課されました。その頃、ネパールは結婚式シーズンでしたが、結婚式をはじめとする集会等の人数制限、ホテルやレストランでは収容人数の半数以下での営業、バスの運行禁止、国内線の空港でのワクチン接種証明書の提示義務などが定められました。また一時期は、日付が偶数日にはナンバープレートの末尾が偶数の車だけが走ってもよいという車両規制ルールも導入されました。しかし、こうした規制のなかで、スーパーマーケットやレストランでのワクチン接種証明書提示などは、実際にはほとんど行われていなかったように思います。

その一方で、市役所などの行政機関を訪れる時にはワクチン接種証明書を提示しなければならないというルールが課されたため、これまで接種を後回しにしていた人が急いで接種をするという現象も起きました。

しかし、思いのほか早く感染者数が減ったこともあり、1月末頃から徐々に規制が緩和され、2月13日からはワクチン接種が完了した12歳以上の子どもを対象に学校が再開し、3月5日にはすべての行動規制が解除されました。政府は現在、マスク着用といった、国民ひとりひとりができる感染対策の実行を呼びかけています。

エベレスト街道の感染対策を呼びかける看板(2021年12月)

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

国民全体の約64%、18歳以上の約81%が2回の接種を終えています。一方で3回目の接種は184万回と国民全体の6.3%に留まっています。ネパール政府は4月中旬までに18歳以上への2回接種を完了する計画ですが、昨年のワクチン接種開始当初に比べると接種率の伸びは鈍化しており、計画が達成できるかどうかはわかりません。

鈍化の理由としては、ワクチンの供給量は足りているものの山岳部の遠隔地への供給体制やそのための人員が整っていないことや、感染者数が急速に減ったことで人々のワクチンへの関心が低くなったことが言われています。 しかし、首都カトマンズに暮らす私の所属団体のネパール人職員たちは第3回目の接種が始まると情報を交換して早々に接種していました。ですから、気軽に近所で摂取できるのであれば、誰でも接種したい気持ちはあるのではないかと思いました。

ワクチン接種の行列(2022年1月)

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

ネパール政府は2020年を観光年と定め、外国人観光客200万人を目標としていました。ですが、新型コロナウイルスの世界的流行により、この計画は雲散霧消し、それから2年が経過しました。100万人以上が観光関連業界で働くという観光立国のネパール。現在、外国人観光客を呼び戻そうと、3月5日に入国制限を大幅に簡素化し、2回以上のワクチン接種証明か72時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書の提出で入国後の隔離義務などがなくなりました。最近では、欧米やインドからと思われる人たちを町や空港で見かけることも少しずつ増えています。ヒマラヤの緑の中に色鮮やかなトレッキングウェアにリュックを背負った人たちが行き来する風景が早く見られるようになってほしいものです。

エベレストへの入り口の街ナムチェも閑散としている(2022年1月)

勝井裕美(かつい・ひろみ):NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会(https://www.shaplaneer.org/)ネパール事務所長。ネパール・ラリトプール市在住