コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(5)中国

中国(人口約14億人)

高希

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

2022年3月20日現在、中国の国内感染者数は累計で1万8,586人います。そのうち、市中感染者は1万6,530人で、入国者の感染は2056人です。中国の市中感染者数は2020年3月から1日100人程度に抑えられてきましたが、現在は海外からの感染者の入国やオミクロン変異株の影響で、増加傾向にあります。とくに吉林省、上海市や深セン市などでは感染者数が多く、日常生活に支障が出てきています。該当地域では公共交通機関の一時停止や感染者が住む団地住民全員に対し少なくとも七日間の自宅隔離を義務づけるなど日常生活が制限されています。専門家は多くの地域で集団感染が発生している原因の一つとしてオミクロン株の感染力の強さと、症状が出にくく発見が難しいことを指摘しています。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

中国全土で「ゼロコロナ」対策を実施しています。これは「感染者ゼロ」を指しているわけではなく、感染者の発見、診断、隔離、治療を最大限早期の段階で行うことで、継続的な市中感染を阻止することを目標としています。この政策は今後も続くと予測されています。感染者がいない都市では、交通機関を使うときにマスクの着用を義務づけられている以外、ほとんど規制なしで生活を送ることができます。一方、集団感染が発生した都市の市民には多くの制限が設けられています。

例えば、ビッグデータなどの技術により感染者と同じ場所に滞在したと判明した場合、該当者にメッセージを送り「健康コード(*)」を「感染リスクが高い」ことを意味する黄色に表示し、さらにPCR検査と一週間の隔離を義務づけています。一緒に住む家族も同様に管理されます。もし濃厚接触者と判断されたら、同じ職場の人までPCR検査と在宅隔離が要請されます。集団感染の規模によっては、交通機関の一時期停止や映画館の休業、学校のリモート授業、全員PCR検査を義務づけるなどの厳しい規制や措置がとられることもあります。

また、ある都市では市中感染が発生したら、市民の「健康コード」に星マークが表示されます。移動先によっては、立ち入り拒否や、PCR検査陰性の証明と到着後七日間の在宅隔離を義務づけられることもあります。それ以外に、新規入国者に対しては、二週間の集中隔離と一週間の在宅隔離を義務づけています。

以上のように、人々の移動は国内外を問わず不便な状況に陥っています。「ゼロコロナ」対策を実行し続けるかぎり、この状況は変わらないかと思います。

列に並んでPCR検査を受ける人たち

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

中国では、二回目のワクチン接種を85%の人が完了し、三回目の接種も35%の人が完了したと報道されています。政府は積極的にワクチン接種を推進しており、国家公務員や国有企業の従業員には三回目のワクチン接種が義務づけられています。国民もワクチン接種が自分ためになると認識しており抵抗を持つ人は少ないようです。ただ、中国国外ではファイザーやモデルナのワクチン接種後に、個人差はあるものの副反応として発熱の症状が出るのが一般的だと海外在住の友人から聞きました。しかし、中国製のシノファーワクチンは接種後ほとんどの人は何も副反応がありませんでした。私も三回接種を受けましたが、何の症状もありませんでした。これは少し謎だなと思います。

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

パンデミックはそろそろ終わるだろうと考えていましたが、中国の市中感染は2年ぶりにひどくなり驚いています。今年またコロナにより生活が制限される可能性があると考えるだけでストレスがたまります。一昨年と昨年はまだパンデミック前の生活に戻ることを期待しながら暮らしてきましたが、今年に入るとパンデミックや国際情勢の影響で期待する日常が戻ってこない可能性を受け入れつつあります。

日常に戻ることをただ待つだけではなく、様々な規制の中でどのようにして後悔がない人生を送るかということを考えて生活するようになりました。コロナの影響で悔しいことがあったとしても、その悔しさを人生の一部として受け入れるのも成長かなと自分を慰めています。

移動が制限される日々ですが、本や映画を満喫したり、実際には行けない遠方の地を想像しながら旅行の計画を立てたりして、今できることを楽しんでいます。あるとき、ふと「発見の旅とは新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ」という名言が頭に浮かびました。確かに、家にこもっていても、新しい目を養成するのにぴったりだと思います。今年はコロナの終息を期待せずに、無常の世界に適応できる能力を鍛えながら、パンデミックの中でも元気に生きていくと思います!

*健康コード:個人の移動履歴や位置情報などに基づいて、使用者の感染リスクを表示するQRコード。コードの色は三つあり、緑色は感染リスクが低い、黄色は感染リスクがある、赤は感染リスクが高いという区別です。

地下鉄や空港といった人が集まる場所に入るときには、健康コードの提示やマスク着用が義務づけられています

高希(こう・き):中日・中英翻訳者。中国南西部の四川省成都市在住