コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(24)オランダ

オランダ(人口約1728万人)

國森由美子

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

政府や国立の研究機関が提供している情報によると、新型コロナウイルスの新規感染陽性判明者数は2022年4月初旬に1日あたりの平均が10,000人を超えていましたが、その後減少し、4月22日現在では3,000人台となっています。

オランダでは、昨年2021年11月初旬、陽性判明者数が初めて10,000人を超えました。当時はちょうど南アフリカでオミクロン変異株の出現が報告された頃で、オランダでの主流はまだデルタ株でした。その後、1日当たりの新規陽性判明者数が最高の86,000人を記録した2022年2月時点では99%がオミクロン株に置き換わっていて、現在もオミクロン株が主流となっています。ちなみに、日本では同じオミクロン株でもさらに細かい型について取り沙汰されているようですが、オランダではそれは問題視されていません。

筆者の受けた印象では、今年3~4月にかけてはもう誰が感染してもおかしくはない状況でした。オミクロン株が主流になってからは子どもや10代の感染がひじょうに多く、わたしが直接やり取りをしているピアノの生徒たち(小学生)は、学校および家庭内の感染状況に日々ふりまわされ、大変そうでした。政府の規制により、家庭内感染が判明した場合、同居家族全員が5日間自粛生活をする、その後、最寄りのPCR検査会場で陰性結果が出れば通常にもどる、また、学校でもクラスに感染した生徒が出た場合、当人のみならず兄弟姉妹も5日間自粛、体調が悪くなければオンライン授業を受けるということが義務づけられた期間は、傍目から見てもかなり混乱状態でした。これはもちろん子どもたちだけでなく、教師にも当てはまるので、たとえば担任・副担任のどちらもが検査で陽性になってしまうと学級閉鎖にせざるを得ない状況になります。中学校以上の教育機関でも、生徒・教師そして各家庭の誰もがあれこれ苦労していたと思います。

自宅近くの小学校にて。休み時間の小学生たち
新緑に子どもの歓声が響いていました。平和な光景ですね

わたしの知人(70代)は、ブースター接種を含め3回のワクチンを接種済みにもかかわらず感染したそうで、そういう例はほかからもかなり聞いています。隣人(60代)も「PCR検査で陽性が判明した」とある日連絡をくれました。隣人は持病があるので、ブースター接種を含め常に早めにワクチン接種を受けており、「この二年、ほんとうにとても気をつけて過ごしてきたのに」と嘆いていました。幸い発熱はなく、頭痛と多少咳が出るくらいの症状で、ほどなく回復したそうです。これほどの感染力の強さなので、もしかしたらわたしも知らずに感染していたかもしれません……。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

現時点での規制や制限は限定的で、たとえばマスク着用義務に関しては、病院内や空港および機内などでは継続されていますが、それ以外の場、公共交通機関やスーパーマーケットなどの店舗内や屋内イベント会場、飲食店などでは3月下旬に廃止されました。

教育機関も今回のパンデミック以前とほぼ変わりなく対面授業をしています。そして、マスクの着用も含め、こまめな手洗い、ソーシャルディスタンス(オランダでは1.5m)すべてが3月下旬より義務ではなく推奨、つまりアドバイス(勧告)になりました。プロサッカーなどスポーツの試合もコンサートも人数制限はすでにありません。また、飲食店の営業時間の制限もなくなりました。

4月27日のキングスデー(国王誕生日)の祝日
水上カフェやボートの上で盛り上がる人たち

たくさん特設されていた保健所管轄の無料のPCR検査場もどんどん減っています。今後は各自必要に応じてセルフテストキットを購入、自己責任で健康管理をすることになります。このようになった理由のひとつとしては、オミクロン変異株では感染しても重症になることが少なく、また病院もなんとか逼迫せずに治療に従事できているということがあげられます。ただ、高齢者や持病のある方などは引き続き注意して過ごす必要があるでしょう。

オランダでは、昨年2021年春から夏にかけて規制が緩和されて感染も落ち着いたかに見えたのですが、それはやはり一時的に過ぎず、ウイルスは性懲りもなく変異もすれば蔓延もして、12月にふたたびかなり厳しいロックダウンになりました。その時期にロックダウンしたのは欧州で唯一オランダだけだったそうです。そして、感染者数が下がりきらないまま、規制は段階的に解除され、前述のとおり3月下旬にほぼ廃止となりました。ご存じのように、2月下旬からのロシアのウクライナ侵攻でEU圏内のオランダも大騒ぎになりました。これにより、コロナ問題と優先順位が入れ替わった印象もあります。

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

ワクチンの3回目のいわゆるブースター接種は、2021年11月から医療・介護関係者や高齢者から順に受けられるようになっていました。そもそもワクチン接種が始まった当初は2回接種でこのウイルス騒ぎが収まっていくだろうとの希望的観測があったわけですが、その後の感染症専門家たちの見解でブースターが推奨されたわけですね。そして、今ではさらに二度目のブースター接種(すなわち4回目の接種)も始まっています。政府発表の数字では、オランダの18才以上のブースター接種率は63.3%となっています。

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

上記いろいろ書きましたが、オランダの現状をいま一度簡潔に述べるとすれば、今回の新型コロナ感染症COVID-19については政府の判断でいわば強制終了した感があります。個人的にも、もちろんこのまま終息していくことを願っていますが、言うまでもなくウイルスがこれでなくなるわけではなく、今後はようすを見ながら気をつけて過ごしていくしかないのではと思っているところです。

キングスデーのライデンの街中のようす

またこの時期のオランダは5月休みというのがあり、外国へ旅行に行く人たちがとても多く、空港が大混乱となっています。KLMなどは地上勤務者の人員不足でフライトをキャンセルしたりもして、批判噴出状態です。以下、オランダ語のニュースのリンクです。いかに異様な光景か、雰囲気だけでもわかるかと思います。

https://nos.nl/artikel/2427132-topdrukte-schiphol-voorbij-maar-nog-steeds-lange-rijen-bij-incheckbalies


國森由美子(くにもり・ゆみこ):オランダ語文芸翻訳者、音楽家。オランダ・ライデン在住