コロナ終息に向けて:各国レポート最終回(7)スペイン

スペイン(人口約4694万人)

米田真由美

スペインには再び以前のように活気にあふれる日常が戻ってきました。そして、コロナ後の社会生活には多くの変化がありました。

まずはマスクの使用についてです。コロナ前には考えられなかったマスクの日常使用が一般的になりました。規制緩和によってマスクの使用は一部、医療機関等を除いて義務ではなくなりましたが、マスク着用の意義は浸透しており、違和感なく受け入れられるようになりました。

また、コロナの副産物としてオンライン化が進みました。リモートワークやオンライン学習が一気に広がり、対面で行われていたイベントや仕事もオンラインで行われるようになりました。これはポジティブな変化であり、選択肢の幅が広がったことを意味します。しかし、高齢者など一部の人々にとってはスマートフォンの利用が必須となり、課題も残っています。

さらに、働き方や生活に関わるサービスも変化しました。会社によっては完全出勤や一部リモートワーク、完全テレワークなど、さまざまな就労形態が存在しています。また、スペインは気候が良く、生活費が比較的安いため、外国からのノマドワーカーやワーケーションを受け入れる動きが活発化しています。

ビーチにあるカフェでノマドワーク

スペインはもともと観光大国ですが、コロナ後は外国からのノマドワーカーや観光客の受け入れ、さらに企業誘致に力を入れています。その成果として、コロナ後の渡航制限解除で国内外からの観光客は急増しました。しかし、その一方で賃貸アパートや学生用シェアフラットの多くは民泊(バケーションハウス)へ転換され地元市民や留学生向けの物件の供給が激減、家賃が高騰するなど、厳しい住宅事情が続いています。

また、コロナ後まで定着した変化としてデリバリーフードサービスが挙げられます。オンライン・デリバリーサービスは急速な成長を遂げ、一般家庭でも利用されています。しかし、これからも変化は続き、一部のサービスは形を変えたり淘汰されたりするでしょう。

もし再び、新型コロナウイルスのようなパンデミックが起きたら、スペイン社会はどうなるのでしょう?

スペイン人に尋ねてみましたが、彼らは明るく「今を楽しむことに集中しよう!」と答えます。コロナで辛い経験をした人々は涙を流したり悲しんだり助け合ったりしましたが、いつも明るさを失わず、喜びを共有しました。パンデミックが教えてくれたことはたくさんありますが、スペイン人の明るさは私たちに希望を与えてくれました。

活気の戻るイースター

パンデミックが終息しても、半世紀ぶりの世界的インフレによる生活費の高騰という新たな困難が存在しますが、それにもめげずにスペイン社会は前に進んでいます。

生きることを楽しむ、皆で共に生きる。それがスペインでの生活であり、私たちの未来への希望です。今、コロナ後のスペイン社会は明るさと変化が織りなす未来に向かって進んでいます。

地元民と各国からの観光客でにぎわう春先のビーチ


米田真由美(よねだ・まゆみ):スペイン・アリカンテ在住のコーディネーター・通訳者。アリカンテ大学語学教育センター勤務