チェコ共和国(人口約1065万人)
岡戸久美子
①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
第2弾のレポートを提出したあたりから感染者増加の兆候が見え始めていたチェコでは、その後感染が急速に広まり、2020年10月5日に非常事態宣言が発令されました。人口当たりの新規感染者数が欧州最悪を記録し、多少の規制緩和があったかと思えばすぐに規制が強化されるといったことを繰り返しながら、非常事態は今年4月の宣言解除まで188日間継続する結果となりました。
これまでの死者数は3万人を超えます。居住地区からの自由な移動の制限、夜間外出禁止、店舗や飲食店の営業停止などにより不自由な生活や経済的不安を募らせた人々がロックダウン反対デモを行ったり、警察と衝突したりといったニュースもありました。
今年3月にはコロナに感染して亡くなった方々を悼み、25,000もの十字架がこの石畳に描かれました。いまでもこのように、一部消えずに残っています。
しかしワクチン接種が功を奏したのか、感染状況が改善傾向にあるとしてこの4月から段階的に規制緩和が進んでいます。
学校は人数制限のためのローテーション授業の段階を経て、やっと全員が登校できるようになり、屋外のみ営業が許可されることとなった飲食店では早速たくさんの人々がビールを手に集っています(ただし利用者は陰性を証明する書類等を携帯する必要あり)。少しずつですが、やっと生活を楽しむにぎやかな声が聞こえるようになってきました。今度こそ終息に向かってくれることを願ってやみません。
②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?
2020年のクリスマス以降、医療従事者や高齢者など優先順位に基づき順にワクチン接種が進んでおり、現在、一般の40代の人々のワクチン接種予約が可能となっています。6月初めには16歳以上のすべての人が予約対象となる見通しで、接種費用は公的健康保険でカバーされます。
ただし、チェコの公的保険制度の対象とならない外国人長期滞在者(駐在員など)については5月末をめどに予約開始できることをめざしていまだシステムが改修中で、費用は自己負担となるようです。
現在チェコで認可されているワクチンは4種(ファイザー・ビオンテック、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソン)、接種するワクチンを自分で選ぶことはできません。
③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?
上述のように、規制は徐々に緩和されてきている段階ですが、国内全企業には週1回の抗原検査を全従業員に実施するよう義務付けられており、職場で家族以外の人と接触する場合は個人事業主でもその対象となります。(費用は保険負担)
現在は終了していますが、法定隔離が必要となった被雇用者への手当支給、FFP2などの防護マスク着用義務(通常のマスク不可)にともなう防護マスクへの付加価値税の一時的な免除などの措置もありました。
④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。
十分な検証がなされないままのワクチン普及に対する懸念の声もありますが、変異株の広がりなどで規制が極限まで強化されてゴーストタウンと化していた街に少しずつ活気が戻り、子どもたちの笑い声が聞こえるようになった背景にはワクチンの普及があるのでは、と個人的には感じています。とはいえ、こちらのワクチンは日本で認可されていないものもあり、どのワクチンを接種するか自分で選択することができないため、もう少し様子をみたいと思っています。
⑤近況について、ご自由にお書きください。
規制緩和がはじまり、やっと厳しい時期を乗り越えたのではという希望と喜びも大きいですが、改めて過去の各国レポートを振り返ってみると、まだまだこの先どうなるのかわからないといった不安はあります。
チェコでは昨年、第1波を封じ込めたとして夏のホリデーシーズンに観光を全面開放したことや、その後感染者が増えつつあるのを知りながらロックダウンを避け続けたことがひどい感染拡大を招いたのではという見方があります。どんな状況にあっても、気を抜いてはいけないのだと改めて感じました。まだまだ気を引き締めつつ、一刻も早くあらゆる地域の状況がよくなることを願うばかりです。
岡戸久美子(おかど・くみこ):英語翻訳者・通訳者。チェコ共和国プラハ在住。