コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(10)トルコ

turkey

トルコ(人口約8200万人)

西岡いずみ

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

第2弾のレポート以降、新型コロナウイルス検査結果陽性者数、発症者数は昨年12月初頭ごろまで増加を続けたが、その後、徐々に減少に転じ、今年2月21日には新規陽性者数6,546人、新規発症者数601人にまで抑えられました。

しかし再び増加に転じ、4月21日には新規陽性者数が61,967人とピークに達し、 4月22日には新規発症者もピーク数の3,128人となりました。その後の全土完全外出禁止期間を挟み、5月24日現在の新規陽性者数は7,523人、新規発症者702人で、これまでの感染者総数は519万4,010人、死亡者総数は46,446人となりました。

[注&お詫び:トルコ保健省のCOVID-19情報プラットフォームでは、2020年11月24日以前は、新規発症者数のみが公表されていました。そのため私の第2弾レポートまで新規感染者数としているものは、ここで言う新規発症者数のことです。今回のレポートとの間に齟齬が生じていることをお詫びいたします。]

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

昨年12月末に初めて中国製ワクチンが空輸され、今年1月13日に保健省大臣を筆頭に初の接種が行われました。医療関係者、次に65歳以上の高齢者へと接種対象が広げられ、5月24日現在、約12万人 (全人口の14.6パーセント)が接種を完了しています。

中国製ワクチン導入以降、ドイツ製、ロシア製などのワクチンが導入され、現在国産ワクチンも正式認可に向けて試験接種やさらなる開発が進められています。ワクチンの接種は無料で、国が運営する医療情報・診療予約ポータルから予約することになっています。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

昨年5月以降、基本的に65歳以上と20歳未満の人の日中の外出制限、すべての年齢の平日夜間・週末の全面外出禁止といった措置が、感染状況に合わせて変更を加えながら適用されていますが、ショッピングセンターを含め多くの業種の営業は許可されています。

ただし、飲食店については、禁止されていた店内店頭での飲食が3月初めに再開されましたが、1か月ほどですぐにまた禁止になりました。なお、出前、テイクアウトは許可されています。

飲食店の店内店頭での飲食が解禁になった3月頃の様子。パンダは中国人観光客に戻って来てほしいという気持ちの表れでしょうか

飲食店の店内店頭での飲食が解禁になった3月頃の様子。パンダは中国人観光客に戻って来てほしいという気持ちの表れでしょうか

4月13日に断食月(ラマダン)が始まった当初も緩い制限が続いていたのですが、感染者数の再度の増加、変異株の流入、断食月に伴う人々の往来増加の予測から、4月29日19時から5月17日朝5時(断食月明けの祝日の最終夜)までトルコ全土で全面外出禁止令が出されました。

全面外出禁止令が解除された現在では、平日21時から5時までと土日終日の外出は禁止されたままです。ただし、ワクチン接種をまだ受けていない65歳以上は平日日中10時から14時のみ外出可と、より厳しく制限されています。また、65歳以上と18歳以下は公共交通機関の使用が禁止されています。

一方、断食月前も現在も、多くの外国人観光客はPCR検査の陰性結果を提出すれば入国でき、さらに検査結果の提出義務がない国もあります。外国人は滞在期間中も外出規制の対象とならず、行動は自由です。マスク着用の義務は昨年の感染拡大初期から続いており、これは外国人にも適用されています。

国からの援助として目ぼしいものといえば、最近になって小規模の事業主(飲食店、理髪業、旅客輸送業など)に3,000~5,000リラの給付金が出されることが発表されました。学校に関しては、昨年9月からこれまでの間に、授業・登校形式、試験の有無や方法などの措置が何度も変更され、学生とその家族はかなり翻弄されています。

9月の新学年開始時、教室内の生徒の人数制限や登校日の減少という措置をとることにより、全学年の生徒が平等に通学できるような対策が講じられました。しかし、感染者数を抑え込むことができず、結局、小学1年生、中学高校の最終学年(8年生と12年生)のみ対面授業、その他の学年はテレビとインターネットによる遠隔授業に切り替えられました。さらに昨年11月以降、全学年の対面授業がなくなりました。

我が家の9年生(高校1年生)の娘は、平日毎日ほぼ9時半から14時半までZoomを介して授業を受けています。先生は自宅から授業を行うのですが、乳幼児をお持ちの先生も複数いて、子供がむずかるために授業が中断されることもあります。

先生であれ学生であれ、通常でも自宅で授業に集中するのは大変なのに、このように制御不能な理由による授業中断は、両者にとってますます大変だろうと感じます。ただ、時々そばで授業の声をもれ聞くだけの第三者にとっては、授業の合間に小さな子供の声が聞こえると微笑ましく感じます。ですから学生たちにとっても意外とホッと息がつける瞬間なのかもしれないと、思ったりもします。

子供たちがいなくなった学校の校庭でくつろぐウサギ! 以前はここで子供たちが走り回っていました

子供たちがいなくなった学校の校庭でくつろぐウサギ! 以前はここで子供たちが走り回っていました

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

政府はより感染力が強く、重症化しやすい変異株の広がりを報告し、注意を促していますが、今のところ医療機関の深刻な病床不足などは生じておらず、一般の人々も平穏を保っています。

都市部の住民は、外出禁止を含めた様々な制限の影響を大きく受けやすいと思いますが、比較的平穏な理由として、地方出身者の多くが自発的、あるいは失業によって(公にはパンデミック期間中の解雇は禁止されていますが)、一時的または完全に地元に戻ったことが考えられます。都市出身者も、日本の感覚からするとかなりの割合で(特別にお金持ちでなくても)別荘を所有しており、コロナの感染拡大以降、都市部を離れて例年より長い期間別荘に滞在しています。

また伝統的な家族形態がいまだに残っていることや、宗教による結びつき、相互扶助の考えが強いことも大いに関係していると感じます。以前書いたように、キスや抱擁を伴う挨拶の習慣はなくなりましたが、人々の精神的な結びつきや親愛感情は変わっていないように思います。

さて、これを書いているのは5月24日なのですが、政府は感染状況を鑑みながら、6月1日以降さらなる制限解除の意向を発表しています。街中ではコロナの影響で廃業した様々な店舗が目につく一方、私が住む地域の小さな商店街の中でさえ、新たに菓子店が開業したり、新しいカフェが開業の準備をしたりしています。テレビやネットでは、リゾートホテルのコマーシャルもよく目にします。

多くの人が政府の新たな発表を心待ちにしているのを感じます。昨年日本に帰れず、今年も帰れない私はというと、解除が進んだらカフェで友人とお茶をする、娘と少し遠出をするというささやかな夢を思い描きながら、室内エクササイズと趣味に没頭している毎日です。


西岡いずみ(にしおか・いずみ):主婦、ときどき翻訳者。トルコ・イスタンブル在住。