イギリス(人口約6665万人)
安原実津
①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
前回の第二弾のレポート以降、再び感染者が急増し、昨年の11月上旬から4週間限定のロックダウンがはじまりました。秋に入ってから感染者が増加した原因は、前回のレポートで書いた外食促進支援策にあるといわれています(実際、このキャンペーンが行われているあいだのレストランの混み方は尋常ではありませんでした)。
そして12月に入ってロックダウンが明けたと思ったのもつかの間、今度はイギリス型の変異株が猛威をふるい、ロンドン周辺のイングランド南東部はクリスマス前からまた事実上のロックダウン状態に。そのまま全国的なロックダウンに移行しました。
いまは感染状況の推移を見ながらロックダウンの段階的な緩和が行われているところで、つい先日(5月17日)、緩和は第三段階に進みました。今回の緩和では、レストランやカフェの屋内での営業がはじまり(屋外での営業は4月半ばに行われた第二段階の緩和から再開)、博物館や娯楽施設などの営業も再開されたので、集まることのできる人数にまだ制限はあるものの、ようやく以前の日常に近い状態が戻ってきたという感じです。
ピーク時の昨年12月29日には8万人を超えていた1日の新規感染者数も、ワクチンの接種が進むとともに一時は1,300人程度にまで減少しました。ただインド型変異株の影響で、最近の1日の新規感染者数は2,000人前後と、再び微増傾向にあるようです。
②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?
ワクチンの接種は昨年の12月上旬にはじまりました。まずは介護施設の入居者と介護従事者、次に80歳以上の高齢者と医療従事者への接種が行われ、その後は徐々に接種予約受付年齢を下げるかたちで接種が進められています。
いま(5月23日時点)は32歳以上が受付対象です。予約専用サイト、もしくは電話で1回目と2回目の接種予約を同時にとります。2回目の接種は1回目の接種の11〜12週間後ということになっています。1回目の接種をできるだけ早く進めるために、意図的にこの期間を長くしているのだそうです。5月23日時点では成人人口の72.3パーセントが1回目の接種を、43.5パーセントが2回目の接種を終えています。
私も1回目の接種を受けてきました。副反応の問題が取りざたされているアストラゼネカ社のワクチンでしたが、私の場合は少し体がだるくなった程度で、特にこれといった症状は出ませんでした。
③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?
少し前まで海外旅行は原則的に禁止されていて、3月末には特別な理由もなしに国外に出た場合には5,000ポンド(約70万円)の罰金が課されるという法律までできました。しかし今回の第3段階の緩和で海外旅行も解禁になりました。ただし、行き先がどこであれ再入国前のPCR検査は必須で、感染リスクが中程度の国から入国する場合にはそれに加えて10日間の自己隔離が、感染リスクが高い国から入国する場合には自己負担で隔離用のホテルに10日間滞在することが義務づけられています。
また、ロックダウンで休業した事業主への休業補償制度は、給付額に多少変更はあるものの、9月末まで延長されました。
④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。
インド型変異株の広がりを受けて、50歳以上の人の1回目のワクチン接種から2回目の接種までの期間が8~12週間に短縮されました。このような変化はありましたが、私の住んでいる地区ではいまのところ変異株の感染者の数が少ないせいか、日常生活での変化を感じることはありません。
⑤近況について、ご自由にお書きください。
今回の緩和で、観光客がいないことを除けば街の様子はほぼ元どおりになりました。現在の状態にたどり着くまでの期間は私にはとても長く感じられました。
今回は冬のロックダウンだったので、外でできることが夏よりいっそう限られていたからだと思います。ロックダウン中、真冬のテムズ川で泳ぐ強者もときどき見かけましたが、私には近所を散歩するか、「Lockdown loo(looはイギリス英語でトイレの意)」というインターネットのサイトで使えるトイレのある場所を確認して、たまにその近くに出かけるくらいのことしかできませんでした。
「Lockdown loo」というのは、ロックダウン中でも開いている公衆トイレがわかる私設サイトで、利用者からの情報で常時トイレの状況がアップデートされています。冬のあいだはずっと生活必需品を売る店以外の営業が禁止されていて、外出中に暖を取れる場所もなかったので、気分転換に家から少し離れたところに出かけるときには、このサイトを使って、開いているトイレのある公園などを選ぶようにしていました。
インド型変異株の影響で、6月21日に予定されているロックダウンの全面的な解除に遅れが出るかもしれないといわれていますが、もし予定どおりロックダウンが終わらなかったとしても、今回の第三段階の緩和でさまざまな屋内施設の営業が再開され、できること、行けるところの選択肢がようやく増えたところなので、いまよりも前の状態には戻ってほしくないというのが正直なところです。
安原実津(やすはら・みつ):ドイツ語・英語翻訳者。イギリス・ロンドン在住。