コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(13)スウェーデン

sweden

スウェーデン(人口約1023万人)

久山葉子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

※5月25日の時点の情報です。

予測されていたとおり、昨年秋からまた感染者が増加し、高校は12月からオンライン授業になり、可能な人は自宅勤務を推奨され、粛々と過ごしたクリスマスとお正月でした。しかし春になっても感染拡大は収まらず、むしろ拡大する一方で、自粛推奨も今までになく厳しいものになりました。

わたしが住む県ではとりわけ感染拡大がひどくて、ついに「お店や公共交通機関ではマスク着用」「一緒に住んでいる人以外とは会わない」という今まででいちばん厳しい推奨が出ました。感染拡大の原因はイギリス型変異株。感染力が強く、若者や子どもにも広まりました。一方で昨年末からお年寄りにワクチンを打ち始めたため、死亡者数はがくんと減りました。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

5月25日の時点で、ワクチンの一回目を打った人は全国で43パーセント以上になっています。県によってはもう60歳以下への接種も始まっています。接種順で言うと、60歳以下に打ち始める前に「あるグループ」を優先して接種するのがスウェーデンらしくて興味深いと思いました。そのグループとは「社会的弱者」。具体的にはホームレスや刑務所に収容されている人たちです。つまりステイホームができない生活状態にある人々。絶対数が少ない(1万人強程度)ので、その人たちを優先することでワクチン接種の予定に大きな影響が出るわけでもなく、自分では声を上げにくい人たちの存在もしっかり認識している社会だなと感じました。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

PCR検査を受けやすくすることは、ロックダウンせずに感染拡大防止に努めるにあたって必須だと感じました。少しでも風邪の症状があれば、ネットで予約して普通はその日にはPCR検査を受けることができます。結果は48時間以内にネット上で確認できますが、わたしのこれまでの経験ではだいたい1日半くらいで結果がきました。

それにより、少しでも風邪の症状があれば絶対に職場や学校には行かない、しかしコロナ陰性であれば2日後には復帰できるという実際的なシステムができました。疾病休業も最低限ですむので、国にとってもメリットがあるのではないでしょうか。病気の人が無理をして出勤しないための予防策として、コロナ前は長く休むためには会社に診断書を出さなくはいけなかったのですが、今は2週間までは診断書なしで疾病休業を取ることができます。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

幸いここ数週間、やっと第三波のピークを越えて、街の様子はすっかりリラックスしています。暖かくなったこともあり、天気のよい日はカフェやバーのテラス席は人でいっぱい。みんなサングラスはかけているけれど、マスクはしていません。先日テレビのコロナ取材でバーのオーナーさんにインタビューをしたのですが、「みんな早い時間に飲みに来るようになった」と言っていました。

今は20時にはお酒の提供を終わらなければいけないのですが、その分お客さんの来店時間が早まったそうです。「おれももう夜中1時までなんて働けないよ~」と笑っていて、スウェーデン全体が早寝早起きの健康生活になったのかもしれません。コロナが終わったときのためにとルーフテラスを増築していて、未来への希望を感じました。もうあと少しで日常が戻ってくると信じています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

夏といえば例年は日本かイタリア(夫の実家)に帰省していたのですが、今年はどうなることやら。今の予定ではうちの県では、わたし(40代半ば)にも7月中には1回目のワクチン接種の順番が回ってきそうですが、それだと夏のあいだに海外旅行に行けるかどうかは微妙です。EUではワクチン証明カードのようなものも発行されるらしいですね。まだまだどうなるかわからない夏休みです。

(動画は街中のカフェの風景)


久山葉子(くやま・ようこ):翻訳家、エッセイスト、日本語教師。スウェーデン中部のスンツヴァル在住。