ポーランド(人口約3839万人)
岩澤葵
①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
第二弾のレポート以降、冬の到来とともに新型コロナウイルス感染者数は爆発的に増えました。2020年10月から11月にかけて新規感染者数が日に日に増え、11月半ばには2万人に達しました。予想もしていなかった感染者数が毎日のように続き、再度ロックダウンが発表されました。この第二波到来以降、最悪な状況がこの先半年以上続くとは、誰も想像していなかった、いや、想像すらしたくなかったでしょう。
その後クリスマスから年末にかけて、政府は外出や帰省、大人数でのパーティーの自粛を要請。年明けの直前に「国民隔離措置」という更に厳しい措置をとりましたが、あまり効果はありませんでした。
3月には1日の新規感染が3万人を超える日もあり、終息には程遠い日々が続きました。
今年の冬は毎日のように氷点下10度前後と過去数年と比べ気温が非常に低く、4月半ばの日中にも雪が降るほど寒さが長く続いて厳しかったため、これも感染拡大の一つの原因ではないかと言われています。
②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?
ポーランドでは医療従事者や教育関係者、続いて高齢者を優先して接種が開始されました。4月下旬からは一般市民の接種も始まり、これにより規制緩和が進むなど急速に変化が起きています。
一般枠の接種は電話やインターネットよる予約制で、基本的に誰でも受けることができます(対象者はPESELを所持していることが原則。PESELとはポーランド国民が所持する個人ナンバーで、外国人でも住民登録をすることで取得可能です) 。また基本的にワクチンの種類や接種する病院も選ぶことができるため、予約をして実際に受けに行くことについて、特にハードルが高いとは感じません。
年齢別に予約開始日が設定されていて、5月に入ると徐々に私の周りの若い世代(20代)も受け始め、ワクチン接種がより身近に感じられるようになりました。保健省によると (5月6日時点で)、約1,460万人(全国民の38%)が少なくとも1回目のワクチン接種を受け、そのうち750万人(国民の19%)が2回の接種を完全に終えています。
③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?
ワクチン接種の広がりと感染者数の減少によって、昨年から継続されていた規制が大幅に解除され、人々は日常生活を取り戻しつつあります。
5月28日から飲食店の店内飲食が可能となり、ショッピングセンターや映画館も営業を再開しました。学校での授業、コンサートやイベント等の集会も次々と再開されています。屋内でのマスク着用・ソーシャルディスタンスの確保・人数制限等、幾つかの制限は残るものの、パンデミック以前の生活に戻ったような気分です。
長く続いたロックダウンと厳しい冬がようやく終わり、みんな太陽の下へ繰り出して心地よいポーランドの初夏を楽しんでいます。
④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。
国民隔離措置の厳しい規制にも関わらず第二波の感染拡大が収まらなかったのは、クリスマス休暇前後のイギリスからの変異株流入が大きな原因とされています。この影響を受けて、その後、厳しい国境管理と入国後の隔離規制が追加されました。
このような状況下でワクチン提供は非常に効率的に行われ、規制の緩和に繋がったこともあり良い意味で期待を裏切られました(ポーランド政府のコロナ措置に対しての市民の満足度と期待度がそれほど高くなく、ワクチン提供の効率とそれによる規制緩和等の良い流れはより嬉しい結果となったため)。
今後ワクチンパスポートを所持していることが海外渡航やイベント等の入場条件となる可能性が高くなってきたこともあり、接種希望者は更に増えていくでしょう。
⑤近況について、ご自由にお書きください。
規制緩和を受けて延期に延期を重ねていたコンサートがついに実現し、私も1年3か月ぶりにお客さんの前でステージ上での演奏をすることができました。これまでオンラインコンサートや無観客開催をするなど、なんとか演奏の場を繋いできましたが、やはり観客を目の前にして、仲間と同じ空間で演奏するのとは全く違います。コンサート当日はたくさんのお客さんとオーケストラが音楽を通して一体となり、興奮と熱気に満ちた一夜となりました。
以前は当たり前に手にしていた喜びを改めて感じ、少しでも早く全ての日常が戻って来てほしいという思いです。
岩澤葵:クラリネット奏者。ポーランド・ヴロツワフ在住。