コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(23)スロヴェニア

slovenia

スロヴェニア(人口約208万人)

木村高子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

スロヴェニアでは2020年10月以降、再び感染者が急増して、第二波に突入しました。前回のレポート後の12月4日には新型コロナウイルスによる死者数は合計1,653名となり、いくつかの分析サイトによれば、人口10万人あたりの1日の平均死者数が世界で最も高い国、という不名誉な記録を樹立してしまいました。

2020年春の第一波の際には、隣国のイタリアやフランスなどと比べても、それほど深刻な影響は感じられなかったのですが、夏季バカンスから人々が帰ってきた秋から、事態は悪化していきました。しかしその後、年末からワクチン接種が順調に進み、現在では(6月上旬)1日あたりの新規感染者数も300人台まで減少し、落ち着きをとり戻しています。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

ワクチンは12月下旬に到着し、特に死亡率の高さが問題となっていた介護施設入居者、その職員、医療機関関係者などから接種が始まりました。続く数か月の間に高齢者は次々に接種を受け、また教育関係者も優先接種対象者とされたため、大学職員である夫も接種を受けました。

優先接種の対象者には、個別に連絡がきたようです。高齢者はもちろん、それより若い年齢層の接種も順調に進んでいるようです。5月に高校卒業試験がある若者も、4月から接種対象者となり、また5月6日には、誰でもワクチン接種を申請できるオンライン登録受付が開始されました。5月末の時点で、人口の約30パーセントが1回目の、16パーセントが2回目の接種を済ませています。

4月以降、ワクチン接種の進展とともに感染者数は減少し、政府は6月15日に、コロナ流行終息宣言を出しました。ただし、これで規制状況が劇的に変わるということはないようです。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

感染状況が深刻だった時期には、食料品店やガソリンスタンドといった日々の生活に欠かせない店以外は、レストランも含めすべて閉鎖されていました。また学校もオンライン授業に切り替わりました。ただ、町が文字通りゴーストタウンと化した去年の春に比べると、ロックダウン疲れなのか、人出はそれほど劇的には減少しなかった印象があります。

この4月以降、店舗も徐々に再開され、屋外で飲食する場合は特に規制はありませんが(もちろんソーシャルディスタンスはとりますが)、室内の場合は、陰性証明書、罹患証明書やワクチン接種証明書の提示が求められているようです。4月下旬には国内の移動制限が解除され、すべての地方間の移動が認められるようになりました。

四国ほどの大きさの国土が200余りの自治体に分かれ、行き来ができなかったというのは日常生活に影響する大きな問題でしたので、地方間の移動制限解除にはみんなほっとしています。5月下旬には、すべての国境でコロナ感染予防のチェックがされていたのですが、それも撤廃されました。規制緩和後も、お店や公共施設など、室内でのマスク着用義務は続いています。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

大学生の息子も入学以来、ろくに大学に行けないままオンライン授業に移行していましたが、ようやく4月から週3回ほど、大学で授業を受けているようです。

ドラッグストアなどの日用品を売る店舗は、規制が最も厳しかった時期にもずっと開いていましたが、その中の靴下コーナーだけは、ロープで立ち入りできないようになっていたのが、分類の厳しさを示しているようで驚きました。販売が許可される生活必需品に含まれるのは、食料品や医薬・衛生用品、燃料などだけのようです。

またつい最近制限が解除されるまで、友人たちとはオンラインでしか顔を合わせられませんでしたが、クリスマスやイースターなどには、人数を制限して親族が集まることが特別に許可されました。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

私自身は、実は1月末に実家の都合で日本に一時帰国し、現在に至っています(ですから最近の状況は直接経験していません)。前述通り、スロヴェニアではワクチン接種も順調に進み新規感染者数も減って、状況は好転していると感じています。もちろん、夏のバカンスシーズンに再び人の往来が激しくなればどうなるか、予断を許しませんが。

数週間後にはスロヴェニアに戻ることを考えています。スロヴェニアでは、日本からの入国者はPCR検査不要とのことですが、経由国ドイツは、たとえトランジットだけでも陰性証明書が必要なので、国際的な移動が不便な状況はまだ当分続くようです。

スロヴェニアに戻ったら、直ちにワクチン接種の予約を取りたいと思っています。スロヴェニアの状況を見ても、ワクチン接種の広がりとともに感染者数は大幅に減少したので、このまま世界の状況が落ち着いていくことを願っています。


木村高子(きむら・たかこ):英語・フランス語・スロヴェニア語翻訳者。スロヴェニア・リュブリャナ在住。