コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(25)マレーシア

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マレーシア(人口約3200万人)

橋本ひろみ

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2021年6月現在、マレーシアは新型コロナウイルス感染症の第三波が到来し、完全ロックダウン(社会・経済部門の完全封鎖)中で、私たちは非常に緊迫した状況の中で生活しています。

6月10日の時点での1日の新規感染者数は5,671人で、重症患者数は911人、そのうち呼吸器装着者は462人です。1日の死亡者数は73人で、累計3,684人となりました。以下のグラフは2021年6月10日時点におけるここ10か月間の1日の新規感染者数の推移です。

マレーシア3-1

マレーシアでは、ラマダンという1か月間の断食月の直後に、ラマダン明けを祝うイスラム教徒最大の祝祭であるハリラヤがあります。帰省したり、家族や親族、友人と集まって食事をしたりして祝います。今年は5月13日と14日で、もちろん様々な制限があったのですが、この祝祭を原因とするクラスターが多く発生し、5月28日に新規感染者数がついに8,000人を超え、陽性患者数が7万人を突破という事態に陥りました。

重症患者の受け入れに支障をきたすなど医療が逼迫していることから、マレーシア政府は6月1日より14日まで完全ロックダウンの期間を設け新規感染者を抑え込む対策を決定しました。その後更に2週間延長され、完全ロックダウンは6月28日まで継続されます。

知人や近所など私の身近でも感染者が出るようになり、かなり緊迫した状況が続いています。重症患者の治療に当たっている知人の医師によると、集中治療室のベッドも全て埋まっており、呼吸器も最後の一つを誰に着けるべきかを決定しなければならないほど、医療も逼迫しているとのこと。何としても感染者の増加を食い止めなければならない状況です。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

マレーシアではワクチン接種は任意であり、18歳以上の外国人を含むマレーシア居住者に対して無料で行われ、ファイザーやアストラゼネカなど現在6670万回分(人口109.65%相当)が確保されています。接種はほとんどが2回必要ですが、なかには1回で済むものもあります。

マレーシア国家ワクチンプログラムが2021年2月24日に開始され、来年の2月までに少なくとも2360万人の接種を終了する予定で、三段階に分けて実施されます。

第1段階は、2021年2月から実施され、政府・民間医療従事者や警察や食料品の販売などを行う日常生活に必要不可欠なサービスを行うフロントライナー。第2段階は、2021年4月から実施され、第1段階で接種を済ませていない残りの医療従事者や65歳以上の高齢者や心臓病などの基礎疾患を有する高リスク者など。第3段階は、2021年5月から2022年2月にかけて実施され、18歳以上の外国人を含むマレーシア居住者が対象となります。

数か月前までは、国の懸命なワクチン接種の呼びかけにもかかわらず、副反応への懸念などにより、特に地方で登録後のキャンセルが相次ぐなど、計画通りになかなか進んでいませんでした。ですが、感染状況がひどくなったこともあり、現在はかなり加速してワクチン接種も進んでいるようです。しかし、6月11日の時点では、1回以上の接種が終了した人は人口の9.2%、必要回数の接種が終わった人は人口のまだ4.1%で、予定よりもかなり遅れています。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

マレーシア政府は経済への影響を考慮し、検討を重ねてきましたが、歯止めのきかない新規感染者の増加を何とか食い止めるために、現在、完全ロックダウンを実施しています。基本的に不要不急の外出は禁止で、生活に不可欠な業種を除いた全ての経済・社会活動が停止されていますが、国際貿易省が許可した製造業などのエッセンシャルサービスに関しては操業できることになっています。レストランはテイクアウトのみ可能で、時間制限があります。

店舗や会社に入る前には、My SejahteraというアプリでQRコードをスキャンまたは手書きによる登録が必要で、入場前には体温測定が行われ、37.5度以上だと入場できません。顧客は半径1メートルの物理的距離を保つこと、さらに人数制限やマスクの着用といった厳しい条件があり、違反者には罰金が科されます。学校も全て閉鎖され、授業は全てオンラインで行われています。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

現在は完全ロックダウンの真っただ中にあり、ほとんどが在宅勤務です。ライフスタイルも日常の活動はオンラインが中心となり、外出や移動が制限されています。現在急激に感染が拡大し、感染の不安を感じながらも経済活動を止めるわけにはいかないという状況の中、人々のストレスは限界に近くなっています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

去年の感染が始まったころは、マレーシアは封じ込めが成功しているなどという話もありましたが、コロナウイルスが存在する以上、いつでもどこでも爆発的に感染が拡大する可能性はあり、どんな状況にあっても、徹底して予防していくほかないのではないかと思います。ロックダウンのおかげで、今は新規感染者数が減少傾向にはありますが、まだまだ時間がかかりそうです。

コロナをどう抑え込むかというより、どのように付き合っていくか、その中で最善の方法を生み出す力を私たちが持てるよう、進化していかなければならないと思っています。

ロックダウン中の道路

ロックダウン中の道路


橋本ひろみ:マレーシア、クアラルンプール在住。翻訳者、日本語教師