韓国(人口約5127万人)
小佐野百合香
①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
2020年末は一日の新規感染者が1,000人を超える非常事態だったのですが、それ以降は一日300~600人を前後している状況です。そのうち50%以上が首都であるソウルとその周辺地域である京畿道(キョンギド)に集中しています。
また去年8月のソウルにあるサラン第一教会を中心に起こったような集団感染は起きていませんが、会社や飲食店などでの小規模な集団感染が続いています。
②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?
韓国では2021年の2月末からワクチンの接種を開始しました。 当初は韓国政府がワクチン確保に後れを取っているというような批判が国内でありましたが、接種が始まってからは順調に進んでいるという印象です。
韓国には「住民登録番号」という国民に番号を割り当てる制度があるため国民の把握と本人認証が容易であること、あらゆる面でオンライン化が進んでいるためスムーズな予約が可能であることが順調な接種の要因だと思われます。
全ての人がホームページからの予約が可能ですが、デジタル機器に不慣れな高齢者の場合、コロナ予約専用のコールセンターからの予約も可能です。予約が済めば、決められた時間に病院に行き接種を受けるだけです。友人の母親がワクチン接種を受けた時は待機時間もほとんどなくすぐに終わったそうです。
また、ワクチンは1瓶あたり6人程度の接種が可能ですが、予約をキャンセルする人が出るとその分のワクチンを廃棄することになってしまいます。そのような「残余ワクチン」を照会することのできるシステムが導入され、韓国の無料通話メッセンジャーアプリのネイバーやカカオトークを通して予約すると接種を受けることができるようになっています。
現在(6月20日時点)、韓国では1500万人がワクチンの1回目の接種を済ませました。これは韓国の全体人口の29.2%に当たります。2回目の接種まで済ませた人は400万人で7.9%となっています。
7月からは幼稚園と小中学校の教職員、大学入試を控えた高校3年生とその教師の接種が開始し、26日からは50代、8月中旬からは優先接種対象を限定することなく18歳~49歳のワクチン接種が開始します。現在の接種のスムーズさから見て、予定通り進むだろうと思われます。
③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?
ワクチン接種の進行に伴い、7月からはソーシャルディスタンスの規制が改変されることになりました。ソーシャルディスタンス規制(or 防疫レベル)が5段階から4段階に引き下げられ、現在のように新規感染者が500人以上1,000人以下の場合、クラブや飲食店などは6人まで集合可能に変更され(改変前は4人まで)、7月15日からは8人までに緩和されます。
また、営業時間も夜10時までと制限されていたのが夜12時までとなりました。人数制限と営業時間の制限により大きなダメージを受けていた自営業者からの不満が高まっていたため、それに対する配慮もあると思われます。
12月から始まったマスクの義務化は変わらず、違反すると10万ウォン(1万円)以下の罰金が義務付けられています。
また国内での移動制限はありませんが、海外から入国する際には「陰性証明書」の提出と2週間の隔離が義務付けられており、違反すると罰金が科されます。
感染者に対する支援に関しては、先日、韓国人の友人がコロナに感染したのですが、治療施設と食事が2週間無料で提供されたそうです。また、感染者との濃厚接触者になった場合も2週間の隔離が義務付けられているのですが、水やインスタント食品などが家に届けられることになっています。
④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。
周りでも接種を済ませた知り合いがかなり増えました。接種が順調に進んでいることと、規制が緩和されたことで、少し先が見えてきたような雰囲気になっています。
ワクチン接種に伴い、今年の2学期からは幼稚園生から大学生まで対面授業が開始されるとの発表がありました。1年半のオンライン授業では授業の質も落ち、友人との交流が減ってしまうため、精神的につらい面もあったので嬉しい知らせとなりました。
しかし、ワクチン接種が進んでいるといっても感染の可能性が全くないわけではなく、韓国の保守団体や極右キリスト教団体がワクチン接種を否定するようなニュースを流しており、保守的な高齢者がワクチン接種を拒否しています。
また、3か月以上前のことですが、去年8月に大規模な集会を開いて集団感染を引き起こした団体が、3.1独立運動を記念する「3.1節」の時にも大規模集会を開こうとしたことが問題になりました。
⑤近況について、ご自由にお書きください。
私は去年の2月に日本に一時帰国して以来、1年以上帰国できていない状況です。帰国したい思いはありますが、陰性証明書の発行に数万円かかってしまうことと、夏休みの2週間を隔離生活に費やすのが嫌だったため帰国せずに韓国で過ごすことに決めました。
私も今年中には韓国でワクチンを接種できそうなので、年末に日本に帰国しようと思っています。残念ではありますが、コロナ禍でも韓国でできる楽しみを見つけて過ごそうと思います。
小佐野百合香(こさの・ゆりか):ソウル市立大学に在学中。韓国史学科 3年生。