コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(7)イタリア

イタリア(人口約6036万人)

アヤ・ナカタ

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

2022年3月24日現在、イタリアの大部分の州がホワイトゾーン(*1)になっています。サルデニア州のみイエローゾーンですが、3月28日からホワイトゾーンになることが確定しました。保健省の感染者数推移のグラフ(3月7日現在)(*2)を見ると、イタリアでは2022年1月中旬ごろに最後のピークがきて、その後だいぶ落ち着いていましたが、このところ再び感染者数が増えてきているようです。ピエモンテ州に関して言えば、2月2日からイエローゾーンになりましたが、3月7日、ホワイトゾーンに戻りました。

ホワイトゾーンになったとはいうものの、実生活、とくに学校などでは「先生がコロナになった」とか「生徒がコロナになった」という理由で学級閉鎖になっているところもあります。また「濃厚接触者なので出席できません」という生徒もいて、オンラインで対応するということもあります。というわけで、コロナが完全に鎮静化したという感じはしません。それよりも、「コロナに慣れてきた」「コロナと共生する」という方向に向かっているように感じます。

*1 イタリアはコロナの感染状況によって、州ごとにホワイトゾーン、イエローゾーン、オレンジゾーン、レッドゾーンに分け、それぞれのレベルに合わせた規制措置を講じている。ホワイトゾーンは安全と見なされ、外出制限はなし。色が濃くなるにつれて危険度が増し、レッドゾーンはロックダウンとなる。

*2 グラフ https://lab.gedidigital.it/gedi-visual/2020/coronavirus-i-contagi-in-italia/

毎日消毒(地下鉄の張り紙)

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

2022年の年明けあたりから、マスク着用の規制が厳しくなり、公共機関、教室などではFFP2マスクの使用が義務づけられています。薬局が便乗値上げをしないようにと、通達が出ましたが、わたしが最初に手にしたFFP2マスクは1枚2ユーロ(約270円)もして愕然としたものです。「こうなったら、使い倒すぞ」と、二重マスクで対抗しました。つまり、手製のマスクを内側にして(こちらは洗う)、外側はFFP2マスク(使いまくる)にしたのです。

現在、屋外でのマスク着用は免除されたため、わたしは、地下鉄駅を出ると同時に、マスクを外して深呼吸します。マスクをせずに歩いている人の数も増えました。一方、マスクをしつづけている人もいます。また、大学では教師にFFP2マスクが無料で配られています。当初は正規職員だけという触れ込みで、かなりの反感を買いましたが、多くの臨時講師を雇用している状況に鑑み、今は関係者全員に配布されています。

公共機関では、いまだに乗車人数の制限を行っていますが、これも建前化しているように思われます。学校が終わる時間やラッシュ時はバス、路面電車、地下鉄ともにかなり混雑しています。車内では、たいていの人が規則通りのFFP2マスクをしています。店内の人員制限もまだまだ厳しく、パン屋、薬局などはたいてい一度に二人しか入れません。それほど長く待つことはないとしても、けっこう長い列をよく見かけます。逆にスーパーなどスペースが広い場所での規制はそれほど厳しくなくなったように思われます。

経済の立て直しという意味では、「グリーン化のための工事費用を割引する」という計画が発表され、布に覆われた工事中の建物が目につきます。グリーン化とは、たとえばソーラーパネルの取りつけや、屋根に断熱材をはさむ、二重窓にするなどエネルギー削減に役に立つ改装のことです。

校舎受付のマスク無料配布

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

大学では教職員も学生もみなワクチン接種が義務づけられています。ワクチンを3回受けたという証明(スーパーグリーンパス)がないと授業をすることも、受けることもできません。大学ではスーパーグリーンパスのチェックもあります。さすがにいまは毎日「見せてください」とは言われなくなりました。掲示板を見たら「教師と学生のスーパーグリーンパスチェックは抜き打ち検査にシフトした」というポスターが貼ってありました。いまのところ、4月末までは現状の体制が維持されることになっています。そのようななか、今年の1月8日、50歳以上(イタリア市民、EU市民、外国人市民)に、ワクチン接種が義務づけられました。

12歳以上50歳未満へのワクチン接種に関しては義務づけられてはいません(イタリアでは12月中旬から5-11歳へのワクチン接種も始まりました)が、週末レストランにピッツァを食べに行くにも、ワクチンを接種していない人は、PCR検査を受けなければなりません(有料しかも48時間のみ有効)。そのため、家族全員での行動がむずかしくなり、「家族会議で娘のワクチン接種を決めた」などという話も聞きました。さらに今朝(3月24日)、「4回目の限定的接種の話し合いが始まった」というニュースもはいってきました。

私の場合、3回目のワクチン接種については、保健省から連絡がありました。「あなたの2回目のワクチンはX月Y日に期限が切れます。あなたの3回目の接種はX月Y日の〇時〇分です。場所は○○」というメッセージが携帯電話に入りました。ちなみに2回目までファイザーを打ちましたが、3回目はモデルナを打ちました。腕の痛みと疲労感は相変わらずでしたが、無事に済みました。息子は「ワクチンは嫌だ」と接種を渋りつづけているうちに、コロナにかかってしまいました。幸い、発熱した程度で重症化はせず、ワクチンを打たなくてもよいお墨付き(り患証明)を得て、検査なしで外出(食事や映画館など)できるようになりました。

大学の校舎前のバール

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

今朝(3月28日)、突然、上海のロックダウンが報じられました。イタリアも感染者が微妙に増えているようで、予断を許さない状況です。街にはこのコロナ禍で閉店した店がたくさんありますが、その後はたいてい不動産屋になっているのが目立ちます(とくに、市の中心)。不動産屋がもともと持っていた店なので、そこを自分たちのオフィスにしただけなのか、あるいは、コロナ禍で不動産の売れ行きがいいからなのか、よくわかりませんが、このご時世に不動産を買えるのは誰なのでしょう? 世情が不安定だからこそ「手堅い不動産に投資する」のか?

わたしが教えているトリノ大学の外国語学科は、今年も教室での対面授業とオンライン授業を同時開講しています。トリノ近辺に住む学生たちはさすがに教室に戻ってきており、オンライン授業の出席者は主に地方在住の学生たちだと思われます。オンライン授業はまた、コロナにかかったり、濃厚接触者になったりして外出できない学生のセイフティ・ラインとしても、活用されています。

コロナが日常化した現在、学生たちの授業態度もコロナ以前とはだいぶ変化しています。「ほかにすることがないから」と冗談交じりに言う学生もいますが、全体的に集中力が上がり、実力もぐっと上がってきているように感じます。コロナ禍で交換留学システムがすべて停止し、残念な状況であったにもかかわらず、頑張っている学生たちの姿にはひじょうに頼もしいものがあります。

最近は「学習院に留学します」「埼玉大学に行きます」と少しずつ、日本に旅立って行く学生も見受けられるようになりました。現地での勉強と生活はなんといっても語学上達の最良の方法なので、こちらも胸をなでおろしつつ、素晴らしい経験をして戻ってきてほしいと祈っています。

授業風景

アヤ・ナカタ:日本語教師。1987年イタリアへ移住。トリノ市郊外のコッレーニョ市在住