いつもは、打ち合わせや、仕事で遅くなったスタッフのお泊まり部屋として使われているリベルのミーティングルームが、ここのところ土曜の午後は、翻訳をめぐる議論を闘わせる10名近くの人の熱気に満ちています。
翻訳本の編集者として、また翻訳家としても長年ご活躍の染田屋茂氏を講師として開講した「書籍翻訳ワークショップ 《ノンフィクション編》」。
スキルチェックで選ばれた6名の受講者が1冊のノンフィクションを分担して訳し、それを実際に書籍にまとめていく講座です。
6名で分担とはいえ、原書にして1人あたり60ページを担当回までに訳してこなければなりません。
数枚のトライアルや課題を訳すのとは違い、書籍翻訳の現場の厳しさをここでまず実感します。
そして毎週、担当者の訳文をたたき台に、講師、受講者、そしてリベルからも2名ぐらいが参加して意見が飛び交います。
原文の解釈、日本語の表現はもとより、専門用語の書き方、単位の表記法や漢字の閉じ開きまで、実際に本になることまで考えると、ふだん翻訳の勉強をしているだけでは気づかないことはたくさんあります。
最初は遠慮がちだったみなさんも、回を重ねるごとに訳文のいいところ悪いところを忌憚なく指摘しあうようになっています。
そして、俎上にのる多くの問題点は、(それぞれ)自分の訳文にもいえること……。
というわけで、毎回、講座が終わると各自学んだことをもちかえって、すでに提出した訳文をまた一からブラッシュアップ。
提出しなおした訳文に講師がまた細かくコメントを入れ、受講者にフィードバックします。
そうやって訳文の完成度はどんどんあがっていきます。
毎回、「誤訳と悪訳の違い」「名翻訳家のエピソード」「辞書について」などのお話がうかがえるのも、長年この業界にいらっしゃる染田屋さんならでは。
ときには、講座後に講師を囲んでビールを飲みながらの翻訳談義。これも受講者6名と少人数だからこそできることかもしれません。
さて、8月末からはいよいよワークショップ《フィクション編》を開催します。
講座の進め方は《ノンフィクション編》とほぼ同じです。
ただし、小説はノンフィクション以上に文体に著者や翻訳者の個性が出ます。
そこでフィクション編では、受講者ひとりひとりにミステリ短編集のなかから1編ずつを訳してもらいます。
詳しくは言えませんが、その短編集は実際に刊行される可能性がとても高いので、講座期間中に完成度の高い翻訳を出していただければ、そのまま共訳者として書籍に名前が載り、翻訳料も支払われる予定です。
そして、これまでのリベルのセミナーや講座と同じく、優秀な受講者には別の書籍の翻訳やリーディングの仕事をお願いすることもありそうです。
小説の翻訳の醍醐味を経験したい方、その現場について学びたい方、ぜひご応募ください。
スキルチェック用訳文提出の期限は7月4日です!
(Y)