ニュージーランド(人口約495万人)
目時能理子
①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
ニュージーランドは現在(2021年6月4日)、基本的に市中感染者はおらず、国外からの帰国者が隔離施設にいるあいだに感染が発覚するケースがときおり報告されるだけです。これは、昨年、新型コロナウイルスのパンデミックが始まってすぐに厳しいロックダウン体制を敷き、いったん国内の感染者数をゼロにしてから、事実上国境を閉ざしてウイルス流入を防いでいることが大きいと思われます。
これまでのニュージーランドの感染状況は累計で、死者26名、快復した感染者2,639名、現在感染している人が17名となっています。この17名はいずれも海外からの帰国者で隔離施設にいるため、新型コロナウイルスで入院していたり、自宅療養している人はゼロという状況です。
今年2月からワクチン接種がスタートし、優先順位によって以下の4つのグループに分けられています。
1.国境管理および隔離施設関係者等、2.医療従事者、長期滞在型介護療養施設職員と入居者等、3.65歳以上の高齢者、既往症がある人、障がい者、妊婦、4.その他の在住者(16歳以上)
現在は、3.まで実施中で、4.に含まれる一般人は7月以降に接種開始の予定です。ワクチンは現在国内に滞在している人であれば、国籍やビザの種類を問わず、だれでも任意で無料で接種することができます。
とはいえ、ニュージーランドにいる限り、普段の生活で感染する危険性はほとんどないので、個人的には接種が可能になっても積極的に打とうという気は今のところありません。
②現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?
現在は感染者が市中にいない状況なので、特に制限はなく、平時と同じような生活を送れています(とはいえ、市中感染が発生したらすぐに規制がかかるので、明日はどうなるかわからないというのが正直なところですが)。フェイスカバーリング(マスク)は公共交通機関を利用する時のみ、着用が義務付けられています。
PCR検査(無料)は推奨されており、少しでも体調がすぐれなければすぐに検査を受けるよう繰り返し通達されています。
補償に関しては、政府によるこれまでの給与補償はなくなりましたが(休業命令がないので休業する必要がない)、ビジネスや個人をサポートするプラン(コロナで業績が悪化した中小企業・個人事業主向けの無利子貸し付けや、検査結果を待つ間や自己隔離の必要があるため仕事ができない場合の金銭補助など)が新しくできています。
入国制限はあいかわらず厳格に行われ、基本的にはニュージーランド国籍の者と永住権のある者しか入国できません。しかし最近、オーストラリアやクック諸島とのあいだにトラベルバブル(到着後の隔離義務が免除)が設けられ、相互に観光入国ができるようになりました。このトラベルバブルは柔軟に運用されているようで、相手国で感染例が出た場合には該当地域からの入国が一時的に制限されます。
③変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。
ニュージーランドでは、現在、ロックダウンもなく、コロナ前と変わらぬ日常生活が送れています。子供たちは学校に通い、大規模集会も制限なく開かれ、買い物やレジャーは平常どおり。とはいえ、在宅勤務は以前に比べて増えたように思います。
変わったことといえば、公共機関でのマスク着用と外出先で行動追跡アプリのQRコードをスキャンすることぐらいでしょうか。
しかし、いつまたすぐにロックダウンになるかもしれないという思いは常にあるので、心の中でいつも準備はしています。
⑤近況について、ご自由にお書きください。
今年1月の夏休み(南半球なので季節が正反対です)にニュージーランド有数の観光地を訪れましたが、ハイシーズンにもかかわらず閑散としていて、国境閉鎖により外国人観光客が入れなくなったことの影響を肌で感じました。
ホスピタリティ業界(観光・旅行・ホテル・レストラン・ウェディングなど)や留学産業といった、外国人が顧客の業種はなかなか厳しいようで、破格の値段で受講コースを提供している語学学校も見受けられます。
今後ニュージーランドも徐々に国境を開いて、行き来できる国を増やしていくことになると思いますが、そうなるとどうしてもウイルス流入の可能性が高くなります。そうなったときにコロナの洗礼をほとんど受けていないこの国がどうなるのか少々不安を感じますが、今から心配してもしかたないので万事塞翁が馬の気持ちで乗り切りたいと思います。
今は日本への一時帰国が非常に大変になってしまっているので、早く状況が落ち着いて行き来できる日が来ればいいなと願っています。
目時能理子(めとき・のりこ):イタリア語・英語翻訳家、英語・イタリア語コーチ、ニュージーランド・オークランド在住。