コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(6)イギリス

great britain

イギリス(人口約6,665万人)

安原実津

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

ロックダウンの緩和に伴い、また7月ごろから新規感染者数は増加傾向にありますが、4月のピーク時にくらべるとだいぶ落ち着いています。ここ最近の一日の新規感染者数は、国全体で1000人程度です。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

感染者数が急増した地域でのみ、局地的なロックダウンが行われています。公共交通機関や屋内の店舗・施設などを利用する際はマスクの着用が義務づけられていますが、従業員側にマスク着用の義務はないので、スーパーや小売店でマスクをつけて働いている人はあまり見かけません。

それから、コロナの水際対策として、感染が拡大している国からの入国者には14日間の自己隔離が義務づけられています。対象国は固定ではなく、その国の感染者の増減に合わせてリストへの追加や削除が行われています。先日、夏の休暇先として人気のフランスが対象国に含まれることになったときには、自己隔離を避けるために、規制が発動される前に帰ろうとするイギリス人旅行客の帰国ラッシュが起きました。英仏間のフェリーもカートレインもあっという間に予約でいっぱいになってしまったため、英仏海峡トンネルを渡るカートレインのシャトルサービスが急遽増便されたそうです。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

ロックダウンで休業を余儀なくされた事業主への休業補償制度や劇場への支援策、家賃未払いによる退去要請の禁止措置はとられましたが、全国民を対象とした現金給付やマスクの配布はありませんでした。先月には外食促進支援策として「Eat out to help out(外食をして支援しよう)」キャンペーンが行われました。8月の月、火、水曜日にキャンペーンに参加している飲食店で食事をすると、食事代の50%(ただし上限は一人10ポンド〈約1400円〉)を政府が負担してくれるというもので、利用回数にも制限はありませんでした。私も何度も利用させてもらいましたが、飲食代が半額(あるいは一人10ポンド安くなる)というのはかなりお得感がありました。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください

禁止されているのは大人数で集まることくらいなので、建物に入る際に人数制限のコントロールがある以外はほぼ元どおりです。ただ、いくら政府の支援策があるとはいっても持ちこたえられなかった店舗や企業が多いのか、最近、閉店セールや空き店舗をよく見かけるようになりました。

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閉店セールと空き店舗

⑤近況について、ご自由にお書きください

コロナの影響で経済が打撃を受けているのはどの国でも同じだと思いますが、イギリス経済の落ち込みは先進国のなかでも最も深刻で、第二四半期のGDPは前期比で20.4%減、アメリカやドイツの約二倍の落ち込みだったそうです。それだけでなく、コロナの流行はEUとの通商交渉にも大幅な遅れをもたらしているといいます(現在イギリスはEU離脱後もEU法が適用される移行期間にあり、期間が満了する今年末までにEUとの新しい関係を構築すべく交渉中)。いまは報道の大半がコロナ関連のニュースなので、EUとの交渉に関するニュースはそれほど大きく取り上げられるわけではないのですが、それでも、交渉が成立しないまま移行期間が終了する「合意なき離脱」、あるいはそれに近い状態での離脱になる可能性が徐々にささやかれるようになってきました。

企業の人員削減のニュースも珍しくなくなってきましたし、観光客がいないせいか、ロンドン中心部も以前のにぎわいからはほど遠い状態です。コロナも景気も、できるだけ早いうちによい方向に向かうことを願うばかりです。


安原実津(やすはら・みつ):ドイツ語・英語翻訳者。イギリス・ロンドン在住。