コロナ終息に向けて:各国レポート最終回(22)オーストラリア

オーストラリア(人口約2575万人)

徐有理

私の住むシドニーでは、昨年9月から、電車やバスなどの交通機関でのマスク着用が個人の判断に委ねられるようになりました。病院や介護施設を除けば、このアナウンスによって、シドニーでは実質完全にマスクのいらない生活に戻ったと言えます。マスクがいらなくなった日から、多くの人が早速マスクを外して生活するようになりました。

もちろん政府は現在も、ソーシャルディスタンスを十分に取れない室内ではマスク着用を「強く推奨」していますが、私が見るかぎりマスクを着用している人は1割にも満たないと思われます。ソーシャルディスタンスという単語もこの文章を書いていて久々に思い出しました。

コロナ感染時は、熱や咳などの症状がなくなるまで自宅で隔離することが推奨されていますが、強制ではありません。現在ニューサウスウェールズ州ではまた感染者が増えており、報告される感染者数は毎週1万人を超えていますが、それに驚いたり恐れたりすることもなく、私たちの生活はコロナ前とほぼ変わりません。自分は2回かかったからもうさすがにかからないはず、と余裕を見せていた同僚もいました。

規制や感染者の多かった時期はリモートワークに切り替える人がたくさんいましたが、それが落ち着いてからもリモートで続けていきたいと思う人が多いようで、コロナ前よりもリモートワークをする人の割合は高いままと予想されています。病院で働く私には無縁の話なので、家でも働けるのは羨ましく思ったりもします。

病院ではやはりまだコロナ感染防止に努めており、救急に来たらまずRAT検査(迅速抗原検査)、入院する場合はPCR検査を必ずやることになっています。患者と直接関わらない管理職などのスタッフはマスクをしなくていいことになりましたが、現場のスタッフがマスクを外せるようになる日はまだまだ先のことになるでしょう。日常ではもう誰もコロナを気にしていないとはいえ、コロナに感染し入院までしないといけなくなった年配の患者たちを見ると、パンデミックは完全に終わったわけではないことを実感します。

シドニーでは6月現在、毎年恒例のVIVIDショー(イルミネーションなどの光のフェスティバル)が開催されています。コロナの規制がなくなって以来2回目のVIVIDに行ってきましたが、本当にたくさんの人で賑わっていました。海外旅行もまた普通に行けるようになり、休暇を取った同僚たちは自分の国に一時帰国したり、ヨーロッパ旅行に行ったりしています。

VIVIDショーの様子。たくさんの人で賑わっているが、マスクを着用する人はほとんど見られない

私はゴールデンウィークに合わせて日本に行ったのですが、多くの人がまだマスクをつけているのに合わせ、私もやはり室内ではマスクをつけて過ごしていました。日本の友達もマスクを外しはじめていましたが、シドニーでは誰も何も言わずマスクを外しはじめていたのに比べて、少し周りを気にしている様子で、国の違いが見えた瞬間でした。


徐有理(そ・ゆうり):日本生まれ。2011年に韓国・ソウルに移り、2014年にオーストラリア・シドニーの高校に入学。シドニー大学看護学部卒業後、現地の病院で看護師として勤務の傍ら、韓日翻訳も行う