コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(3)スウェーデン

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スウェーデン(人口1,022万人)

久山葉子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

6月半ばから夏休みに入り、感染はすっかり落ち着きました。大人も5週間の休みを取る人が多いので、普段より人の動きが少なくなったためでしょう。例年なら海外旅行に行く人も多いのですが、この夏はスウェーデンからの観光客を受け入れてくれる国はヨーロッパ内でも限られていましたし、やはりまだ長距離列車や飛行機に乗るのが怖い気持ちがあるようです。周りを見回しても海外旅行をしていた人はわずかです。その代わりに、自家用車での国内旅行が人気でした。わが家も普段は行きそびれていた近場の観光地へ、1~2泊の旅行を何度かしました。私たちが住む地方都市では3月にはどのホテルも倒産してしまうのではないかと危惧したほどでしたが、国内旅行が盛んになったおかげで、7月はどこも満室だったと聞いています。そうこうしているうちに夏は無事終わり、8月末からまた学校が始まり、今後は確実に第二波が来ると予測されています。

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②国や自治体からの規制や制限はありますか?

家でできる仕事については、年内はリモートワークにするよう要請が出ています。それに加えて、少しでも調子の悪い人は学校・職場に出てこないようにという指導が徹底されています。無料でPCRを受けられて、2営業日以内に結果がわかるので、私もちょっと風邪気味かなと思ったときにはまずコロナではないことを確認してから出勤するようにしています。

マスク義務化の議論は何度もされていますが、結局スウェーデンの公衆衛生局はマスク義務化を採用していません。マスクはいろいろな条件を守らなければ安全に使えないし、何よりもマスクをつけることで「ちょっとくらい風邪気味でも出かけてもいいや」という気の緩みが生じることを危惧しているようです。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

スウェーデンはもともと、病気になったら仕事を休み、国から休業補償がもらえる仕組みです。コロナの感染が広まり始めた頃、「診断書なしで休んでもOK」と国が迅速に発表したことで、さらに休みやすくなりました。国から何か配布されたということはありません。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください

私は高校の教師をしているのですが、3月17日に高校・大学・成人学校にオンライン授業に移行するよう国の要請を受けました。高校はもともと生徒に一人一台PCを貸し出しているし、IT化も進んでいたため、わりとスムーズにいきました。そのまま6月の年度末までオンライン授業が続き、夏休みに入りました。その頃には感染も減少傾向になり、8月末から始まる新年度は高校生も登校していいということになりました。ただし新年度が始まる直前になって、「なるべく公共交通機関が混みあわないよう、各市と各学校が工夫するように」という要請が発表されました。例えば、授業開始時間を遅らせるなどといったことです。若者間の感染はそれほど心配されていませんが、高校生にもなると長距離通学をしている生徒が多いので、朝夕の特定の時間に公共交通機関が混みあってしまうのを懸念してのことです。

どのように工夫するかは学校によりますが、私の勤める学校は、学年ごとに週に1~2日オンライン授業の日を設け、各日2学年しか登校しないようにしています。別の学校では、1週間ごとに登校する学年を変え、それ以外は自宅でオンライン授業に。今後、第二波が来た場合は、また完全にオンライン授業になることを覚悟しています。

⑤近況について、ご自由にお書きください

スウェーデンも今回のコロナで失業率が急上昇しました。その一方で、この秋から大学に通う人も増加したとも報じられています。もともと大人が大学に通い直してキャリアチェンジするのが一般的なスウェーデンですが、こうやって何歳になっても人生をやり直すチャンスがあるのは素晴らしいことだと思います。


久山葉子(くやま・ようこ):翻訳家、エッセイスト、日本語教師。スウェーデン中部のスンツヴァル在住。