不要な言葉 その2

翻訳における「不要な言葉」の定番の一つに、「…達」「…たち」という複数形の表現があります。

ご存じのように、英語や仏語では複数名詞に「s」が付きます。
訳すとき、これをいちいち「…たち」って複数にしたくなっちゃうんですよねえ。

 その村では、大人も子どももみんな早起きだった。

これでいいのに、原文に引きずられ

 その村では、大人たちも子どもたちもみんな早起きだった。

としたくなる。

以前チェックした訳文に、「友達たち」って言葉がでてきて唖然としたこともあります。その翻訳者さんは、「友達」は単数でも使うから、どうしても複数感を出したかったのでしょう。それにしても……。

いや、私はそんなことはしない、「…たち」は使いすぎないようにしている、という方、では、これはどうでしょうか?

 大勢の人々が見守るなか、三人の子どもたちがダンスを始めた。

そう、お気づきですよね。

 大勢の人が見守るなか、三人の子どもがダンスを始めた。

これでOK。むしろ、このほうが読みやすくありませんか?

書籍翻訳家としてまだ駆け出しだったころ、児童書のベテラン編集者さんに「すでに複数を表わす言葉がついているのですから『…たち』は不要です!」と赤を入れられ、はっとしました。その編集者さんには、ほかにも私の訳文のなかの「不要な言葉」をいくつも指摘していただき、それはそれは勉強になりました。

ですが、そんなふうに指摘や説明をしてくれる編集者はなかなかいません。
たとえ、編集者が訳稿の「たち」を削除してゲラではすっきりした文章になっていても、翻訳者はなかなか気づかないのではないでしょうか。

今回の翻訳セミナーでは(おそらく最終回に)、自分ではなかなか気づけない「不要な言葉」の例もたくさん挙げたいと思っています。

ところで、今回のセミナーについて、地方在住の方から「希望の回だけの参加はできませんか?」というご質問をたくさんいただいています。
検討いたしましたが、今回は8回を通して受講していただくことを前提に申し込みを受け付けているので、残念ながらご希望に添えません。
近い将来、1回だけの講演やセミナーも企画する予定ですので、ご理解いただければ幸いです!

(Y)