翻訳者の仕事道具(1)

苦労して翻訳原稿を仕上げると、
ほどなくして編集者さんから「初稿ゲラ(校正紙)をお送りします」と連絡があります。

皆さんはゲラに赤入れするとき、どんな赤ペンを使っているでしょうか?

人によって、ペン先の太さや軸の太さなど、好みがあると思います。
「できるだけ細かい字を書きたいので、なるべくペン先の細い赤ペンを使うようにしている……」
「はっきりとした読みやすい字を書きたいので、ふつうより少し太めの赤ペンを使っている……」

でも、少しでも読みやすい原稿に仕上げようと試行錯誤しているうちに、気がついたら修正液を使いすぎて読みにくい原稿になってしまい、どうしよう……と思ったことはありませんか?

frixion ball_light

弊社ではゲラに赤を入れるとき、パイロットの「フリクションボール」という「消えるボールペン」を使っています。
フリクションボール・シリーズにもいくつかのラインナップがありますが、ゲラの赤入れにちょうどいいと思うのは「フリクションボールノック 0.5mm」という製品です。

ペン先と反対側のラバーでこすると、摩擦熱でインクの色が無色透明になり、何度でも書いたり消したりできます。つまり、気がすむまで原稿の修正ができるのです。

ただし、いくつか注意点があります。

・編集者さんによっては、ごくまれに、消えるボールペンを使った赤入れを好まない人がいるようです(でも、年間60冊以上の書籍翻訳を手がけている弊社では、編集者さんから「消えるボールペンは使わないでください」と言われたことは、まだありません)

・フリクションボールのインクは、摂氏60度以上になると透明になってしまいます。つまり、せっかく赤入れした文字が消えてしまいます!
(赤入れしたゲラを、真夏に車の中など高温になる場所に放置しないよう、ご用心)

でも、せっかく書き込んだ赤字が消えてしまっても心配ありません。

原稿をビニール袋に入れて一晩、冷蔵庫の冷凍室入れておくと、文字が復活するそうです。その後、室温に2~3時間置き、インクを自然解凍します。
(フリクション・ボールのインクは、マイナス10度でインクの色の復元が始まり、マイナス20度で完全に色が戻ります)

さいわいなことに、弊社のキッチンではまだ、冷蔵庫で冷凍されている原稿を見かけたことはありません。

[※弊社では「消えるボールペン」を使っていて不都合が生じたことはありませんが、ご使用にあたっては製造元のウェブサイトなどに書かれている注意事項をご確認ください]

(S)