これまで2回、「不要な言葉」について書いてきましたが、
もちろん、「非常に」や「とても」といった言葉がどんなときにも不要だ、と言っているわけではありません。
強調する言葉は、タイミングよく使えば効果的です。
メールや手紙であれば、「あの作品は素敵でした」と書くより「あの作品はとても素敵でした」と書いたほうが思いがよく伝わります。
ですが、一冊の書籍の中で何度も何度も出てきたら逆効果になるだけでなく、いかにも直訳調のぎこちない文章の一因となります。
たまに使えば効果的だが頻繁に出てくると読者が疲れてしまう例は、ほかにもたくさんあります。
たとえば、「……してしまう」という表現。
驚くほど多くの翻訳者さんの原稿で、この「してしまう」「してしまった」が多用されています。
どうやら、ネガティブな文脈だと「……した」でいいところを、どうしても「……してしまった」と書きたくなるようなのです。
こんな具合に……
話し合いは不毛な議論に終始してしまい、結局、なんの成果も得られないものになってしまった。
はい、いうまでもなく、
話し合いは不毛な議論に終始し、結局、なんの成果も得られないものになった。
のほうが、ずっと読みやすいですよね。
さらにいえば、
話し合いは不毛な議論に終始し、結局、なんの成果も得られなかった。
これがいちばんすっきりしていると思います。
「・・・もの」という言い方も、翻訳初心者がよく使い、まどろっこしい表現の原因となる代表選手です。その話はまた別の機会に……
みなさんは、こういう表現を使いすぎてしまっていませんか?
(Y)